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中堅中小企業が対応すべき社会変化~第四次産業革命

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業種の壁を越えた「新コングロマリット」プラットフォーマーの誕生 AI×ビックデータ

社会変化の概要

第四次産業革命は、IOTにより生活のあらゆる事象がデータ化され、データはAIでディープラーニングされる社会になっています。既に1つの巨大なプラットフォーマーモデル(第一章)を生み出し、さらにもう1つのプラットフォーマーモデル(第二章)を誕生させようとしています。

①AIで業種の壁を超える
老舗大企業の蓄積された知識経験という優位性は、AI(人工知能)のディープラーニングで崩壊し、業種のカベが無くなりました。

②ビックデータで市場拡大が可能に
ビックデータの登場により、業種業態を超えたレコメンデーションが可能になり、顧客自身が気付かなかったニーズウォンツを掘起し市場が拡大できるようになっています。

社会変化のデータ

①各国GDPの推移
2000年から2020年にかけての各国名目GDPの推移、一人当たり名目GDPの推移、生産年齢人口の推移は以下の通りです。

ⅰ各国名目GDPの推移
・日本 5兆ドル~6兆ドルの間のレンジ
・米国 10兆ドルから20兆ドルへ右肩上がり、
・ドイツ 2.5兆ドルから5兆ドルへ右肩上がり

ⅱ一人当たり名目GDPの推移
・日本 3.85から4.07万ドル
・米国 3.64から6.6万ドル
・ドイツ 2.40から5.2万ドル

ⅲ生産年齢人口の推移
・日本1200万人減
・米国3000万人増
・ドイツは300万人減

出典:IMF World Economic Outlook

ⅳデータ解説
日本のGDPが伸び悩んでいる理由は、生産年齢人口の減少、長い労働時間が生み出している低い労働生産性、国内消費のデフレを示す限界消費性向の低さとその低さゆえの政府の財政拡張政策の景気浮揚効果の有効性の無さ、米国や中国のようなGDPを牽引する産業の不存在です。

(2016年の日銀の展望リポートによれば、日本の限界消費性向は1960年代には0.7程度とされていたが、その後、ほぼ一貫して低下。世帯年収によっては0.1を割り込んでいます。対照的に米国の限界消費性向は0.6~0.7)

米国GDPが好調の要因は、生産年齢人口の伸び、一人当たり名目GDPの伸長、国内消費の好調さを示す限界消費性向の高さとその高さゆえの政府の財政拡張政策の景気浮揚効果の有効性、GDPの伸びを支えるIT(GAFA等)とヘルスケア(医療介護)にあります。

ドイツGDPが好調の要因は、短い労働時間が生み出している高い労働生産性と、最大の貿易相手国中国のGDPの伸びです。

好調な中国のGDPを支えていたのは、米国と同様、IT(BATH等)とヘルスケア、それに不動産になります。

②GAFAと日本企業の比較データ
好調な米国のGDPを牽引するITコングロマリットGAFAと日本企業をデータで比較してみます。

ⅰ時価総額
・GAFAの株式時価総額7兆500億ドル(約770兆円)に達し、日本企業全体の6兆8,600億ドル(約750兆円)を超過。

出典:2021年8月26日日経新聞

ⅱ研究開発費(2018年度)
・Amazon3.2兆円、アルファベット(Google)2.4兆円、アップル1.6兆円、Facebook1.1兆円、トヨタ1兆円、ソニー0.5兆円

出典:未来投資会議(内閣官房日本経済再生総合事務局(第31回) 配布資料

ⅲデータ解説
GAFAの株式時価総額の拡大要因を日経新聞は「高い成長力に加え、日本企業以上の強固な財務基盤と手厚い株主還元が安定収益を求める投資家を誘引。マネーの一極集中につながっている。」と分析しています。

一極集中したマネーを、研究開発費に注ぎ、PDCAを高速で回し、速度の経済で高いコスト優位を実現しているのがGAFAの強みです。

高速で作り上げているビジネスモデルが「新コングロマリット」プラットフォームとなります。

社会変化の経営的意味

①新コングロマリットプラットフォーマーの誕生
AI×ビックデータで業種業態を超えた知識経験を蓄積し、顧客自身が気付かなかったニーズウォンツを掘起す体験サービスをレコメンデーションしていくPFモデルです。

収益モデルは、解約アクションをとられなければ継続的収益で、複利的成長が見込めるサブスクリプションになります。

②採算度外視の価格設定できることの脅威
コングロマリットゆえに、ある業界で採算度外視の価格設定をしても、データを回収できれば、レコメン機能で、サブスクの解約アクションを回避できるので、他業界の利益で複利的成長が見込めます。

従って、単一業界だけでは採算度外視の価格設定できる新コングロマリットPFに勝てません。

生活のあらゆるデータを独占する「スマートシティ&交通インフラ」プラットフォーマーの誕生へ IOT×5G=CASE

社会変化の概要

①IOT×5Gで生活のあらゆる事象をデータ化
5Gの効果は以下の通りで、IOT製品が集めた大容量データを高速で処理できるようになります。

ⅰ高速・大容量:4Gの100倍以上
・AR拡張現実/VR仮想現実/MR複合現実
・警備システムで画像大量蓄積&分析

ⅱ低遅延:4Gの1/10以下”
・遠隔医療
・自動運転(操縦)

