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中堅中小企業における人事管理DX導入ノウハウ

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中堅中小企業における人事管理DX全体像

人事管理DXの目標は幸福感をもって仕事ができる環境を整えることにあると考えます。

こうした環境では、生産性や売上、創造性、継続就業意向が向上し、人材喪失を回避できるのです(参考:「イノベーティブ人材獲得の要となるウェルビーイングの視点」PWC2021/06/24)。

従業員に幸福感を持ってもらうためには、仕事を通じて成長でき、成長した価値が適正に評価され、その価値を活かせる職場に配属されることが必要です。

特に人材確保が難しい中堅中小企業は、既存の人的資源の価値最大化が大企業以上に重要です。

もっとも、経済産業省「DXレポート2」が指摘する通り、手続効率化もDXの認知・理解をもって導入しなければ、単なる既存のビジネスモデルを前提とした特定業務改善に終わってしまいます。

「常に変化する顧客・社会の課題を捉え『素早く』変革『し続ける』能力を身に付ける」ことができません。

価値最大化のための施策もこうした方向に向けて展開されることが必要なのです。

また、人材確保の難しい中堅中小企業にとって、ダイバーシティ(多様性)や動的人材ポートフォリオは現実的な選択肢ではなく、人材を定着させることが優先されます。

中堅中小企業における人事管理DX導入ノウハウ

直ちに取り組むべきアクション

大企業以上に人的価値最大化が重要な中堅中小企業は、人事手続効率化に直ちに取り組み、人的価値最大化のための施策を展開できる余裕を作る必要があります。

新たな人材確保が難しい中堅中小企業の手続効率化の中心は労務管理です。

そして、この段階からDXの目的たる組織自体が変革し続ける能力を身に付けるため、従業員が主体性をもって活用できるデジタル化が必要です。

現代経営学の父ピーター・ドラッカーは、自律的動機と生産性向上には相関関係があると述べています。

短期的対応

短期的対応としてDX推進体制の整備が必要です。
人事管理のDX化も従来のような人事部門専業の問題ではありません。

経営陣が権限と責任を明確にして戦略的に取り組まなければならない課題なのです。

まさに経済産業省が推奨する「人的資本経営」の実践の中心が人事管理のDXといえます。

人的資本経営とは、人材価値最大化のため経営陣が戦略的に人的ポートフォリオや従業員のリスキル、エンゲージメントなどに取り組む経営手法です。

DXへの組織全体の共通理解を得るため、経営陣は率先して動かなければなりません。

中長期的対応

中長期対応として求められていることは、経営資源の選択と集中です。

労務管理の手続効率化で生まれた余力を、人材育成やエンゲージメント向上のための施策に注力することが必要なのです。

従来、こうした評価的側面の強い人事管理について、主観的評価が問題とされてきました。

評価基準が曖昧で、適切な人材配置がされてきたか疑問をもたれていたのです。

こうした課題を解決するため評価系の人事管理プラットフォームが多くリリースされています。

例えば、第三章第3節で紹介する、未来予測型ピープルアナリティクスサービス「アッテル」などは、AIを使って人的価値を客観的かつ効果的に評価し、適切な育成と配置を助力してくれます。

中堅中小企業に最適な人事管理プラットフォーム解説

人事管理プラットフォームのポジショニングマップ

様々な業務改善プラットフォームがリリースされていますが、業務全般と人事特化、手続効率化と価値最大化を対比軸としてポジショニングすると上記のようになります。

総合的業務改善機能を有するERPが人事に特化したプラットフォームと対比され、人事に特化したプラットフォームも手続効率化に特化したものと評価系に特化したもの、どちらの役割も果たす中間的位置づけのプラットフォームに分かれます。

