外国人を雇用する経営者が覚えておくべき採用の3つの注意点

国内の売り手市場・少子化を背景に、外国人雇用の需要は増加する傾向にあります。国の調査によれば、10年前と比較して労働者に占める外国人の割合は、0.8%から2.2%に増加しました[1]

外国人雇用では注意すべきポイントが通常の採用とは異なります。在留資格の確認、入社前に準備する書類、入社後の届け出について、経営者や採用担当者が覚えておくべき事柄をご説明します。

[1] 参考:P2 https://www5.cao.go.jp/keizai3/2019/09seisakukadai18-6.pdf

在留資格の条件と募集する職種を確認する

外国人雇用が通常の雇用と大きく異なる点は、「在留資格」です。

在留資格とは、外国人が日本で生活を営むために、国から与えられる滞在許可を差します。ビザと呼ばれる場合もあります。

2020年1月の時点で、法務省が制定する在留資格の分類は29種類。

そのうち、就労が制限付きで許可されるものが19個、身分に基づいて設定され活動に制限がないものが4個、活動の内容によって就労が許可されるものが1個、就労が原則認められないものが5個です。

在留資格ごとに、申請で満たすべき条件が定められています。たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、エンジニア、マーケティング、経理といった専門職が対象です。

加えて、申請には職種と関連する学歴や経歴が求められます。対して、調理師や大工といった手に職系の仕事は「技能」の在留資格で申請を行います。

このように、外国人採用を開始する前に、募集する職種が利用できる在留資格の有無を確認してください。

留学生のアルバイトには、資格外許可の申請

在留資格には、原則として就労が許可されないものもあります。

留学」で滞在する外国人学生や、「家族滞在」の日本人配偶者は、在留資格を有していてもそのまま雇用することはできません。

雇用にあたっては、別途「資格外許可」の申請が必要です。許可されれば、1週間に28時間以内の就労が可能になります

アルバイトやパートタイムで、留学生、家族滞在等の外国人を雇用する際は、忘れずに手続きを進めましょう。

▼参考:資格外許可について

法務省:資格外活動許可申請

出入国在留管理庁:資格外活動の許可(入管法第19条)

外国人雇用にあたっては、在留資格の理解が重要です。職務内容に見合わない仕事に従事させたり、上限時間を超えて働かせたりすることは、不法就労と判断されるケースがあります。

不法就労外国人を雇用した事業主は、入管法73条2項により、3年以下の懲役、又は、300万円以下の罰金に課せられます。

採用から入社まで、必要な書類を準備する

次に、求人の応募開始から入社前の手続きについて、注意するべきポイントをご紹介します。

募集要項に載せてはいけないNG文言

年齢や性別で応募者を差別する記載は、雇用対策法や男女雇用機会均等法によって禁止されています。同様に、人種や身分によって制限する差別的な表現を用いることはできません。

  • NG例:○○国籍の人材のみ応募可、外国人歓迎

→OKにするには:「留学生・就学生歓迎」に変更。人種ではなく、属性を強調することで掲載が可能。

さらに日本語を応募条件に掲げる場合は、職務内容の関連と求める日本語レベルを明確にしましょう。

そのほかにも、出身地や宗教、思想に関することや家族の収入・学歴・職業等に触れる質問は、就職差別につながるおそれがあります。『公正な採用選考の基本』を参考に、平等な対応を行いましょう。

入社前に雇用契約書を取り交わして説明する

採用が決まったら、入社前に雇用契約書を取り交わしましょう。

その際、ただ書類を渡してサインをしてもらうのではなく、内容を相手と確認する機会を設けます。

職務内容や給与、勤務条件など、重要な部分は口頭で説明し意思疎通を図ることで、入社後のトラブル減少につながります。

相手の母国語で雇用契約書を作成する方法も、意思疎通をスムーズに行う方法のひとつです。

また、在留資格を申請する際、雇用契約書は「仕事の証明」「職務内容の証明」という点で、重要となる書類ですので、必ず書面で通知してください。

入社後の社内体制を整える

外国人を雇用したあとにも、忘れてはいけない手続きがあります。外国人雇用状況届出と、社会保険の加入についてご説明します。

外国人労働者の雇用状態の届け出を行う

雇用対策法にもとづき全ての事業者は、特別永住者を除く外国人の雇用の際に、「外国人雇用状況届出」を提出しなければいけません。この届出は、雇用時だけでなく離職時にも行います。

対象となるのは、雇用しているすべての外国人です。留学生のアルバイトや、派遣労働者も届出の対象です。

【外国人雇用状況の届け出】

  • 対象:外国人を雇用するすべての事業者
  • タイミング:雇用する外国人の雇用時と退職時
  • 届出の書類:雇用保険の被保険者と、雇用保険の被保険者でない外国人用にわかれる

▼参考:厚生労働省 外国人雇用状況の届け出

  • 提出先:最寄りのハローワーク

届出が必要な外国人であると知っていながら手続きを怠った事業者には、30万円以下の罰金が課せられる恐れがあります。

外国人労働者を常用雇用する場合は社会保険の加入対象

社会保険の加入は、外国人に対しても日本人従業員と同じルールで適用されます。ここでいう社会保険とは、以下のものを差します。

  • 健康保険
  • 介護保険
  • 厚生年金保険
  • 労災保険
  • 雇用保険

社会保険には国籍条件はありません。企業が通常の加入条件を満たしていれば、常用雇用する外国人労働者は加入する必要があります。

アルバイトやパートの立場の外国人でも、原則として正社員の3/4以上働いているケースでは、加入しなければいけません。

さらに、勤務時間が正社員の3/4以下であっても、以下の5つにすべて当てはまる場合は、加入の対象です。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上あること
  2. 雇用期間が1年以上見込まれること
  3. 賃金の月額が8万円以上であること
  4. 学生でないこと
  5. 常時501人以上の企業(特定適用事業所)に勤めていること


社会保障協定締結国の出身者で、母国で社会保険を収めている外国人は加入の対象外になることも
。どの国が締結国であるか、日本年金機構のウェブサイトから確認できます。

厚生年金は、永住ではない外国人は加入に前向きでないケースがあります。その場合、脱退一時金裁定請求の手続きについて説明しましょう。

日本の公的年金の加入期間10年未満で帰国する外国人は、当該手続きを利用し支払った金額の一部を受け取れます。

▼参考:日本年金機構 短期在留外国人の脱退一時金

まとめ

外国人雇用で大切なのは、まず在留資格の種類を理解することです。そのうえで、必要なスキルを持った人材を探し、相手が求める書類を整えて雇用します。

採用時から雇用後も、仕事内容や労働環境について、語学・文化的な違いを踏まえ丁寧に接することが、入社後の活動をスムーズにするでしょう。

滞在期限のある在留資格を持つ社員については、再申請のタイミングをチェックするなど、不法就労にならないよう企業側も把握することが大切です。

著者:佐伯文弘

ビザや会社設立など外国人への法律サービスを数多く手がける国際行政書士.司法書士。ニーズが増え続ける外国人雇用の分野でのビザ申請、会社設立では登記から経営管理ビザまでワンストップでの処理が可能、その他許認可申請など外国人がからむビジネスでは頼りになる専門家。

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