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262の法則とは何か?人材育成の際に「個」に目を向けるべき理由

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「優秀な社員とそうではない社員の間に差が生まれてしまう」
「適材適所を意識しているのに、なぜか社員のモチベーションが上がらない」

上記のようなお悩みは、多くの企業経営陣が抱える共通の課題ではないでしょうか。
では、なぜ同じような課題を抱えることになってしまうのでしょうか?その原因の一つに「社員を一律に捉えてしまうマネジメント」が挙げられます。

そこで本記事では、組織内の人材分布を理解し、より効果的な人材育成と生産性向上を実現するための鍵となる「262の法則」について解説します。

この法則を理解することで、なぜ「個」に目を向けたマネジメントが必要なのかが明確になるはずです。さらに、上位層・中間層・下位層それぞれに合わせた具体的な育成ポイントまで紹介しますので、ぜひご参考にしてください。

そもそも「262の法則」とは何か?

そもそも「262の法則」とは何を示した法則なのでしょうか?基本を理解しておかなければ、アレンジや対応も難しくなるものです。

まずは、「262の法則」とは何か、似た響きを持つ法則との違いと併せて見ていきましょう。

人材の働く意欲・スキルの分布を表した法則

262の法則とは、どのような集団内であっても、「優秀な上位2割(ハイパフォーマー)」「平均的な中間6割(アベレージ)」「成果の低い下位2割(ローパフォーマー)」に自然と分かれるという理論を指します。

人の入れ替えや教育を行っても、原則、集団全体はこの比率に戻ろうとするため、下位層を切り離せばOKという簡単な話でもありません。 そして、この法則の認識は「全社員に一律の育成プログラムを施すのではなく、各層の特性とニーズに合わせた異なるアプローチが必要である」という、人材育成の基本的な考え方につながっているのです。

「343の法則」「271の法則」との違い

262の法則以外にも人材分布を示す法則があります。以下から、それぞれが示す指標と、262の法則との違いを見てみましょう。

なお、これらは組織の評価基準や文化に合わせたバリエーションであり、根本的な考え方は共通しています。

343の法則
物事やビジネスにおける興味関心を表す法則の一つ。「好意的で関心が強い3割」「どちらでもない4割」「好意・興味がない3割」に分ける考え方であり、262の法則とは対象となる物事が異なります。
271の法則
パフォーマンスではなく、人間関係における比率を表す法則の一つです。「気の合う人2割」「どちらでもない人7割」「気の合わない人1割」であり、人間関係のトラブル解決や考え方の是正を行う際に有用とされます。

262の法則と併せて、改善したい対象に沿った法則を指標とすると良いでしょう。

【上位2割】人材育成のポイント

262の法則で示されたように、各層で仕事への意欲や持ち得るスキルは異なります。だからこそ、一律での人材育成ではうまくいかないという結果につながりやすいのです。

ここからは、階層ごとにおける人材育成のポイントについて解説していきます。まずは、スキル・意欲ともに高いハイパフォーマーである「上位2割」の育成ポイントについて見ていきましょう。

高い目標設定と正当な評価制度を

上位2割の社員には、現状に満足せず成長を続けられるよう、高い目標と、達成した際の正当な報酬と評価が特に必要とされます。

ハイパフォーマーは、現在の業務に慣れてしまうと、意欲が低下したり転職を考え始めたりする可能性があります。そのため、彼らの能力を最大限に引き出すためには、現状の達成レベルを少し超える、挑戦的な目標(ストレッチゴール)の設定が大切なのです。

また、目標を達成した際には、以下のような対応も重要なポイントになります。

  • 適切な昇給や昇進
  • 新たなプロジェクトの主導権を与える
  • 重要な意思決定に参加させるなどの権限移譲を行う

上記を通じ、「自分の貢献度が正当に認められている・会社は自分を評価している」と感じられる機会を提供し続けることが、モチベーションの維持につながります。

マネジメント能力を高めるサポート

上位2割は将来のリーダー・幹部候補でもあるため、マネジメント能力や事業全体を俯瞰する視点を身につけるためのサポートが不可欠です。ただし、高い成果を出す個人の能力と、組織を導くマネジメント能力は異なります。

そのため、優秀な社員をマネージャーに昇格させる際は、OJTに任せるだけでなく、リーダーシップ研修やメンター制度を通じて、意図的にマネジメントスキルを磨く機会を与えるようにしましょう。

また、他の部門の業務を経験させるジョブローテーションや、経営層との意見交換の場を設ける方法もおすすめです。より広い視野と企業全体への貢献意識を育み、組織の持続的な成長を支える次世代の経営人材へと育成していけるはずです。

