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経費精算業務のリモート化の方法

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今回は、経理業務のうち、社員に対する経費精算処理について見ていきます。経理業務のうち、最もリモート化しづらい業務といわれていますが、果たしてどうでしょうか?

そもそも、経費精算業務とはどんなものか?経費精算業務をリモート化する方法とはどんなものか?などを考えてみたいと思います。

経費精算処理とは

経費精算とは、社員が出張や備品購入などで自己負担している経費を、勘定科目ごとに経費処理し、社員に現金支払いする処理のことを言います。

その流れは、概ねこのようなものです。

①経費精算の用紙に日時、内容、金額を記入し、領収証を台紙に張り付けて添付し、上司に提出。

②最終決裁者まで捺印し、最終的に経理部へ回される。

③経理部では、領収証と金額のチェック、交通機関や料金のチェックなどを行う。

④経理部から社員へ現金支払い、または社員の銀行口座へ振り込み。

経理部は、これらの処理を1年中手作業で行っています。社員の数に応じて、処理量も多くなっていきます。さらに、決算期に重なると、膨大な負荷が経理に加わります。

社員が個人のお金で会社の経費を立て替えてくれているわけですから、迅速に処理しなくてはなりません。さらに、正確性や不正のチェックもしなくてはなりません。

経費精算処理でリモートワーク出来ない理由

経費精算は、これまでリモートワークが出来ない業務とされてきました。理由としては、以下のようなものがありました。

紙での処理

従業員が経費精算申請をする場合、経費精算の用紙に記入し、領収証などの証憑書類を添えて申請するため、どうしても現物の紙の処理が必要でした。

決裁処理

経費精算にあたっては、申請する社員の上司やその上司、あるいは社長、経理部までの決裁印が必要であり、そのために出社を余儀なくされていました。

振り込み処理

さらに、経費申請した社員の口座へ振り込むための銀行処理で出社しなければなりませんでした。しかし、近年はファームバンキングやインターネットバンキングなど、銀行に行かなくても振り込み処理が出来る仕組みが増えてきました。

システムを活用した経費精算処理のリモート化

リモート化が可能になった法律的背景

経費精算処理をリモート化するにあたって、決定的なネックになっていたのが、領収証などの証憑類といわれる紙の処理です。

従来から、領収証を始めとする会計書類は書類での保管が義務付けられていました。それは、会計の根拠となる書類の改ざんを防ぐためです。

企業の利益から一定の率で徴収する法人税は、国家の運営に欠かせない大切な税収です。その徴税を正確かつ公正に行うために、長い間、会計関連の書類は紙での保管が義務付けられてきました。

しかし、電子帳簿保存法の改正により、段階的に紙での保存規制が緩和されていきました。近年の経費精算に関連する改正内容は、以下の通りです。

【2016年の改正】

スマートフォンで撮影された領収証が会計処理で有効になりました。ただし、領収証の真実性を担保するために、画像データにタイムスタンプを付与することが条件です。

第三者によりタイムスタンプを付与されたデータは、付与された時点でのデータの存在と、それ以降のデータの改ざんが無いことを証明するものです。

【2020年の改正】

クレジットカードや交通系カードなどで経費を支払った場合、その明細データがあれば、そもそも領収証の発行そのものが不要になりました。

この規制緩和で、経費精算する社員も経理部もさらに業務が簡素化されることが予想されます。

具体的なリモート化方法

2021年現在、さまざまな経費精算のリモート化方法が開発され、利用されていますが、多くの場合、自社でシステムを開発するというより、システム会社が提供するクラウドサービスを利用するという方法が多いようです。

良く利用されている代表的なクラウドサービスの仕組みを見ていきましょう。

(※ただし、システム内容はバージョンアップや法律の更なる改正により変化していくことが予想されます。)

【システムの仕組み】

①社員がスマートフォンに入れたアプリから領収証を撮影、または、クレジットカード会社や交通系カードの利用明細データをアプリから入力。

②撮影された領収証データはクラウドシステム会社が提携しているタイムスタンプ局からタイムスタンプを付与される。

③経理部がクラウドサーバーを通じて、経費精算データを処理。

④ネットバンキングやファームバンキングを利用して、社員の口座へ振り込み。

さらに従来業務を迅速にする仕組みも

上記で説明したクラウドシステムには様々な進化系サービスもあります。

例えば、決裁をシステム化したもの、領収証データや明細データから想定される勘定科目を設定し、仕訳データまで自動作成し、経理システムと連動したもの、紙の領収証も収集代行し、一定期間保存するサービスを付加したものなどの発展形があります。

まとめ

経理部でどうしても出社が必要だった経費精算処理も、電子帳簿保存法の改正により、クラウドサービスが生まれ、急速にリモート化が可能になってきています。

経費精算のリモート化は、経理部の仕事をスムーズにするだけでなく、全社員の経費精算もスムーズに出来るメリットを持っています。

感染症対策だけでなく、BCP(事業継続計画)の観点からも導入の検討をしていく必要があるでしょう。

著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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