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世界競争力ランキングからみる日本企業の強み弱み

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世界競争力ランキングにおける日本企業の評価

世界競争力ランキング

(1)世界競争力ランキングとは
世界競争力ランキングとは、スイスに本拠を置くビジネス-スクールである経営開発国際研究所(IMD)が毎年公表する国際競争力の国別ランキングです。

統計データと経営層へのアンケートに基づいて順位が算出されています。三菱総合研究所が毎年取り上げ、分析するほど信頼性が高いランキングです。

(2)日本の評価

出典:「世界競争力ランキング」IMD

実質GDP成長率5.1%であった平成(バブル)景気で4年連続世界一から始まり、日銀の金利引締めで1位から転落しました。97年消費税導入と消極財政で一気に4位から17位まで急落。

しかし、19年30位台へ突入した要因は消費税増税ではなく企業競争力の低下でした。

ビジネス効率の悪化と共に総合ランキングがダウンしていることが下記表からわかります(逆に経済状況は改善)。同じようなモノづくり大国ドイツと比べると近時の急落は問題です。

(3)日本企業の評価

ビジネス効率性悪化の原因は、生産性・効率性及び経営プラクティス、取組/価値観です。

総合ランキングが30位台に落ちた19年には労働市場も合わせ急落しています。

特に環境変化への俊敏性を示す経営プラクティスは調査国63カ国中最下位です。

世界デジタル競争力ランキング

(1)世界デジタル競争力ランキングとは
「世界競争力ランキング」と同じIMDが公表しているデジタル分野の国の施策や企業対応、デジタルによる社会変革を分析し、ランキングにしています。

統計データと経営人へのアンケートの総合評価である点も世界競争力ランキングと同じで、世界競争力ランキングから流用している項目もあります。

総務省「情報通信白書」でも取り上げられている信頼性の高いランキングです。

(2)日本の評価

出典:「世界デジタル競争力ランキング」IMD

GAFAMを有するアメリカはトップ層、インダストリー4.0でスマートファクトリーを目指すドイツは中盤で持ち堪えています。

日本は人材やビジネス分野の競争力が弱まってきているため、世界競争力ランキングと同様30位台に落ちそうです。

(3)日本企業の評価

画像引用:令和3年情報通信白書総務省

総合ランキングで日本を苦戦させている要因も「世界競争力ランキング」と同様、企業のデジタル競争力低下にあります。

企業分野の多くの項目が「世界競争力ランキング」と重複しているためでもありますがデジタル人材不足の問題は深刻です。

日本企業の評価まとめ

(1)日本企業の強み
①世界競争力ランキング
「企業の社会的責任感の強さ」(4位)「消費者満足の重視」(11位)

確かに重要なことですが、企業理念レベルの問題です。現場レベルにおける「生産性・効率性」、「俊敏性」、経営レベルの「グローバル化」、「デジタル化」、「ダイバーシティ」では世界最低レベルになっているのです。

②デジタル競争力ランキング
「ロボット分布」2位(ビジネス俊敏性)

日本の製造業ビック3のうち、電機産業は情報革命に出遅れ、自動車産業はEV化で厳しい状況になる中、残る機械産業はスマート工場やデジタルツインで成長可能性を秘めています。

(2)日本企業の弱み

参考:『IMD「世界競争力年鑑2022」からみる日本の競争力 第2回:分析編』三菱総合研究所

デジタル化やグローバル化、ダイバーシティは世の中の変化への対応の鈍感さ、つまり俊敏性の弱さが原因といえます。

企業の俊敏性部門すべてが最下位であることと整合性が採れ、日本企業の最弱点は「俊敏性」と考えます。

(3)日本企業の弱みの原因

参考:『IMD「世界競争力年鑑2022」からみる日本の競争力 第2回:分析編』三菱総合研究所

IMDの競争力評価は、統計データと経営層へのアンケートの総合成績であることから、統計項目とアンケート項目を分けてみると、生産性・効率性における統計とアンケートの齟齬は大きく、俊敏性における統計とアンケートの齟齬は小さいことがわかります。

