「ダイバーシティの意味は分かるが、具体的になぜ必要なのかはイマイチ…」
「ダイバーシティ経営を推進しながら、人材育成はどうすれば良いのか?」
ダイバーシティという言葉が定着して久しいですが、実際にどのように推進すべきなのか・なぜ必要なのかを明確に理解できている方は少ないように感じます。
実際のところ、忙しい日々の業務や、目まぐるしい世情を身近にした状態で、今までと全く違った考え方を柔軟に取り入れろと言われても難しいというのが現実でしょう。しかし、難しいからと言って放っておけば、世情から取り残されるばかりです。
そこで本記事では、今一度ダイバーシティとは何か、なぜ必要とされているのか、メリットや課題までを網羅的に解説いたします。
「ダイバーシティとは結局…?」と、イマイチ理解しきれていないと感じるのであれば、ぜひ最後までご参考にしてください。
そもそもダイバーシティとは?
ダイバーシティという言葉を耳にすることは増えましたが、その本来の意味や、なぜ今これほどまでに叫ばれているのか、正しく理解できているでしょうか?
まずは、日本における定義とその背景を整理しましょう。
国内では主に「雇用人材の多様性を確保する」こと
日本におけるダイバーシティとは、単に「色々な人がいる」状態を指すのではなく、多様な属性を持つ人材を戦略的に受け入れ、その能力を活かすことを意味します。
人手不足が深刻化する中で、従来の特定の属性(フルタイム勤務の日本人男性など)に頼った組織運営では、労働力の確保と持続的な成長が難しくなっているからです。具体的には、性別、年齢、国籍、障がいの有無といった外見的な属性だけでなく、価値観、働き方、キャリア背景といった内面的な属性も含まれます。
多様な人材が「自分らしく働ける環境」を整えること自体が、現代の企業にとって不可欠な経営戦略となっているのです。
ダイバーシティが重要視される背景
ダイバーシティが重要視される最大の背景は、社会環境の急激な変化と、労働力確保の必要性にあります。少子高齢化による生産年齢人口の減少に加え、働き手の価値観が多様化しており、一律のマネジメントでは離職を防げず、優秀な人材が集まりにくくなっているためです。
例えば、育児や介護と仕事を両立したい社員や、副業を希望する社員、異なる文化背景を持つ外国人材などが挙げられます。多様なニーズに応えられない組織は、貴重な戦力を失うリスクを抱える結果になるといえるでしょう。
変化の激しい市場で生き残るためには、多様な人材が継続して就業できる環境作りが最優先課題となるのです。
ダイバーシティ経営によって得られる4つのメリット
ダイバーシティを推進することは、単なる社会貢献や「配慮」ではなく、企業の競争力を高める戦略的投資としての側面があります。 ここからは、ダイバーシティ推進によっ得られる4つの大きなメリットを見ていきましょう。
優秀な人材を獲得しやすい
ダイバーシティを推進することで、採用市場における競争力が格段に向上します。門戸を広く開き、多様な働き方を認める企業姿勢は、属性に関わらず能力を発揮したいと願う優秀な人材にとって非常に魅力的に映るからです。
具体的には、「時短勤務でも管理職を目指せる」「リモートワークで場所を選ばず働ける」といった柔軟な制度があることで、これまで採用候補に入らなかった層からも応募が集まるようになるでしょう。
採用の母集団が広がることは、組織の核となるハイパフォーマーを確保する確率を高めることにつながります。
リスク管理能力の向上が期待できる
多様な視点が組織にあることは、企業の危機管理能力を高めることにもつながります。
同じような考え方の人ばかりが集まると「同質化」が起こり、組織の欠陥や不正、市場の変化といったリスクに気づきにくくなるためです。
例えば、以下のようなリスク管理能力向上が見込めます。
- 同一の価値観では気づきにくい不正を見抜けるようになる
- 商品開発における炎上リスクの予防
- 多様な顧客ニーズとの乖離を早期に発見できる
「異論」を許容するダイバーシティは、組織を不測の事態から守る強力な防波堤となります。
イノベーション・生産性の向上
ダイバーシティ経営は、創造性の向上と業務効率の改善をもたらします。異なる知識や経験が組み合わさることで化学反応が起き、従来の延長線上にはない新しいアイデアが生まれやすくなるからです。
実際に、異なる業界出身の中途採用者の視点により、長年当たり前だと思っていた非効率な業務プロセスが改善され、劇的な生産性向上が実現するケースは少なくありません。
多様な個性やスキルがぶつかり合う環境こそが、企業の競争力の源泉であるイノベーションを生み出すのです。
社外からの評価向上の期待
ダイバーシティへの積極的な取り組みは、企業の社会的信頼(ブランド価値)を大きく向上させます。現代の投資家や取引先は、企業の「持続可能性」を判断する指標として、多様性への対応力を極めて重視しているためです。
