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【障害者雇用実践編】障害者の採用のポイント(第1回/全5回)

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昨今、障害者採用も激化しており、専門能力をお持ちの方を採用するのは難しくなってきています。

障害者雇用において事務職で採用する場合、業務内容は専門的分野での人材採用は難しく、一般事務の補助レベルとしての採用がほぼ現実的となってきています。

今回は費用をかけずに障害者採用を成功させるポイントについてお伝えいたします。

求人票作成のポイント

障害者採用に限らず、人材採用において重要なことは、より多くの応募者を募り、その中から良い人材を採用する可能性を広げることがポイントとなります。

そのためには、求人票の作成において詳細部分にも気を使う必要があります。

もともと健常者の方々と異なり、障害者の中には心理的に消極的な方が実際には多く存在します。

このような方々がより多く応募して頂くように、「応募しやすい」求人票を作成することが重要となります。

応募しやすい文言を丁寧に記載する

一言心理的ハードルを下げる文言を添えることで、応募者からみた求人案件への印象を大きく変えることがあります。

例えばですが、「仕事の内容」の記入欄などに以下の文言を付け加えます。

・未経験可
・丁寧に指導いたしますので、安心してご応募ください
・電話応対が難しい方には配慮いたします

などです。

また、求人票右下部分の「備考」欄などにも上記文言を記載できますし、施設設備状況を記載するのも有効です。

・トイレ:障害者用トイレあります。
・エレベータ:あります。
・筆談環境:あります (スカイプ等)
・出入り口段差:無
・マイカー通勤:可

などです。

取り組みやすい仕事内容のアピールや働きやすい設備面などを少しでも多く伝えることで、大きく応募数が変わってくることがあります。

各種条件はできる限り緩和する

障害者採用が激化している昨今、能力の長けている方の採用は難しくなってきています。

大学卒業者が採用できるとは限りません。

そのため「学歴」「必要な経験」「必要な免許・資格」「年齢」などは「不問」で記載できると応募数増加につながります。

また、労働条件に関してもできる限り緩和できると応募数が変わります。

特に賃金は障害者といえども、障害者法定雇用率の上昇に伴い、大手企業も賃金を上昇させていますので、できる限り考慮することをお勧めいたします。

しかしながら、既存で雇用している一般社員や既存の障害者の方々との比較から鑑みて、実際には大幅アップは難しいと思います。

その際、有効となるのが、就業時間の条件緩和です。

つまり、働き方の多様性、働きやすさをアピールする方法です。

例えばですが、通常8時間勤務が一般的な企業であれば、7時間勤務または6時間勤務で募集します。

 

【就業時間変更例】
・9:00~17:00(8時間勤務) → 10:00~17:00、9:00~16:00(7時間勤務)、または10:00~16:00(6時間勤務)

・10:00~18:00(8時間勤務) → 10:00~17:00、11:00~18:00(7時間勤務)、または10:00~16:00(6時間勤務)

特に朝の通勤ラッシュは身体障害者や精神障害者にとって大きな負担となることがあります。朝の通勤ラッシュに巻き込まれにくい10時出社は障害者にとって通勤しやすく、長期就労のためにも重要な要素の一つとなります。

賃金に関しましては既存社員よりも下回る形となるかもしれませんが、障害者にとって短時間で長期就業したいという方々も多くいらっしゃいます。

仮に自社内での既存社員との比較で賃金を上げることができない場合、このように柔軟な就業条件を活用しながら障害者応募数を増加する方法が有効となります。

母集団形成のポイント

障害者の方々の就職活動の基軸となるのがハローワークを通じての活動です。

そのため、障害者を採用する際、「求人票作成のポイント」を参考に、まずはハローワークで募集開始することが重要となります。

また、自社内でのホームページの採用ページにおいて募集することも施策の一つですが、実際のところ応募者数は少ないのが実情ではないでしょうか。

その他、人材紹介や専門求人サイト等で費用をかける方法もありますが、なかなか経費捻出できる企業も多くはありません。

ただ、費用をかけずに、一定以上の母集団形成を確保し、よりよい人材を採用する方法はあります。

ハローワークを徹底的に活用する

ハローワークで障害者募集を開始すると一定数の応募者がでてきます。

しかし、賃金条件などが他社とあまり変わらない場合、多くは数名程度の応募で止まってしまいます。

そのような場合、まずハローワーク障害者採用担当者と関係性を強くすることをお勧めいたします。

ハローワークの障害者採用担当者は、地域の機関、学校や施設とのつながりを持っており、さらには個別に障害者個人との窓口にもなっています。

 

ハローワーク障害者雇用担当者と相談できる関係性を構築することで、求人内容に沿う方を個別に紹介頂いたり、新しく求職者が出てきた際に、最優先で紹介頂いたりすることがあります。

