最近、デジタルトランスフォーメーション(DX)というITを活用してビジネスモデルを変革する動きが加速しています。
経済紙にも度々取り上げられるようになりました。DXとは一体何か?
その定義や事例、企業収益や、中堅・中小企業に対するインパクトを考察していきたいと思います。
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは
DXの定義
スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授の説が定説と考えられています。同教授が2004年に唱えたDXの考え方は、「デジタル技術によって人々の生活に変革を起こす」というものでした。
従来のコンピュータの技術と言えば、人間の手作業を簡素化する、大量のデータを短時間にするなど、「効率化」の手段として発達しました。
さらに、デジタル技術も、レコードがテープになり、CDになるといった、やはり「効率化」を目指すものでした。
DXの本質
しかし、DXの本質はコンピュータ化やデジタル化とは、明らかに違う技術です。
何かのビジネスモデルや仕事を効率化するというより、「ビジネスモデルそのものを生み出したり、変革したりする技術」と言ってよいでしょう。
つまり、これまでのでコンピュータは「効率化するための手段」であったものが、「効果を生み出す目的」に変化しているのです。
この技術が今、あらゆる業界や企業に地殻変動を起こしています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の事例
Uber(ウーバーテクノロジーズ)
一般の人が自分の車を使って、空き時間に他人を運ぶシステムや、スマートフォンを使って近くにいるタクシーを呼ぶことが出来る配車アプリなどを提供しています。
コロナウイルス禍の最中には、個人が自分の空き時間に、バイクや自転車を使って飲食店の配達サービスを代行する「ウーバーイーツ」も注目されています。
世界では、タクシーを利用した際に、不当な運賃を要求されたり、領収証が発行されなかったりなどの劣悪なサービスレベルの国や地域がありますが、同社のシステムでは、運転手と利用者が互いを評価する仕組みを取り入れるなど、従来のタクシーの問題点を画期的に解決する仕組みを提供しています。
日本では一般人が車で他人を運ぶことは「白タク」行為であり違法ですが、同社のサービスを活用した過疎地の活性化など、別の意味でもメリットが注目され、各地で規制緩和を予測して実験を始めています。
いずれ、行政の規制緩和による普及も予測されています。
Airbnb(エアービーアンドビー)の事例
自宅の空室を利用して旅行者に「民泊」を提供する際の、利用者と施設提供者を仲介するシステムを提供しています。
同社のサービスにより、旅行者は安い室料で宿泊が出来、施設提供者は収入が得られるという、Win-Winな関係になるため、民泊は急速に普及していきました。
日本では、宿泊ビジネスはそもそも、旅館業法の規制により、都道府県知事の認可が必要でした。
従来、Airbnbも施設提供者も、旅館業法に違反していると考えられてきました。
しかし、東京オリンピック開催や外国人観光客の急増に伴い、宿泊需要がひっ迫する中、ホテル・旅館業界から大反対があるにも関わらず、ついに国は規制緩和をすすめ、個人も民泊ビジネスに参入できるようになりました。
新たなビジネスが、行政の規制緩和を生んだ好例であると言えるでしょう。
デジタルトランスフォーメーション(DX)発生の背景
では、なぜDXの考え方や技術が加速度的に浸透しつつあるのでしょうか?
その背景について探ります。
大企業や業界の成熟化
ひとつには、伝統的な業界や大企業のビジネスモデルが硬直化していることが挙げられます。長年同じビジネスモデルで安定した収益が挙げられると、そのビジネスモデルは伝統となり、王道となっていきます。
さらに、硬直化したビジネスモデルを行政の規制が守る構図になると、誰もが既存のビジネスモデルが「正しいビジネス」という認識に統一されるため、消費者ニーズが反映されにくくなります。
この状態が、DXによるビジネス革命を生む下地になります。
コトに着目するスタートアップの存在
DXを主に実行するスタートアップやベンチャー企業は、従来の伝統的なビジネスモデルや商習慣には、目もくれません。
消費者が求めている「コト」に着目しています。
タクシー業界は、過当競争から車両規制が加わり、稼働率が少ないため収入が減り、ドライバーの高齢化が進んでいます。
業界では合併を繰り返して生き残りをかけているさなか、消費者が手軽に低価格で移動する「コト」に着目したウーバーは、世界中で一般人による他人を運ぶビジネスモデルやタクシーを呼ぶアプリを普及させています。
ITの高度化とデジタルネイティブ世代の増加
さらにDXが加速しやすい背景として、IoTやARやVRなどのIT技術の高度化、通信の高速化が挙げられます。
さらに、それらの製品やサービスを利用するユーザーも急増しています。
特に、デジタルネイティブといわれる、生まれた時からインターネットやスマートフォンに慣れ親しんだ世代は、デジタルデータを活用することに違和感がなく、今後さらにサービスを普及させる土壌が出来ているといわれています。
まとめ
DXの意味、そして燎原の火のごとく普及している状況について、ご説明してきましたが、いかがだったでしょうか?
DXは、全ての業界や産業に変革を迫るものとも言えます。中堅中小企業においてもDXの考え方を経営上活用すべき時期に来ているのではないでしょうか?
「業界の常識や慣習を疑うこと」には、実は大きなビジネスチャンスが潜んでいます。
そのチャンスに果敢に挑むスタートアップの姿勢にも、学ぶものが多いでしょう。
さて、このような状況の中、中堅中小企業はどう対応すべきか。
次回では、具体的に中堅中小企業がDXに取り組む際の方向性やコツをご紹介していきたいと思います
著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。