具体的には「えるぼし認定」や「くるみん認定」の取得、あるいは統合報告書での情報開示により、ESG投資の対象として選ばれやすくなったり、優秀な学生からの志望度が高まったりします。
社会的な期待に応えることは、結果として資金調達や採用において有利な状況を作り出してくれるでしょう。
ダイバーシティ経営における課題
メリットが期待される一方で、実際の現場では推進を阻む壁も存在します。
多くの企業が直面しやすい「経営陣」と「従業員」それぞれの視点における課題について、も確認しておきましょう。
経営陣の不理解・制度の不備
ダイバーシティが進まない大きな要因は、トップ層の意識不足と、形だけの制度運用が考えられます。経営陣が多様性を単なる福利厚生と誤解していると、現場へのリソース配分が進まず、評価制度との整合性も取れないためです。
例えば、女性管理職比率の数値だけを追い、サポート体制や公平な評価基準がないまま登用を進めた結果、登用された本人も現場も疲弊してしまうといったケースが挙げられます。
まずは経営陣がダイバーシティを経営戦略として再定義し、制度を実効性のあるものへ整える必要があります。
従業員自身の不理解
現場レベルでの「不公平感」や「既存文化への固執」も大きな壁となります。多様な働き方を認めることが、既存の社員にとって「自分たちの負担が増える」「特定の層だけが優遇されている」と受け取られてしまうことがあるからです。
具体的には、育児中の社員のフォローに回る独身社員が、自分の評価や負担に対して不満を抱き、チーム内に不協和音が生じてしまう状況などが考えられます。
多様性を推進する目的を全社員に共有し、誰にとっても働きやすい環境を目指していることを丁寧に説明し続ける対話が不可欠です。
ダイバーシティ経営と人材育成を進める際のポイント
多様な人材を抱えるだけでは、組織の成長にはつながりません。
それぞれの個性を最大限に活かし、成果に結びつけるためのマネジメント手法とは何か?育成を成功させるための3つのポイントを紹介します。
個人ではなくチームで若手を育てる
多様な人材を育てるには、特定の指導者に依存しない「チーム育成分散型」の仕組みが有効です。
上司一人の価値観で指導すると、部下の多様な可能性を潰してしまう恐れがありますが、チームで関わることで多角的なフィードバックが可能になるからです。
メンター制度を導入し、直属の上司以外にも異なる部署やバックグラウンドを持つ先輩社員が相談に乗る体制を作ってみましょう。こうすることで、若手は多様なキャリアモデルを学べるようになります。
チーム全体で育てる文化は、個々の「居場所」を作り、離職率の低下にも大きく寄与します。
社内制度・成長環境を整備する
多様な人材が力を発揮するためには、公平な評価と柔軟な働き方の両立が欠かせません。どんなに優秀な人材でも、自身のライフスタイルに合わせた働き方が選べず、成果が正当に評価されない環境ではモチベーションを維持できないためです。
成果で評価する仕組みを取り入れたり、ワークライフバランスを支える柔軟な勤務体系を標準化したりすることで、多様な雇用形態の人材が納得して働ける基盤が整います。
個々の事情に配慮しつつ、誰もが納得できる「公平な土俵」を整えることが、人材育成の近道です。
多様な人材獲得のための採用プロセスを組む
育成の成果を最大化するには、入口となる採用段階から多様性を意識したプロセスの構築も大切です。これまでの「自社に合った人」を選ぶ採用基準では、組織の同質化を脱却できず、変化に強い組織が作れないためです。
採用基準からバイアスを排除し、異なる強みを持つ人材をターゲットにする勇気が試されます。また、選考プロセスに多様な属性の社員を関わらせたりするなどの工夫が有効です。
多様な人材を戦略的に獲得し、その個性に合わせた育成環境を提供することこそが、強い組織を作るための鉄則です。
まとめ
ダイバーシティの推進は、単なる社会貢献ではなく、企業の生産性を向上させ、優秀な人材を惹きつけ続けるための「最強の人材育成戦略」です。
社員一人ひとりを一律に捉えるのではなく、それぞれの背景や強みに目を向けるマネジメントへとシフトすることで、組織全体のパフォーマンスは劇的に変わります。公平な評価制度や柔軟な環境整備を通じて、多様な個性が響き合う組織を目指しましょう。
しかし、実際に上記のすべてを自社内で完結させることが難しいのも現実です。人的リソースが足りない、育成の知識が足りないなど壁に当たることも多いはず。そのようなときは、ぜひ当社の「錬成講座」をご活用ください。
「異業種交流研修」という、多様な価値観に触れられる研修で視野の拡大・自ら考える重要性を理解できるはずです。
















