適切な人材配置は、それぞれの社員が力を発揮するために必須の項目です。
しかし、日々の業務に追われていると、社員の適性や隠れている資質を細やかに発掘することはほぼ不可能だといえます。
そのようななか、現在注目を集めているのが、客観的な数値に基づいて適切な評価を下せる「人材アセスメント」です。 本記事では、人材アセスメントの定義から代表的な手法、メリットデメリットや実施する際のポイントまで詳しく解説していきます。「実際にどのような効果が期待できるのだろう?」このような疑問を感じているのであれば、ぜひ最後までご参考にしてください。
そもそも人材アセスメントとは?
結論からいえば、人材アセスメントとは「人材の適性やスキル・能力を、第三者が客観的に評価し、適切な人材配置や能力開発を進めるために有用な手法」です。
従来では、自社に在籍する人材の適性や能力を判断する方法は、直属の上司による面談や普段の働きぶりを見るという方法でした。しかし、直属の上司による評価・判断には、以下2つのリスクが考えられます。
・上司本人と社員の関係性によって評価に主観が入る
・潜在的な資質や能力ではなく、現職における評価のみになるリスク
例えば、入社時から直に指導してきた思い入れのある社員と、途中で指導することになった関係の浅い社員を例に挙げてみましょう。
関係の深い社員であれば、仕事への癖や粘り強さがあるかどうかといった点もある程度は把握済みです。しかし、途中で指導することになった関係の浅い社員の場合、直近の成果や失敗でしか相手を判断する材料がありません。
また、上司の全てが、社員の潜在的な資質やスキルを見抜けるとも限りません。関係性を深く築けないままでは、結局のところ現職の働きぶりという「誰からでも見える部分」から評価するしかないのです。
このように、相手への解像度が異なったり、上司本人のスキル不足があったりして、客観的な評価が難しいケースがあります。
しかし、人材アセスメントを取り入れた場合、評価数値を下す対象は、基本的に社員本人との関係性はフラットな状態。これによって、社内だけで評価を行う場合と異なり、客観的かつ公平な判断を下せるのです。
人材アセスメントにおける代表的な3つの手法
社外の第三者が人材の適性や資質を判断すると聞くと「本人を知らないのにどうやって?」と疑問が出てくることと感じます。
ここでは、人材アセスメントで用いられる手法について見ていきましょう。代表的な方法は以下の3つです。
手法 | 概要 |
適性検査 | 第三者機関によるアンケートやテストを用いて、社員の適性や資質を判断する手法です。社員の採用時や人材配置の参考にできます。 |
360度評価 | 上司からの話だけではなく、評価対象である社員の先輩や同僚、後輩など周りからの話を聞き、総合的に評価する方法。社員本人への内省を促す他に、一面から見ただけでは気付けないポイントを評価できます。 |
面談・研修 | 第三者機関のプロによる面談や研修です。実際の業務を想定した研修を実施し、参加した社員の反応や言動によって評価を行う方法。人材選抜の他に能力開発の面を持ちます。 |
適性検査や研修の内容は、企業が測定したいと考えた評価項目によって異なるケースもあります。いずれにせよ、一方向だけではなく様々な方法を用いて評価を判断できるため、フラットな数値を確認できるようになるはずです。
人材アセスメント導入のメリット
実際に人材アセスメントを導入することで、どのようなメリットが見込めるのでしょうか。
ここでは、企業側・社員側双方のメリットについて解説していきます。
企業側に期待できるメリット
人材アセスメントの導入によって、企業側に期待できるメリットは主に以下のようなものが挙げられます。
・ミスマッチな採用を防げる
・適切な人材配置が叶う
・離職率の低下が期待できる
・公正な人事評価の実施
人材アセスメントによって、社員一人一人の適性や資質を把握できるようになるため、自社との相性や向いている仕事内容を理解しやすくなります。このため、ミスマッチな採用を防ぎ、適切な人材配置を行えるようになるのです。自社にマッチした人材を採用できるようになれば、離職率も自然と低くなるはずです。 また、社員の適性や能力を主観ではなく、数値によって評価できるようになる点こそ大きなメリットといえます。見えないところで頑張っている社員の努力が見えやすくなるため「頑張っているのに評価されない」と、くすぶる社員を掬い上げることにもつながるでしょう。
社員側に期待できるメリット
社員側に期待できるメリットとしては、以下のような点が挙げられます。それぞれ見ていきましょう。
