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「メディア」の変化への対応方法

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メディアの変化に有効なクロスメディア戦略とは

クロスメディア戦略とは

メディアごとに異なるマーケティング施策を展開し、様々な体験を通して、顧客に商品やサービスのより深い理解を促すマーケティング手法です。

メディアごとの特性を生かしたマーケティングなので、メディアの変化に対応しやすく、費用対効果を図りながら施策を進めていくので経済的です。

クロスメディア戦略の具体的流れ

クロスメディア戦略は、具体的には以下のように顧客を成長させながら、ステップごとに各メディアの特徴を生かしてマーケティング施策を展開していきます。

ステップ1顧客をゲットする

  • ターゲットを絞り込む
  • ターゲットの購買サイクルに応じて施策を展開する

・認知
・関心
・検討
・購入

ステップ2顧客をキープする

  • 顧客との対話
  • 顧客維持

ステップ3顧客をグローする

  • 既存顧客からの新たな売上

・アップセル
・クロスセル

  • 顧客による他の顧客の紹介

顧客をゲットする

ターゲットを絞り込む

①フレームワークによる絞込み

効率的なターゲット絞込みのためのフレームワーク「6R」は、他社と差別化できるポジショニングに役立ちます。

・Realistic Scale:ターゲットの市場規模は自社商材にとって十分な規模と収益性を有するか
・Rate of Growth:ターゲット市場の成長は見込めるか
・Rank/Ripple Effect:ターゲットにとって自社商材の価値の優先順位と波及効果は高いか
・Reach:ターゲットに到達できるか
・Rival:競合状態は激しくないか
・Response:マーケティングミックス(商品、価格、チャネル、プロモーション)への反応は測定可能か

②メディアによる絞込み

  • アナログメディアによる絞込み

・趣味嗜好性の強いアナログメディア:雑誌(女性誌)/専門誌(第3回第2章の事例参照)
・地域性の強いアナログメディア:地方紙/ラジオ/ポストDM

  • デジタルメディアによる絞込み

・SEOによるオウンドメディアへの流入の絞込み(第3回第1章の事例参照)
・特定分野コンテンツの充実による被リンク獲得
・SNS媒体特性による絞込み((2)①認知段階のデジタルメディアの特性

ターゲットの購買サイクルに応じて施策を展開する

購買サイクル段階に応じた最適な施策を展開することでターゲットを購買まで促します。

①認知段階の施策
ターゲットにあったメディアを使うこと

  • アナログメディアの特性

・TV:全国的認知
・新聞:地域性・特定思考
・ラジオ:地域性・コア層
・雑誌:特定の趣味嗜好
・屋外・交通広告など:毎日繰り返しいろんな層に
・DM:地域性、手元でじっくり

  • デジタルメディアの特性

・LINE:全世代満遍なく
・TikTok:若年層(特に10代)
・Instagram:10代20代の若年層、特に高い女性比率
・Twitter:20代が多いが、平均年齢35歳で幅広い世代
・Facebook:30代から40代の落ち着いた社会人

②興味関心段階の施策
ターゲットの欲求を喚起するメッセージや売り文句、画像などでプロモーションをしたり、ウェビナーなどメッセージ性の高いプロモーションをしていきます。SNS動画で視覚に訴えることが必要です。

③比較検討段階の施策
行動を興すメリットを与えること及び競合との違いや根拠ある優位性、差別化のポイントを伝えることが大切です。

そのためにクチコミの誘発やUGC(ユーザー投稿数)の醸成、ターゲットを絞ったオファー、期間を絞ったオファーなど希少性の原理を利用します。

④購買段階の施策
買いにくさはないか、選びやすくする工夫、多様な支払い手段、チャネルとターゲットが合っていることを確認します。

顧客をキープする(顧客囲い込み)

個々人に紐づけされたデジタルデバイスを通じて顧客とコミュニケーションをとることは大企業と差別化できる重要な要素です。

デジタルメディアのマシンツーマシンの接続性を人間と人間の触れ合いで補完します。

アナログによるコミュニケーション

・読者ハガキ(第3回第2章の事例参照)
・ワークショップ・イベントなど(第3回第2章の事例参照)
・訪問・相談などの顧客関係管理
・ロイヤリティプログラム
・ヒューマンタッチ:人間と人間の触れ合い(例:ザ・リッツ・カールトン ホテル)

