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経理業務をリモート化する具体策

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前回の「経理業務がリモート化できる法的根拠」記事により、経理業務のリモートワーク化が法律上も可能になることを確認できました。

加速度的に法改正が行われ、いよいよ経理業務のリモート化に期待が高まってきました。
そこで今回は、経理業務をリモート化する際に準備すべきことを、具体的にご紹介していきます。

リモートワーク業務の確定

まず初めに、リモートワークを行う業務範囲を設定します。多くの会社は今すぐに紙を使用した業務をいきなり全て電子化するには困難が伴いますし、取引先の都合もあることですから、ステップを踏んで実施していくことが重要です。

リモートワーク範囲の確定

経理業務のうち、日々行う業務の中で、会計システムに対する仕訳や入力処理、経費精算、請求書処理など、どの業務をリモート化するかを明確にしていきます。

取引先との調整

多くの企業は請求書や領収証を紙でやり取りしているのが現状です。書類をPDFなどのデータで受け取るための協力方法が課題となります。

スケジュール化、社員への告知・理解

いずれ全てをリモート化することが理想ですが、全てを一気に解決するには無理があります。段階に応じて導入することが重要です。

当面はデータ処理と紙の処理が並行する時期もあることでしょう。社員に対して理解を求めることも重要です。

リモート環境の準備

リモート環境の方式

リモートワークを実現するためには、VPNという通信方式を利用します。VPNとは、既存のネットワークを利用して仮想の専用通信路をつくり、暗号化を施して会社のネットワークにアクセスし、社内システムを利用できるようにするための仕組みのことです。

オンライン環境

リモートワークを実現するためには、インターネットに常時接続する環境が必要になります。必要な機器としては、VPNソフトウェア、パソコン、ルーターなどのネットワーク機器などがあります。

ここで注意したいのは、リモートワークを行う場所の通信環境です。特に家庭内では、パソコンだけでなく、家族一人一人がスマートフォンを持ち、通信量が急激に増加しています。

端末も増えたため無線ルーターを使用している家庭も多いと思いますが、無線ルーターの性能を上げる必要がある場合が多くなっています。

従来の無線ルーターは、「インターネットに繋がれば良い」というレベルのニーズでしたが、ZOOMなどの会議システムをスムーズに利用するためにも、通信能力の再チェックが必要になります。

ソフトウェアの準備

認定ソフトウェア、機器の導入

国税関係書類をデータ化し、リモートワークで使用するためには、電子帳簿保存法の基準を満たしている会計ソフトや、スキャナーを準備する必要があります。

今使用しているソフトウェア・機器を認定してもらうか、認定されているソフトウェア・機器を導入するということになります。

また、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)による要件適合性の認証を受けたものを利用する場合については、承認申請書の記載事項や添付書類を一部省略することが可能になるというメリットもあります。ぜひ確認しておきたいところです。

【参考】国税庁 JIIMA認証情報リスト

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/11.htm

インストール型かクラウド型か

使用する会計ソフトウェアは、従来、コンピュータにインストールするものしかありませんでしたが、近年、クラウドサービス企業が作ったソフトウェアをサーバーに置き、インターネット経由でユーザー企業が利用する「クラウド型」が普及しています。

どちらが良いかはその企業のリモート化したい業務範囲や、処理リサイクルなどを勘案した上で決定すると良いでしょう。

【インストール型の特徴】

特定のコンピュータにインストールして操作するため、安定的にスピーディーに操作できます。

VPN活用してリモートでも操作可能ですが、VPNやリモートワーク拠点(家庭など)によっては、操作が不安定になる場合もあります。

【クラウド型の特徴】

インターネットに接続できる環境であれば、いつでもどこでも利用できるため、経費精算など、広い地域で全社員が利用する場合などは便利です。

ソフトウェア代などの初期費用はほとんどなく、拠点(アカウント)数に応じた月額利用料制になっています。

また、災害時にも自社データをサービス提供企業が保存しているためBCP(事業継続計画)上も有利な方法です。

運用テスト

環境やソフトウェアが準備出来たら、いきなり本稼働せず、テストを行いましょう。

特定の担当者のみ運用してみたり、特定の部署のデータのみをリモートで処理したりして結果を検証し、本格運用を目指しましょう。

経理データは誤りがあると、税法に反するだけでなく、取引先や社員からの信用を失うことになります。慎重な対応が求められます。

まとめ

電子帳簿保存法の画期的な改正ラッシュに伴い、経理業務のリモート化が見えてきました。近年は、コロナ禍など、感染症対策という意味合いが強いリモート化ですが、感染症以外にも自然災害など、企業活動を阻害する要因はいつ発生するかわかりません。

経理業務のリモート化を機に、何があっても止まらない経理業務を目指していきましょう。

著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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