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製品トレンドの動態分析に活用するポジショニング

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ポジショニング分析は、ある時点での製品やサービスの位置関係を知ることが出来る有効なツールですが、基本的に、時間の変化とともにどう変化したかを見るツールではありません。

しかし、製品のニーズは刻々と変化しています。

ある時点での位置関係や傾向を把握できたとしても、その後どうなっていくのか、つまり「トレンド」も知りたいところです。

今回は、経営データの変化を捉える、動的なポジショニング分析の方法について見ていきましょう。

 

動態型のポジショニング分析とは?

動くポジショニング分析とは、一体どんなものでしょうか?

今回は、中小企業白書(中小企業の経営動向を国がまとめた資料)でよく取り上げられる、「鉱工業指数の在庫循環図」というポジショニングマップをサンプルとして考えていきましょう。

出典:経済産業省経済解析室ひと言解説集

鉱工業指数の在庫循環図は、景気の動向を把握する指標として、とてもメジャーなものです。

メーカーの生産状況と製品在庫の状況から、今景気がどうなっているかを把握できます。

次の、在庫循環図の見方を参考にしながらグラフを見ていくと、その原理がわかります。

【在庫循環図の見方】

1.景気が良くなると、企業は将来の需要を見込んで生産を強化して、在庫を積み増します。(グラフの右上)

2.その後、景気が山を越えて下降気味になると、企業の売上予想よりも実需要が下がり始め、出荷が減り、在庫が溜まり始めます。(グラフの左上)

3.一層景気が悪くなると、企業は在庫を減らすために工場の稼動を減らし、生産量を少なくします。(グラフの左下)

4.景気が回復してくると、企業が予測する需要以上に売れていくため、在庫が減っていく状態になります。(グラフの右下)

実データを見ると、28年の第三期(速報)では、景気が回復局面に向かっていることが予測されます。

このように、鉱工業指数の在庫循環図を分析すると、生産と在庫の状況から、実体経済の動きが把握できます。

今現在の景気の状態だけでなく、どこに向かおうとしているかという、まさに「トレンド」が予測できるグラフですね。

動的なポジショニング分析のわかりやすい例であるといえます。

 

動態型ポジショニング分析の作成ポイント

では、具体的に動態的なポジショニング分析を行う際のポイントについて見ていきましょう。

ポジショニングで使用する軸のデータは変えないこと

時間の変化とともに、どうポジションが変わっていったかを見たいわけですから、軸自体が変わっては意味がありません。

軸のデータを、消費者アンケートを元にしている場合などは、アンケートの質問項目を変えないことが重要になります。

もし、継続的なデータが無い場合は、同一項目で継続的に調査をしている業界団体や国が持っている資料を活用するという手もあります。

ポジションが変わった跡は目印をつける

ポジションが変化している様子をわかりやすくするためには、移動したポジションの間に矢印を記入したり、色の濃度を変えたりすると良いでしょう。

どんな方向に動いているのかを瞬時にイメージで把握できます。

 

動態型ポジショニング分析の活用方法

対象製品のポジショニング変化を見る視点

比較したい製品自体のポジショニングがどう変化しているかを見るパターンです。

この図からは、ABD社は低価格よりに変化しているとともに、C社には変化が無いことがわかります。

また、機能としては、シンプル化を図るA社、多機能化を図るD社、機能にほぼ変化の無いB社等、各社バラバラの対応をしていることがわかります。

他社の製品動向を把握するためには、非常にイメージが湧きやすく、次の戦略が取りやすい資料になっていますね。

対象製品のポジショニングに消費者ニーズの変化を加える視点

対象製品のポジショニングは固定させて、それに消費者ニーズの動きを記録していくパターンです。

例えばビールメーカー各社の製品のポジショニングがあったとして、消費者のニーズの変化を捉えていくと、今はコクがあって酸味があるビールにニーズが高まっているとすると、ニーズに近い味のビールのキャンペーンを行ったり、増産を考えたりすることが出来ますし、ニーズに近い位置に自社製品が無い場合は、新製品開発を急ぐという対策が考えられますね。

つまり、今後の製品戦略だけでなく、生産計画、販売促進戦略のヒントも得ることが出来る資料になっているわけです。

動態型ポジショニング分析のまとめ

ポジショニング分析を動的に行う手法をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか?

従来のポジショニング分析では、「ある時点での分析」は出来ていましたが、動向を掴むという視点までフォローしている書籍等は少なかったと思います。

しかし、ちょっと手を加えるだけで、動きを掴めるのであれば、経営上大きな武器となることでしょう。

是非、皆さんの会社でもトライしてみましょう。いままで気づかなかった、経営上のヒントが得られることでしょう。

著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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