デジタルメディアによるコミュニケーション

・メール、アプリなど
・会員モニター(第3回第2章の事例参照)
・SNS「中の人」(例:SHARPや文房具のキングジムのTwitter公式アカウントの「中の人」)
・ネット上のワークショップ・イベントなど(第3回第2章の事例参照)
・ネット上の訪問・相談など
・FacebookやInstagramで「いいね」を送りあう
・LINEでスタンプをプレゼントする

顧客をグローする(共創)

既存顧客からの新たな売上

クロスセル(関連商品・周辺商品販売)やアップセル(高価格帯商品販売)を実現するには、コンテンツ作りにどれだけ顧客の声を反映させるかにかかっているといえます。

特に中堅中小企業は、大企業と異なり、柔軟なビジネスモデルの追加や変更が可能なため、顧客をグローする段階は大企業と差別化するうえに非常に重要です。

第3回第1章の事例では具体的なペルソナから、第2章の事例では実際の声からコンテンツが作られ、成功を収めています。

共創する仕組み

ここでは第3回第2章で取り上げている株式会社ハルメクの「読者共創型メディア」を参考に顧客と共創するPDCAの回し方の一例を紹介します。

①P:プロジェクト

  • 声を活かすコンセプトを定義

「入口は多面なメディアでも出口は株式会社ハルメクのファン」

  • 声を活かす収益構造の構築

ネット通販の収益が事業全体の7~8割を占めるため、「読者のことだけ考えて、広告主顔色をうかがう必要のない」収益構造を構築しています。

②D:実行

③C:チェック

  • 実際の声を聴く仕組みの構築

読者ハガキが毎月2000枚届きます。雑誌の内容に無関係な意見を書ける欄を設けることでハガキを出し易くしています。

約3000人の会員モニターがおり、ネット通販やイベントなど周辺事業を展開し、その反応及び声を聴いています。

  • 声の分析

社内にシンクタンクを設置し、雑誌の満足度調査から一般女性の意識調査も実施しています。

④A:アクション

  • 声を活かしてコンテンツ改善

「必ず前より良くなっていく」をコンセプトに、よかったところを伸ばして、無駄だったところはそぎ落とすことを徹底しています。

  • 声を活かして周辺事業展開

周辺事業を充実させることで、読者の悩み解決方法をいろいろな角度で提供しています。アナログ世界からネット通販やデジタル講座にスムーズに移行できるよう充実したマニュアルを作成しています。

読者層の異なるweb版の発行(アナログ雑誌は60代、web版は50代)し、誌面で紹介した特集を自宅で出来るアイテムを自社で通販を行っていたり、誌面で紹介した美容師から直接アドバイスが受けられるイベントの開催やイベントに参加できるツアーの企画お行っています。

顧客による他の顧客の紹介

  • 被リンクを獲得する3つの施策

SNSやメルマガなど検索以外の配信経路を設計し、検索意図に沿ったコンテンツを作ります(コンテンツSEO)。

また、寄稿記事やインタビュー記事など、シェアされやすい記事を作ります。

そして、影響力のある媒体、例えばTVや雑誌などの露出を増やします(第3回の2つの事例とも広報戦略を頻繁に行っています)。

  • SNSで拡散されやすい仕掛けをする

Twitterで広く浅く「キャンペーン」や「新作情報」を拡散させたり、LINEで狭く厚く「クーポン」や「優待券」を配ります。

  • 顧客の声を活かしたコンテンツ開発で所属コミュニティの愛着推奨を得ることができます。

終わりに

この回では、メディアの変化に対応する手段の理論的側面を紹介しました。

第3回ではその手法が実際行われている事例を取り上げています。

最初の事例は顧客をゲットする施策を主に紹介し、次の事例では顧客をキープ・グローする施策を紹介しています。

特に顧客をキープ・グローする施策はあまり詳しく紹介される事は無いので、大変参考になります。

実際この企業はデジタルとは対照的な出版という斜陽なアナログ業界の中で目覚ましい成長を遂げているのです。

この成功例は業種業態を問わず参考になる「顧客の声を徹底的に聞く」ことの大切さを教えてくれます。是非読んでみて下さい。

著者:maru

2011年から中小企業診断士として経営コンサルタントをはじめる。
通常の企業経営コンサルから、無農薬農業経営、介護施設運営等の幅広い業種に関わり、
エンターテインメント施設の開業のための市場調査から、債務超過企業の事業デューデリジェンスまで、企業成長段階に応じたコンサルタントを行っています。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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