特に引っ越してきたばかりでの就職希望者の中には非常に人柄の良い、有能な方がいらっしゃるケースがあり、その情報をいち早く入手することができたりします。

また、ハローワーク担当者との関係性を構築する上で、年2回ほど開催されるハローワーク主催の就職面接会を活用するのも一つです。

この就職面接会では、マッチング率は高くはなく、あまり就職に結びつくケースは多くはありませんが、ハローワーク担当者との関係性を維持するうえでは有効な手段となります。

さらにもう一つ、ハローワークによる個別面接会の開催も有効な手段となります。

個別面接会は求人票をハローワークで公開頂いた際、企業別に個別で面接会を開催して頂ける制度です。

自社の求人のみ個別で面接会日時を設定し、数週間に渡って、自社求人内容に合わせて応募者を募って頂けます。多くの場合、複数名が応募して頂けます。

自社求人内容にのみ、応募いただけるので採用角度も高くなります。

職業訓練校、障害者支援学校、障害者支援施設、NPO法人等民間支援会社に問い合わせる

障害者が就職するにあたり、多くの場合、職業訓練校を通じ、一定以上の職業能力を取得したのち、就職するという流れがあります。

この職業訓練校の多くは公立で運営されており、障害者は無料、または少額の負担で職業能力開発でき、地域の障害者の就職窓口として利用されています。

国内最大の職業訓練校は、埼玉県所沢市にある国立職業リハビリテーションセンターです。

 

訓練コースは、OAビジネスコース、オフィスワークコース、Webコース、会計ビジネスコースなどの事務系から、販売・物流ワークコース、ホテル・アメニティワーク 、機械CADコース、CADコース、FAシステムコース、組立・検査・物品管理コース、建築CADコース、ソフトウェア開発コース、視覚障害者情報アクセスコースなどの専門職コースまで様々あります。

西日本では、岡山県にある国立吉備高原職業リハビリテーションセンターが有名です。

その他、都道府県別に全国47か所、地域障害者職業センターがあります。

 

東京都では小平市にある東京障害者職業能力開発校、神奈川県では相模原市にある神奈川障害者職業能力開発校などが有名ですが、全国に公的職業能力開発校があります。

多くの場合、障害者は半年~2年ほどの習得期間を経て、毎年春と秋に訓練終了の時期を迎え、就職していきます。

訓練終了前に就職が決まるケースも多く、訓練期間中でも優秀な生徒は早い段階で就職を決めます。

企業からの問い合わせ受付も随時募集しているケースもあり、このような公的機関と関係性を構築するのも母集団形成に役立ちます。

 

しかし、昨今はNPO法人や民間企業が障害者支援、訓練事業に参入し、以前の公的機関の役割は減少している傾向にはあります。

国立や都道府県の職業訓練校も生徒数は減少傾向にあります。

 

背景にあるのは身体障害者や知的障害者の数が増えていないことが挙げられます。

一方、精神障害者と発達障害者の数は増加の一途をたどっており、公的機関、NPO、民間企業も昨今は精神障害者と発達障害者向けの訓練に力を入れています。

書類選考におけるポイント

障害者を採用する際、母集団形成はそれほど多くは見込めません。

そのため、書類選考は基本的にすべてに目を通し、面接するという考え方が良いと思います。

しかし、実際は書類選考でも書類不備など基準以下となる方もいらっしゃいます。

障害者種別による選考基準にしない

障害者種別によっての選考基準とすることは、法律に抵触する恐れがあります。

精神障害者だからという理由では選考基準とはできません。

定型的、基本通りの書き方の履歴書は、少し疑ってみる

公的機関や学校から応募してくる場合、先生の指導のもと、履歴書の作成が行われています。

定型的、基本通りの内容は、教えられたとおりの内容で応募してきます。

面接や筆記試験では、この内容との整合性を留意することが重要です。

転退職が多い方、応募常連の方をチェックする

障害者採用の場合、転退職の多い方も少なくありません。

あまりにも短い期間で多くの転退職を繰り返している方はやはり要注意です。

また、多くの企業でトラブルを抱え、就職できずに地域の障害者でほぼすべての求人に応募する方もいます。

過去に面接でNGとなった方をリスト化し、同じ方が度重なり応募してくるケースは書類選考で不合格とする考え方もあります。

面接時におけるポイント

障害者採用の面接時において、人柄や性格などは通常の一般採用と多くは変わりません。

自社の理念や風土などとマッチする人材、人柄を重視する方法で問題ありません。

 

ただ、障害者雇用の場合、複数回の面接を設定することをお勧めいたします。

特に精神障害者の場合、大きく印象が変化することもあります。

1度だけの面接で採用を決めてしまうことは、就職後にトラブルの基となりかねません。

障害状況・健康状態の確認(症状、治療・服薬通院の必要性等)