ポジショニングマップの各領域で人気のあるプラットフォームを配置したのが上記の図です。

例えば、ERPで人気の「SmileWorks」は会計・販売・給与の3つの機能が一体化したもので、必要な機能を必要な時に加えられ、月1万円から利用できます。

ERPのメリットは初めから組織全体の機能を効率化するために設計されているので、デジタライゼーションにとどまらないデジタル化を実現できる点です。

kintone」と「アッテル」は中堅中小企業が導入するのに最適なプラットフォームと考えるのでマップに載せています。

「kintone」は社内業務全般の課題に柔軟に対応できるプラットフォームで、どの現場からでも導入できる利便性の高いものです。

「アッテル」は人事に特化した評価系プラットフォームで、最新AIに基づいて人材のパフォーマンスを評価し、最適な職場環境づくりに貢献します。

業務改善プラットフォーム「kintone」

kintoneは、分類的にはERPに属しますが、一般的なERPと異なり、会計機能や給与機能のような専門的計算機能は有しません。

100種類以上ある無料テンプレートからドラッグ&ドロップしたり、Excelを読み込んだりするだけで、現場で必要な機能だけを備えたアプリを作成できるプラットフォームです。

作成されたアプリで収集した情報は会社全体で一元化でき、自動更新も行われ、「コメント欄」に入力するだけで、メールや電話を代用します。

つまり、ノンプログラミングで作成されたアプリをキッカケに「経営の見える化」と部門を超えたコミュニケーションを可能にする環境が整備されるのです。

一般従業員でも業務改善アプリを簡単に作成できることから、自然発生的に現場からデジタル化が進行します。

同時に従業員の意識改革が醸成され、情報一元化とコミュニケーション機能で、意識変革が組織全体に拡がっていくメリットがあります。

実際、第3回記事で紹介する2つの事例はkintoneで作成された人事管理アプリをキッカケに組織全体が変わり始めました。

専門的機能が高度になるほど一部の従業員だけしか扱えず組織変革が進行しなかった従来の業務改善プラットフォームとは根本的に異なる役割を果たします。

未来予測型ピープルアナリティクスサービス「アッテル」

ピープルアナリティクスサービス「アッテル」は、人事管理の近時の中心課題「人的価値最大化」に寄与するプラットフォームです。

HRアワードやHR tech GPなど、人事関連の各種受賞歴を有するAIで、各企業のハイパフォーマーとローパフォーマーの傾向を割り出し、採用や評価、育成、配置など労務管理以外の人事管理分野に活かすサービスです。

ハイパフォーマーと同じ傾向を有する人物を採用し、ローパフォーマーは再育成をしっます。

将来の活躍期待度により人材配置ができ、上司との相性を加味した最適なパフォーマンスを発揮するチーム作りにも役立ちます。

一般的傾向ではなく、その企業のパフォーマンスの傾向を割り出せるので、実践的・長期的に活用できます。

こうした客観的基準で人事が行われるので、従業員のモチベーション低下も回避できます。

しかも、利用料金は従業員数に基づく定額制なので、採用予定者の適性検査自体は無制限に行えるメリットもあります。

おわりに

今回紹介したプラットフォームのうち、kintoneは現場からデジタル化を進めるもので、アッテルは管理者側からデジタル化を進めるものと分けられます。

近時の人事管理の課題である人的価値最大化に直結するプラットフォームはアッテルです。しかし、組織の意識変革を醸成するのはkintoneではないでしょうか。

情報の一元化とコミュニケーション環境を向上させることで組織の風通しを良くし、OneTeam組織文化を育て、一般従業員でも業務改善アプリを開発できることで、現場からデジタル化が進行します。

第3回記事ではkintoneを導入して従業員の意識変革をもたらした事例を紹介します。

著者:maru
2011年から中小企業診断士として経営コンサルタントをはじめる。
通常の企業経営コンサルから、無農薬農業経営、介護施設運営等の幅広い業種に関わり、
エンターテインメント施設の開業のための市場調査から、債務超過企業の事業デューデリジェンスまで、企業成長段階に応じたコンサルタントを行っています。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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