第1回:就職活動の変化と学生の志向の変化について
昔に比べると、新卒採用は、さほど大企業一強ではなくなったと思います。
情報化社会になったことが大きな要因として考えられますが、かといって、中堅中小企業に学生が自然に流れるようになったかというとそうではありません。
ブラック企業問題をきっかけに、学生たちは企業の労働環境や従業員の評判など、企業の内面部分を気にするようになりました。
今後の採用においては、学生の思考や行動をより鑑みた戦略をたてる必要性があると考えます。
特に、ブランディング力の弱い中堅中小企業は、時代の動きに即座に柔軟に対応することができるかどうかが鍵となりそうです。
それではここから19卒の学生の採用時期の動きの予測と、それに対して、企業がどう動いているのかをお話したいと思います。
それではまず、19卒学生の動きを予測したいと思いますが、その前に、18卒学生の採用の動きはどうだったのか確認をしていきましょう。
【18卒学生の採用スケジュール】
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・2016年
6月(インターンシップ解禁)
7月~2月(インターンシップ実施期間)
・2017年
3月(企業説明会開始)
6月(選考開始)
10~11月(内定式)
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18卒は選考解禁が6月となったため、3月から就活を準備し始めた学生はかなり出遅れた結果となっています。
また、キャリタス就活2018のWEBアンケート調査によると、学生のインターンシップ参加率は17年卒に比べ、1.4%UPの76.4%、15年卒と比較すると、23.9%UPしており、年々学生の就活活動時期の早期化が起きていることがわかります。
19卒採用でも、早期活動が活発になると予想されるため、インターン実施数は18卒よりも増加すると予想されます。
インターン実施数増加で起きること
19卒に関しても、選考解禁は6月とされています。
原則、選考解禁前までは、企業側は学生に対して選考を行ったり内定を出すことはできません。
早期活動を行う企業や学生が増加した背景には、選考解禁時期が遅くなったという背景があり、企業側は6月にすぐにでも内定を出したいと考えているため、早い段階から、企業同士で学生の取り合いが始まっているのが現状です。
学生の取り合いが激化するインターンシップ時期をどう乗り越えるか?
中堅中小企業においては、早期活動(インターンシップ)を行うにあたり大きな2つの問題があると考えています。
1、 集客の問題(学生認知度が低い)
2、 動機形成への不安(6月に学生は選考参加してくれるのか)
上記解決への第一歩としては、
【学生側がインターンシップに何を求めているのか】
【どんな時、入社したいと考えているのか】
現状の学生の志向を考えることが必要不可欠です。
今の学生は仕事、企業に対してどう考えているのでしょうか。
中堅中小企業に学生が求めること
(参考:キャリタス就活2017の学生調査)(対象:17卒の学生)
http://www.disc.co.jp/uploads/2016/10/gakusei-monitar20161020.pdf
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【中小企業への選考応募状況】
※300人未満の中小企業への応募について質問
中小企業にエントリーした(71.1%)
中小企業の面接試験を受けた(63.5%)
・中小企業を受けた理由
1、「やりたい仕事に就ける」(42.9%)
2、「会社の雰囲気がよい」(37.5%)、
3、「独自の強みがある」(28.2%)
・中小企業を受けなかった理由
1、「安定性に欠ける」(39.6%)
2、「知名度が低い」(31.8%)、
3、「給与・待遇がよくない」(41.0%)
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注目して頂きたいのは、【受けなかった理由】です。
大企業と比較された場合、ほとんどの中堅中小企業は勝てない項目です。
競合と比較し良かったとしても、大企業と比較されると、
学生側からはメリットになりにくいと考えられるため、
中堅中小企業においては、
【受けた理由】の項目を学生にしっかり伝えることが鍵になると考えています。
特に【会社の雰囲気】に関しては、企業にとっては盲点だったかと思います。
個社説明会に参加した学生は、仕事内容や企業概要などの情報だけを重視するのではなく、
社員の資質や会社全体の雰囲気をみていることが分かります。
つまり、スライドだけを見せ、淡々と説明し、質問も流れに沿って行うような企業は、
【入りたい理由】の3項目の内の1つを落としている可能性が大いにあります。
【やりたい仕事がみつかる】【独自の強みがある】に関しては、
・自社の仕事のやりがいは何か
・自社にくる学生はどんな学生で、何をしたいと考えているのか
上記2点を考える必要があります。
方法としては、社員へのインタビューや内定者へのインタビューにより、見えて来ると思います。
ただし、気を付けてほしいのが、同業他社(大企業やそのほかの競合)と差別化できる強みであること。
大企業と比較されても貴社を選ぶ学生がいるような、独自の強みを伝えなければいけません。
その為、内定者インタビューではどのようにして貴社を認知し、動機形成し内定したか、時系列で細かく知る必要性があります。
学生の仕事に対する気持ちの変化
ゆとり世代、さとり世代など時代が変わるごとに、学生の思考や質も変化してきました。
バブル時代の時のような、がむしゃらに働くだけ働く時代は終わりをつげ、情報化社会の中で育った学生たちは、You Tuberやアフィリエイトなどの広告収入などで稼ぐ人々を横目に、なぜ勉強しなければいけないのか、なぜ汗水ながして働かなければいけないのか、と社会の実情や自身の将来に対して、よりシビアに考えています。
ここから先、どんな思考をもった学生が現れるのか、確実予測することは難しいですが、ただ一つ考えられることは、企業の新卒採用は格段に難しくなるということです。
原因としては、少子高齢化により、年々学生の数が減少するのは確実だということと、そして先ほど話をした学生の思考の問題です。
ブラック企業問題も含め、学生が企業に対する不信感が強くなり、シビアな見方をしていく中、今後、起業をしたり、正社員以外の働き方を選択する学生が増える可能性は大いにあります。
今後より一層、激化する新卒採用。
中堅中小企業としては従来のような待つ採用ではなく、学生の思考をいち早く察知し、動向を予測し、先回りする採用を行うことが重要なのかもしれません。
筆者:鈴木博之
■プロフィール
現在、10社以上の中小中堅企業の
主に新卒採用を支援。
ポテンシャル採用の新卒採用だからこそ、
データや数式だけにこだわらない
定性的な判断が必要だと考えており、
自身の就職活動の経験や、
学生との直接接点で得た情報をベースに
リアルな就活の現状を
多くの企業に伝えている。
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