障害者の方々は多くの場合、主治医がおり、通院されています。

障害状況が悪化しているのか、改善しているのか、障害状況を確認することが重要です。

また、通院日は休日だけでカバーできる場合と、平日に休暇を必要とする場合などがあります。

例えば、透析の方の場合、週3回の透析日があり、曜日や時間帯の確認が必須となります。

また、昨今は重複した障害をお持ちの方も多く、1つの障害以外にも重複している障害の有無を確認する必要があります。

(実際は2つの障害を持っているにも関わらず、主となる1つの障害のみを伝える方も多くいます)

さらに、障害以外の持病なども確認することで、就職後の配慮にもつながります。

日常生活のリズムの確認(睡眠リズム等)

特に精神障害者の方の場合、睡眠リズムが不規則な方が多くいらっしゃいます。

睡眠導入剤の有無や朝の寝起きの状況などの確認は重要です。

通勤能力、基礎体力の確認(公共交通機関の単独利用等)

重度の身体障害者の場合、就職したいがために面接日に家族の車で送ってもらったなどの方もいらっしゃいます。

また、精神障害者で認知に障害のある方は、いつも通勤している道順を忘れ、帰れなくなってしまう方もいらっしゃいます。

通勤や就職時間帯でのリスクをヒアリングするする必要があります。

対人態度の確認(助言の受け入れ、質問、感謝等)

一般の健常者の方にも言えることですが、特に発達障害の方は対人態度の状況を確認することが重要となります。

質問の仕方がどのようなものか、感謝の意を伝えられているかなどです。

面接時にしっかりと確認することをお勧めいたします。

支援機関や家族のサポートの確認

支援機関がついている方はサポート体制が整っていることもあり、安心できる材料として考えられます。

面接当日、支援機関も同席するケースがあります。

その際は一緒に同席頂き、支援機関からの客観的意見も確認することも有効です。

また、家族との連携が無い方もいらっしゃいます。

緊急時なども含め、家族の支援の有無も確認事項となります。

就労意欲の確認(働く目的や給料の使い方等)

障害者は健常者と比べ、一般的に短期退職する方が多い傾向があります。

就労意欲の無い方も実際にはいらっしゃいます。

重度身体障害者などは年金だけでも暮らせるケースもあり、就労目的を確認することも重要です。

以上が面接のポイントとなります。

【面接全体の最も重要なポイント】

障害者自身が、自らの言葉で、自身の障害についてはっきりと説明できる方であることです。

その際、必要な配慮が何か、どのような環境であれば長期就労できるのか、自ら必要な配慮部分を説明できる方は、より好ましいと言えます。

障害者の中には就職したいがために、何でもできる、問題ないと一辺倒に返答する方もおり、実際就業したのちトラブルとなる方も少なくありません。

なお、障害者との面接時、整理用に「面接シート」を作成することがあります。

※【添付】面接シート例

適正テスト案(主に一般事務業務)

冒頭にもお伝えしましたが、昨今は障害者採用において、専門的技能を持っている方の採用は難しい状況となってきています。

事務職での採用の場合、一般事務の補助レベルが現実的と言えます。

障害者の採用テストの場合、学力テストや業務能力テストというようなものではなく、適性テストとしてその方をよりよく知るためのテストをお勧めいたします。

以下、主に一般事務業務募集における適正テスト一例です。

【適正テスト例】
・ワード(Word) 問題(タイピング、時間制限あり)
・エクセル(Excel)問題(基本的表計算)
・計算問題
・ビジネスマナー
・作文

など

WordやExcel、計算問題も基本的な内容で構成します。

それぞれの項目ごとに時間設定します。

最後には、人柄を確認するためにビジネスマナーと作文で構成します。

ただし、このテストのポイントはテスト結果ではなく、テスト実施中のプロセスにおいて人柄や能力を知ることができます。

ワードでのタイピングスピード、エクセルでのショートカットの使用の有無などで能力を確認します。

そして作文は手書きにして、漢字の使用頻度などを確認します。

また作文テーマは「働く意味」や「働く上で実現したい夢」など、その人の仕事に関する人生観を見るためのテーマであるとより人物像が明確となります。

このように、落とすためのテストではなく、あくまで基礎能力の確認とその人柄の確認に重点を置きます。

なお、上記テスト内容例は別紙をご確認ください。

※【添付】テスト例

 

次回、【障害者雇用実践編】第2回は「障害者業務切り出しのポイント」についてお伝えいたします。

障害者雇用するにあたって、実施する業務がないという企業様向けの内容です。業務切り出しの考え方からその切り出し方法に至るまでお伝えいたします。

筆者:嵐 正樹
■プロフィール:
障害者雇用サポート支援として、身体・知的・精神障害者全ての雇用サポート実務を経験。
障害者雇用コンサルタントとして、東証一部上場企業を含めた10社以上の障害者雇用体制立ち上げを経験。
業務切り出しから採用、定着までの一貫した雇用サポートに強み。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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