・評価内容に納得しやすい
・自身のキャリアビジョン形成に役立てられる
評価を行う過程で自分の考え方を提示したり、人間関係に左右されたりしないため、下された評価を納得しやすい点がメリットといえます。実際問題、上司に嫌われているから評価されないと考えたことがある社員も多いはずです。
このような、ごく個人的な評価を下されない点は、社員にとって大きなメリットとなるでしょう。
また、人材アセスメントにおける評価手法は、アンケートや360度評価、研修などを用いるため、社員自身が自分の強み・弱みを把握できる点も魅力といえます。自身のキャリアビジョンを考える際の指標にもなってくれるでしょう。
人材アセスメント導入のデメリット
人材アセスメントを導入すると、企業・社員共に複数のメリットを享受できるようになります。しかし、何事においてもメリットしかないというものは存在しません。ここでは、事前に知っておくべきデメリットについて見ていきましょう。
企業側に考えられるデメリット
企業側に考えられるデメリットは、以下のようなものが挙げられます。
・コストがかかる
・目的が曖昧なまま導入すると失敗するリスクがある
人材アセスメントでは、上司が評価をするときと比べて、時間・金銭的なコストがかかる点が一番に挙げられるデメリットといえるでしょう。
単純に、外部の専門家に依頼することになるため、依頼料が発生します。また、人材アセスメントを行う目的を定めたり、アンケートや研修などを行うために時間が必要になったりします。
目的を定める、研修をおこなう、どちらも片手間にできるものではないため、メイン業務を圧迫する可能性もあるでしょう。
また、人材アセスメントを行う際には、なぜアセスメントを行うのかという目的を事前に明確にしておく必要があります。これを怠ると、単にアンケートや360度評価を行っただけの結果になり、評価結果を効率的に利用できなくなります。
わざわざ外部の期間に依頼をしたのに、自社でやった場合と効果が変わらないという結果になるのです。
社員側に考えられるデメリット
社員側に考えられるデメリットは、以下の一点といえます。
・時間的なコストがかかる
企業側のデメリットで触れたように、人材アセスメントを行うには、アンケートやテスト、360度評価や面談・研修を行う必要があります。
これらに時間を取られることで、本来の業務に割く時間が減るという点がデメリットとなるのです。面談・研修においては、社員自身の強みや弱みを把握する際にも有用です。
しかし、評価を行われる側の時間も取る必要があるという点は、しっかりと理解しておく必要があるといえるでしょう。
人材アセスメントを実施する際のポイント
では、メリットデメリットを踏まえた上で、人材アセスメントを効率的に実施するには、どのような点を意識しておくべきなのでしょうか。
ここでは、人材アセスメントを実施する際のポイントついて触れていきます。
事前に社員への説明時間を持つ
人材アセスメントをする際には、事前に社員への説明時間を持ちましょう。そもそも人材アセスメントにおける評価とは、社員個人の資質や能力を把握した上で、適切な人材配置や社員の能力を向上させるためのものです。
ここを社員に誤解されると「評価=個人の能力評価」と認識されてしまいます。そのため、アセスメントで行われるアンケートや面談で、素のままの意見を出せなくなる恐れがあるのです。
少しでも自分を良く見せようと、嘘を付いたり対策をされたりすることもあるでしょう。これでは、正しい評価ができなくなります。
このような認識の齟齬を起こさないためにも、事前になぜ人材アセスメントを行うのか、導入の経緯などを説明する必要があるのです。
まとめられた結果を評価に直結させない
人材アセスメントにおける「評価=個人の能力評価」だという誤解は、社員だけではなくアセスメントを行う上司や経営陣が持ちがちな誤解でもあります。
繰り返しますが、人材アセスメントは社員個人の資質・能力そのものを評価するものではなく、適切な人材配置や社員の能力向上を促すために行うものです。
評価だけを目的にしてしまうと、社員のモチベーションが低下したり人材の流出を招いたりするリスクがあります。評価だけにとらわれるのではなく、人材育成を主軸に置いた利用を行うよう意識しましょう。
まとめ
人材アセスメントは、社員一人一人が実力を発揮できる人材配置に有用な方法。従来の画一的な評価と異なり、客観的な評価によって社員自身のキャリアビジョンにも流用できるでしょう。
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