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男性が育児休業を取りにくい理由は?取得推進のため企業がおこなうべきこと

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育児休業は男女に関係なく取得できるものであり、労働者から育児休業の申し出があれば事業主は拒むことができません。

それにも関わらず、男性労働者の育児休業取得率はいまだに低く、育児休業を取得したいと言い出せない人もいるようです。

今回は、男性が育児休業を取りにくい理由を改めて確認していきます。
また、男性の育児休業取得推進のために企業がおこなうべきことを解説していきます。

男性の育児休業取得率

令和元年度の育児休業取得率は女性が83.0%、男性が7.48%です。

【参考】厚生労働省「育児休業取得率の推移」

https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/02-01-08-01.html

男性の育児休業取得率は毎年微増傾向にありますが、まだまだ低いのが現状です。2021年6月に育児・介護休業法の改正が成立し、男性が育休を取得しやすくなる新制度や制度の変更が決まりました。

政府は2025年までに男性の育児休業取得率の目標を30%としており、今後取得率が高まることが期待されます。

男性が育児休業を取得しにくい理由とは

育児休業を取得して「積極的に育児に関わりたい」「産後の妻をサポートしたい」と思う男性も、実際は取得しない人や、取得したとしても1週間未満の短期間にとどめる人が多い傾向です。

男性が育児休業を取得しにくい理由を把握すれば、その原因を取り除くことで、働きやすい職場づくりができます。

社員の満足度も上がり、モチベーションアップにつながります。まずは、男性が育児休業を取得しにくい主な理由について確認していきましょう。

周りに迷惑がかかるから

育休を取ると周りの負担が増えてしまうため、取りにくいと考える男性が大半です。休んでいる間は、自分の仕事を周りの誰かに引き継いでもらわなくてはいけません。

その分の業務が増えることを申し訳なく思い、迷惑をかけるくらいなら育休を取らずにすまそうと考える男性が多いようです。

収入が減るから

育休取得中は、会社から給料が出ません。そのため収入が減ることを理由に育休を取得しない男性もいます。妻が専業主婦の場合、夫の収入が家計を支えることになります。

共働きの場合も、妻の育休期間中は収入が減るため、自分の収入まで減っては困ると考えるのは当然です。

しかし、育休を取得すると、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。育児休業給付金の支給額は、6ヵ月目までが休業開始時の賃金の67%で、6ヵ月を超えたら賃金の50%です。

ただし、育児休業給付金には上限があり、支給率67%の場合は305,721円、支給率50%の場合は228,150円です。(令和2年8月1日に変更)

給料よりもかなり減ってしまうと思う人もいるでしょうが、育休期間中は健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料が免除されます。

また、給与が発生しないため雇用保険を納める必要がなく、育児休業給付金は非課税なので所得税も必要ありません。

そのため実際は育休取得前の収入の8割程度が支給されることになります。

男性が育休を取得しにくい雰囲気であるため

男性が育休を取得した前例がない職場では、上司に「育休を取得したい」と言いにくい雰囲気があるでしょう。

しかし育児休業を認めないことや、「周りに迷惑がかかる」「男が育休を取るなんてありえない」と諦めさせることは、パタハラ(パタニティ・ハラスメント)に該当します。

育児・介護休業法には、要件を満たす労働者が育休を取得したいと申請した場合、事業主は拒めないと定められています。

パタハラは違法行為のため、起こらないように企業は対策をおこなわなくてはなりません。

また、改正育児・介護休業法では、育休を取得できる従業員に対し、企業は個別の周知や意向確認が義務付けられます。

そのため今後は男性が育休を取得しやすくなることが期待されます。

評価への影響が不安

男性が育休を取得することが評価に影響し、キャリア形成において不利になるのではないかという不安から、育休取得を断念する人もいます。

育児休業明けの男性に不利益な人事をおこなうのは違法ですが、実際にパタハラを経験した男性も少なくないようです。

男性が育児休業を取得推進するためにできること

共働きの家庭が増えているにも関わらず、いまだに「育児は女性がするもの」という固定観念は根強いものです。企業のリスク管理の面からもパタハラが起こらないように職場の環境を改革してく必要があります。

育休制度の整備

育休は男女に関係なく取得できるものであり、申請すれば事業主は拒否できません。しかし、男性社員が育休を取得したことがない企業では、男性の育休制度がないと思っている人が多いと考えられます。

企業内の育休制度を整備してガイドを作成する、就業規則に記載していない場合は記載するなど、従業員に周知することで、男性も育休を取得しやすくなります。

ただし、制度を作るだけでは必ずしも取得を推進できるわけではありません。管理職をはじめとして、会社全体が男性の育休について理解を深めることが、育休の取りやすさにつながります。

管理職を中心に意識改革をおこなう

育休を取りやすい職場づくりをおこなうために、まずは管理職を中心に意識改革をおこなうことも重要です。

これまで男性が育休を取ることがなかった職場では、男性の育休取得に理解がない管理職も多いかもしれません。上司が男性の育休に理解がなければ、パタハラにつながります。

まずは管理職に研修をおこなうなどして意識改革をおこない、従業員に対しても育休の周知に取り組みましょう。

育休の対象となる従業員を把握する

個別に育休取得を推奨することで、男性も育休を取りやすくなります。そのためには、企業が育休対象となる従業員を把握しておく必要があるでしょう。

産休が必要となる女性に比べて男性は育休対象者が早期にわかりづらいため、配偶者が妊娠している男性社員には申告してもらうなどして、上司が育休を推奨しやすい環境をつくりましょう。そのためには日頃からのコミュニケーションも重要です。

働き方を見直す

男性が育休を取得しにくい1番の理由が「周りに迷惑をかけてしまうから」です。自分が抜けると周りの人の業務が増えるため、迷惑をかけないように育休取得を諦めてしまうのです。

そこで誰もが育休を取得しやすいように、業務フローの改善やITツールの導入など、業務の効率化に取り掛かってはいかがでしょうか。

また、業務が属人化すれば「自分しかわからない仕事があるから休めない」ということになります。

誰が抜けても仕事が回るように、情報の共有、マニュアルの作成などをおこないましょう。

このような職場環境の改善を図ることで、誰もが育休だけでなく、休暇を取りやすくなります。

まとめ

育休を取得したくても、職場に前例がなければ「育休を取得したい」と言いづらくて諦めてしまう男性も多いものです。

会社が育休制度を整備し、男性も育休を取得できることを周知することで、会社への愛社精神が高まり、離職率の低下につながる可能性があります。

改正育児・介護休業法では、男性の育休制度が変わります。事業主は育休取得できる社員に対し、個別の周知や取得の意向確認が義務化されるため、男性がスムーズに育休を取得できるような仕組みづくりが急がれます。

男性が育児休業を取りにくい理由を把握し、解消するための取り組みをおこなうことで、従業員のプライベートが充実し、生産性もアップするでしょう。

男性社員が安心して働ける職場環境を構築し、男性の育休について管理職をはじめ、全従業員の意識改革をおこなうことは、企業にとって急いで取り組まなくてはいけない要件です。

著者:早瀬 加奈子

会社員時代は、楽器小売業の会社で10年以上経理に携わっていました。
現在は専業のWEBライターとして活動しています。
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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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