ⅲ多接続:4Gの100倍
・膨大な数の端末やセンサーで、あらゆる製品がIOT化

②CASEとは
自動車産業とモビリティの将来動向を示すキーワード
C:Connected:車のIOT化
A:Autonomous:自動運転
S:Shared:シェアリングサービス
E:Electric:電動化

社会変化のデータ

①5Gの経済効果
総務省「電波政策2020懇談会」参考資料によれば、5Gの経済効果の総額は約52兆円。主な経済効果は以下の通りです。

・交通、物流(モビリティ)21兆円
・工場、オフィス(スマートファクトリー):13.4兆円
・医療、介護(ヘルスケア):5.5兆円
・ショッピング、金融、決済:3.5兆円
・スマートシティ(エネルギー等):2.5兆円
・スマートホーム/ライフ (ファッション、日用品等)1.9兆円

②CASEの経済効果
CASEは、トヨタの「ウーブンシティ」が示すように、単なるモビリティ革命にとどまらず、スマートシティを目指す社会変化と捉えるべきです。

従って、CASEの経済効果は上記5Gのモビリティの21兆円から最終的には総額約52兆円に迫るものと考えます。

社会変化の経営的意味

①スマートシティ&交通インフラプラットフォーマーの誕生へ
ⅰスマートシティの誕生へ
スマートシティの定義はまだ確定しておらず、生活のあらゆる事象のデータ化と、全体最適のためにデータが活用される都市と考えればよいでしょう。

トヨタの「ウーブンシティ」が代表例です。

ⅱ交通インフラプラットフォーマーの誕生へ
太陽光などの限界費用ゼロの電力が使用される次世代自動車が無料の交通インフラとなり、ライドシェアや自動運転、EV普及によって移動コストが6割削減されます。

ソフトバンクグループはこの社会変化を捉え「交通インフラをIOTで制御するプラットフォーマー&サービスプロバイダーを目指す」としているのです。

出典:「2022年の次世代自動車産業」田中道昭著


②生活のあらゆるデータが独占される脅威
ⅰデータのない製造業は単なる下請けに
データを持たない製造業は、顧客にレコメンデーション出来ないので、第三章の対応策(詳細は第2部)をとらなければ、ニーズウォンツに合致した製品製造のため、スマートシティ&交通インフラプラットフォーマーの下請けになるしかないでしょう。

ⅱ交通インフラPFによる交通業界への影響
日本の交通の4分の3を占める鉄道は、限界費用ゼロの次世代自動車及び電車の2倍速く40%安いロボタクシーの登場で大変危険な立場に立たされます。

中堅中小企業の社会変化対応策

第一章、第二章を合わせた第四次産業革命(AI×IOT)という社会変化への中堅中小企業の対応策は大きく分けて2つです。

・巨大プラットフォームを利用する
・巨大プラットフォーマーが苦手な領域で独自のビジネスモデルを構築する

詳細は第2部「中堅中小企業の社会変化対応マニュアル」で紹介しています。

まとめ

AI×ビックデータで業種の壁を越えて市場を拡大できるビジネスモデル、コングロマリットプラットフォーマーと、最高の収益モデル、サブスクリプションを組み合わせているGAFAやBATH等、一国のGDPを牽引する巨大プラットフォーマーは既に誕生しています。

データに基づいたone2oneレコメンデーションが可能であり、採算度外視の価格設定もできるのです。

こうした社会変化の下、データも無いコングロマリットでもない企業は、下請け製造業、下請けサービサーになるしかないのでしょうか。

製造業は我が国GDPの2割弱を占める基幹産業です。

日本の上がらないGDPが、下降トレンドになる危機ともいえます。

自動車産業とモビリティの将来動向を示すCASEは、IOT×5Gによって、単なる次世代自動車産業に収まらない、生活のあらゆるデータを独占する「スマートシティ&交通インフラ」プラットフォーマーを誕生させようとしています。

IOT×5Gで集められるデータは、国や地方公共団体の「オープンデータ」のみならず、個人の生活のあらゆる事象の「パーソナルデータ」を含み、さらに、これまで表出化さえ難しかった企業の底力の源、「暗黙知データ」や企業のMachine to Machineのストリーミングデータ「M2Mデータ」も含まれるのが特徴です。

こうしたデータを備えたコングロマリットプラットフォーマーは益々大きく、サブスクで複利的に成長していくでしょう。

トヨタとソフトバンクグループは自らこの仲間入りを目指しています。

既に誕生している、これから誕生しようとしている巨大プラットフォーマーの収益の一部を、出資によって手に入れられるポートフォリオを作り上げているソフトバンクグループの先見の明には、脱帽です。

巨大PFに侵食されず、単なる下請けにならないために、中堅中小企業は、巨大PFを利用するか、巨大PFが苦手な領域で独自のビジネスモデルを構築するしかありません。

その手法の詳細は第2部「中堅中小企業の社会変化対応マニュアル」で、参考になる事例は第3部「中堅中小企業の社会変化対応事例」で紹介していますので、そちらも読んで頂ければ幸いです。

著者:maru2011年から中小企業診断士として経営コンサルタントをはじめる。
通常の企業経営コンサルから、無農薬農業経営、介護施設運営等の幅広い業種に関わり、
エンターテインメント施設の開業のための市場調査から、債務超過企業の事業デューデリジェンスまで、企業成長段階に応じたコンサルタントを行っています。

 

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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