経営層が生産性・効率性に厳しい見方をしているのです。

こうした経営陣が生まれた背景には、「失われた30年」の一要因とされる「情報化社会に適応できないゾンビ企業を存続させた」ことにあるのではないでしょうか。

つまり、日本企業が世界一であった80年代の旧態依然の経営スタイル、生産性・効率性を重視する経営感覚のまま、デジタル化、グローバル化、ダイバーシティに対応できず企業競争力を低下させているのです。

日本企業の最弱点「俊敏性」ビジネスアジリティとは

ビジネスアジリティとは

ビジネスアジリティは、スタートアップ分野における「リーン方式(*)」や開発分野の「アジャイル(*)」に代表され、広義では管理部門が消滅した「ティール組織(*)」も含まれます。

しかし、ビジネスアジリティ研究所がいうように、「組織は最もアジャイルでない部門と同じくらい機敏性が高い!」のです。

アジリティを部分的に強化しても、組織のパフォーマンスは最もアジリティの低い部門に制限されます。

つまり、ビジネスアジリティは「組織の能力、行動、作業方法のセット」であり企業の一部門を強化しても意味がないのです。

(*)リーン方式:小規模の試作品で潜在顧客層の課題とソリューションをテストし顧客を発見開発していく新事業開発法。
(*)アジャイル:小規模の実装とテストを繰り返し素早く学び進展させていく開発手法。
(*)ティール組織:従業員目標と企業目標が一致するので管理部門が不要となり、従業員個々が決定を下し行動する組織。

ビジネスアジリティが注目されている背景「VUCA」

(1)VUCA(ブーカ)とは
VUCAとは、Volatility(激動)、Uncertainty(不可実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(不透明性)の頭文字と取ったビジネス用語です。

90年代後半軍事用語として生まれ、AIが普及する10年代に入ると共にビジネス分野でも使われるようになりました。

・Volatility(激動):スマホ普及、グローバル化後の中国アジアとの競合
・Uncertainty(不確実性)」:自然災害、コロナ
・Complexity(複雑性)」:ASEAN所属国の国内事情
・Ambiguity(不透明性)」:情報革命による価値の多様化

(2)VUCAへの対応「OODA(ウーダ)ループ」とは
OODAループとは、Observe(観察)、Orient(状況理解)、Decide(決定)、Act(行動)の頭文字をとった意思決定と行動に関する理論です。

VUCAと同じように軍事用語として生まれVUCAと共にビジネス分野でつかれるようになりました。

90年代インターネットの普及に伴い、一般消費者が多様な情報を迅速に取得することが可能になったため、そのニーズ・課題は多様化、変化も高速化しました。

いちいち繊細な計画を立てていては変化する消費者ニーズ・課題を捉えられないので、現場で観察・判断しすぐに行動に移すことが必要になっているのです。

AI導入で変化はさらに加速化、VUCAの時代となり、状況分析のスピードも上がりました。

経営管理部門をトップとする計画中心のPDCAループでは、現場を重視し観察・状況理解を中心とするOODAループに対抗できない時代は移っているのです。

そしてこの取り残された企業こそ、日本企業で、その結果が2つの競争ランキングに反映されているのではないでしょうか。

おわりに

2つの競争力ランキングに現れた日本企業の競争力の急落は、産業革命から情報革命への構造変化に対応できていないPDCAループ組織のビジネスアジリティの弱さが、デジタル化やグローバル化、ダイバーシティ等世の中の変化と共に徐々に現れ、AIによるVUCAの加速で全面的に表出化した結果と考えます。

PDCAループ組織で中心となる経営管理部門に課題が多くあることとも整合します。

VUCA時代に求められるビジネスアジリティの形はPDCAループと対をなすOODAループです。現場が中心となり現場を活かす組織にしなければならないのです。

第2回記事ではこのOODAループを中心とするビジネスアジリティを中堅中小企業が実装化できる形で提案しています。

著者:maru
2011年から中小企業診断士として経営コンサルタントをはじめる。
通常の企業経営コンサルから、無農薬農業経営、介護施設運営等の幅広い業種に関わり、
エンターテインメント施設の開業のための市場調査から、債務超過企業の事業デューデリジェンスまで、企業成長段階に応じたコンサルタントを行っています。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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