【中間6割】人材育成のポイント

組織の土台を支える中間6割の社員は、組織全体のパフォーマンスを底上げするための鍵を握っています。

この層のモチベーションを維持し、成長させられれば組織は大きな恩恵を受けられるようになるでしょう。ハイパフォーマーとはまた異なる、育成のポイントを解説します。

業務目標・役割の明確化と分かりやすい評価基準

中間層のパフォーマンスを向上させるには、業務目標と各自の役割を明確にし、評価基準をオープンにすることが重要です。

中間層の社員は「何をすれば評価されるのか」が不明確だと、努力の方向が定まらず漫然と業務をこなす「待ちの姿勢」になりがちです。

そのため、KGIやKPIと連動した具体的な業務目標を個々人に割り当て、チーム内で期待される役割を明確にすることが必須になります。

さらに、評価基準を可能な限り数値化・言語化し、透明性を高めることで、目標達成に向けたモチベーションを向上させやすくなります。社員一人一人が「努力は報われる」という実感を持てる環境を整えられれば、組織全体の生産性向上に寄与することでしょう。

上司・マネージャーによる定期的なサポート

中間層には、定期的なフィードバックと対話の機会を提供し、成長への道筋を示すことも重要です。

なぜなら、6割の中間層は、「誰かが見てくれている」という感覚と、具体的なアドバイスによって大きく伸びるからです。

マネージャーは、目標設定時だけでなく、1on1ミーティングなどを通じて定期的に進捗を確認し、業務上の課題解決をサポートするよう努めましょう。

特に、ポジティブな行動を具体的に褒めるフィードバックは、中間層の自己効力感を高め、上位2割を目指そうとする意欲を刺激します。成長の可能性を秘めているこの層に投資することで、費用対効果の高い育成策となり得るのです。

【下位2割】人材育成のポイント

下位2割の社員は、組織全体の足を引っ張っていると見なされがちです。

しかし、適切なアプローチを施すことができれば、モチベーションを回復させ、中間層へと引き上げることも十分に可能です。安易に切り捨てるのではなく、個別の関与が必須だと意識しましょう。

自身の現状と課題を把握する

まずは、下位2割の社員本人に、自身のパフォーマンスの現状と具体的な課題を把握させます。

パフォーマンスの低い社員は、多くの場合、自分がなぜ低い評価を受けているのか、何が問題なのかを正しく認識できていません。そもそも、客観的視点で自身を評価できるのであれば、中間層に甘んじることもないはずです。

だからこそ、感情的な指導や抽象的な指摘は避け、「目標達成率が○○%である」「特定の業務に平均より〇倍の時間がかかっている」といった客観的なデータや事実を提示することが大切になるのです。

その上で、「この状況をどうしたいか」という本人の意思を引き出し、「改善したい」という自発的な意欲を引き出せるかが大きなターニングポイント。この自己認識がなければ、どのような施策を講じたところで劇的な効果は期待できないでしょう。

目標設定と上司・マネージャーによる細やかな教導

下位2割の社員には、達成可能なスモールステップの目標設定と、上司・マネージャーによる手厚い教育頻繁なフォローアップも必要です。

この層は、いきなり高い目標を与えても挫折感を覚えるだけです。まずは、「1週間で達成できる小さな成功体験」を積み重ねられるよう、難易度の低い目標を設定しましょう。

業務の進め方やスキルの習得については、教導役(チューター)がつきっきりでOJTやマニュアルを用いた個別指導を行います。重要なのは、「できないこと」に焦点を当てるのではなく、「できていること」を徹底的に認め、次のステップへとつなげることです。

下位2割だけでチームを構築する

下位2割の社員だけで構成されたチームを一時的に構築することで、彼らの自律性と成長を促す実験的な手法もあります。

この層の社員は、ハイパフォーマーや中間層と一緒にいると、自身で比較して自信を失い、さらにパフォーマンスが低下する恐れがあります。そこで、下位2割だけでチームを作り、彼ら自身の力で小さなプロジェクトの達成を目指すのです。

この環境では、誰もが同じスタートラインにいるため、劣等感を感じにくく、自分たちで課題解決のプロセスを考えることを強いられます。

マネージャーはあくまでファシリテーターとして見守りましょう。大切なのは、成功体験を積ませることで、「自分たちにもできる」という自信と、自発的な成長のきっかけを与えることです。

まとめ

262の法則が示すように、組織における人材のスキル・モチベーションは一律ではありません。

人材育成を行う際には、この原則を理解し、「個」の特性と段階に合わせたマネジメントを行うことが大切です。社員の働くモチベーションと企業全体の生産性を向上させる糸口を見つけるには、結局のところ個人をしっかりと見るしかないのです。

ただ、すべての企業が自社内だけで上記の育成を行えるとは限りません。時間的・人材的リソース不足によって、個別の育成をしたくてもできないというのが現実ではないでしょうか。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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