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DXに取り組む中堅・中小企業の事例「建設業」

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前回まで、デジタルトランスフォーメーション(DX)とは何か?DXに対して、中堅中小企業はどう取り組むべきかについて述べてきましたが。

今回は、あるソリューション企業が建設業に向けて提供したDX事例をもとに、中堅中小企業の取り組みから得られる知見を紹介していきます。

DXに取り組むソリーション企業「株式会社オプティム」の紹介

オプティム社は、「ネットを空気に変える」をスローガンに、スマホ・タブレットのクラウドデバイスマネジメントサービス、リモートマネジメントサービスを中心としたソリューションビジネスをグローバルに展開している、売上高100億円以下の中堅上場企業「NEXT1000」の中の1社です。

今や生活インフラとなったインターネットですが、同社では、それが未だに高度なIT技術を必要とする現状を変え、インターネットそのものを空気のように、全く意識することなく使いこなせる存在に変えていくことをミッションとしています。

DXに取り組んだ背景

建設業の需要は、1990年代以降減少を続けており、2010年頃には、最も建設投資が少なく、不況の時代でしたが、東北震災の復興需要や、東京オリンピックの建設ラッシュに伴い、建設需要は、一転、急上昇の傾向にあります。

しかし、日本の建設業では、長年労働者不足に陥っています。
特に中小企業においては、若い建設作業員の確保が困難です。

そして若い作業員確保できたとしても、経験が必要なため、なかなか第一線の現場に出せない現状がありました。

また反面、作業員の高齢化が進み、熟練した作業員の確保も困難になっていました。
つまり、建設業界とは、最も人手不足の影響を受けている業界のひとつといえるでしょう。

そんな建設業界の構造的な問題を解決すべく、オプティム社の取り組みが始まりました。

DXの概要

これらの状況を解決すべく、同社は、株式会社小松製作所(以下 コマツ)と、リモートテクノロジーの分野で提携を行いました。

まず、コマツが現場全体をICT化により作業を効率化し、作業員の生産性を向上する「スマートコンストラクション」という仕組みを開始しました。

そのコマツの「スマートコンストラクション」に向けて、オプティムは、「あらゆる人にそのとき必要な体験“知識、ノウハウ、情報”を遠隔から共有する」ソリューションサービスである「Optimal Second Sight」を提供しました。

この「Optimal Second Sight」は、建設現場にいる作業員に対して、熟練した作業員が、遠隔からオンラインリアルタイムでサポートすることで、熟練作業員の体験を若手作業員へ共有できます。

また、熟練作業員は、遠隔地にいる複数の現場作業員をサポートすることで、熟練作業員不足を補うことが可能となります。

具体的には、建設機械の操作に不慣れな作業員に対して、スマートフォンを通じて、遠隔から熟練した作業員がサポートすることで、円滑に現場作業を進めることを支援します。

また、建設機械の故障時など、メンテナンス作業員が現場に向かう前に、ライブ映像を通じて建設機械の故障情報を入手することで、必要な部品を前もって準備することができます。

建設現場間を往復する必要がないため、修理にかかる時間の大幅な短縮を行うこともできます。

さらに、スマートフォンやウェアラブル端末(眼鏡型端末など)などのモバイル端末からのカメラ映像が共有できるため、作業員の目の前の環境を、まるでオペレーター自身が見ているかのようにサポートできます。

また、熟練オペレーターから資料などのファイルやURLを送信することで、説明に必要な資料を共有しながらのサポートが行え、より円滑なサポートが行えます。

同社のシステムでは、現在AI(人工知能)を搭載したカメラや、ドローンで撮影した画像を見ながら現場の責任者がブルドーザーダンプカーの作業員に対して無線でリアルタイムに指示を出すソリューションも提供しています。

個々の作業効率を上げるとともに、工事全体の最適化も図りながら、建設業界で重要な工期の短縮化にも貢献しています。

【参考】コマツとリモートテクノロジー分野で業務提携 株式会社オプティム

https://www.optim.co.jp/news-detail/15985

まとめ(本事例から学べること)

今回の事例で学べる点は、建設現場という「経験」がモノを言う現場でDXを活用した点です。

「現場に熟練した技術者は欠かせない」という考え方は長く建設業界にはありました。
そのため、人手を確保することが最重要施策であると多くの建設会社が考えていました。

しかし、今回ご紹介したソリューションは、その常識を見事に打ち破ったシステムであると言えます。

さらに、建設業者自身が行うICTでは、一定の生産性向上は望めますが、それは、現状のビジネスモデルの延長線に過ぎません。

同社が、熟練した技術を共有し、併せて若手社員を育成する「コト」に着目した、典型的なDXの事例でした。

同社は、今回ご紹介したシステムを元に、農業分野や医療分野にも応用しています。

このことは、同社がまさにビジネス上困っている「コト」に着目している好例といえます。

基幹システムを業種ごとにカスタマイズすることで、次々に多くの業種に横展開し、最低限の開発コストで収益性を高めています。

著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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