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非連続の中の連続

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こんにちは!栗原誠一郎です。

ZOZO、ジャストサイズの洋服を提供

衣料品通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイが、「ZOZO」というプライベートブランドを立ち上げ、ジャストサイズの洋服を提供し始めました。

体形をトレースする採寸服「ZOZOSUIT」を消費者に提供し、スマホで撮影してもらうことにより簡単に体形の詳細データを把握、その消費者にピッタリの洋服を作って届けるというものです。

このビジネスモデルとしてのメリットは、製品在庫が発生しないことです。

アパレル業界はシーズンの終わりに売れ残った製品在庫をセールで売るため、その分を含めて当所の小売価格を設定せざるを得ません。

POSデータ(お店のレジで商品が販売されたときに記録されるデータ)による売れ筋の把握と生産調整により昔に比べれば無駄な製品在庫は減ってきたものの、ゼロにはなりません。

しかし、「ZOZO」は受注生産ですから製品在庫が全く発生しないのです。

「現状」のネックは製造

実際に「ZOZO」の洋服を着た消費者はそのジャストサイズ感に驚嘆しているとのことですが、「現状」では注文して実際に洋服が届くのに時間がかかるのがネックになっています。洋服の製造を受託工場の生産が追い付かない様子。

考えれば当たり前ですが、既存の縫製工場は一品生産を前提にしてつくられていません。したがって「ZOZO」の注文に応じようとすれば生産性が低下せざるをえません。

そもそも、スタートトゥデイは流通からスタートして急速に成長しましたが、製造の経験はありません。

そこで、取引のある衣料品メーカーに東南アジアの工場見学を依頼して製造の知見を積もうとしているとの話もありますが、上述したように、一品生産を前提にしていない工場をいくら見学しても得られる知見は少ないのではないでしょうか。

「ZOZO」が実現しようとしているイノベーション

このような製造面での弱みを見て、「ZOZO」の取組を批判的に見る向きもあるようですが、私は、全くそうは思いません。

戦略本として近年稀にみる大ベストセラーとなった「ストーリーとしての競争戦略」の著者である楠木健氏がその次に出した「経営センスの論理」という本。

この本、読者の賛否が非常に分かれている本なのですが、非常に多くの示唆を得ることができます。

その本の中で彼はイノベーションについて、このように語っています。

第1に、イノベーションは技術進歩とは異なる。既存の価値を連続的に増大させるだけでは、技術進歩であってもイノベーションとは言えない。・・・・・

第2に、イノベーションは供給より需要に関わる現象だということ。供給の目でどんなに「スゴイ」ものであっても、顧客の心と体が動かなければ、イノベーションではない。単なる自己満足に終わってしまう。・・・・・

イノベーションの2つ目の本質、「顧客が受け入れてこそのイノベーション」ということをよくよく考えると、「非連続の中の連続」―非連続性の中に一定の連続性が確保してあるということ―ここにイノベーションの妙味というか面白いところがある。

 

ここでいう連続性とはすなわち顧客の本質的なニーズです。技術は一夜にして進歩・変化することはありますが、人間や社会の本質的ニーズというものはそんなに変化しない。連続しているのですね。

つまり、イノベーションは、今まで誰も実現できるとは思っていなかった、この本質的なニーズに応えるということなんです。

こう考えれば、「ZOZOSUIT」は技術的にはすごいが、それだけでイノベーションにはならないでしょう。

「ZOZO」が実現しようとしているイノベーションは、「自分にピッタリの服を気軽に手に入れる」ということだと思います。

いままではテイラーでしか自分にピッタリの服は作れず、とても気軽に手に入れることはできませんでした。

でも、もしそれが可能になるなら多くの消費者が手に入れたくなるでしょう。

勿論、それを実現することは簡単ではありません。でも、だからこそイノベーティブなのですから、「ZOZO」が製造面の課題をどう解決するか、今後が楽しみですね。

 

さて、では皆さんの会社が実現しようとしている顧客の本質的ニーズはなんでしょうか?

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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