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障害者の採用〜その2〜

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さて今回は前回に引き続き、「障害者雇用の採用」の第2弾を解説します。

「障害者雇用の進め方=①企画×②採用×③定着サポート」

企業から頂く声として、選考プロセスをどのように進めていくと良いのか、といったご相談を頂くことがあります。

一般の雇用の場合、面接を中心とした採用プロセスを取ることが多いと思いますが、障害者雇用の場合、面接に加えて実習や見学などを挟むことも多いです。

ここでは、実習や見学を挟む場合の選考プロセスについて説明します。

選考プロセス(例)

①面談・見学 ・採用時に想定している業務内容を元に、面談、見学などの募集をかけます。

・その後、応募があった障害者に対して面談を行います。面接になると堅苦しくなるので、見学会や座談会といった形で、気軽に話しやすい場を設定することもあります。

②体験型職場実習

(数日程度)

・企業側、障害者側双方が合意をすれば、職務を体験する職場実習を実施します。

・この中で、障害者本人の強みや配慮事項、業務適性の把握を行います。

・受入想定部署で行うこともあれば、まずは人事部などで受け入れてみて、適性を把握する場合もあります。

③雇用前職場実習
(数日~1ヶ月程度)
・体験型職場実習で、採用を前向きに考えられるのであれば、受入想定部署でさらに雇用前の見極めを実施します。

・ここでは、主に、職場との相性、現場管理方法の確認などを行います。

④採用 ・面接を行い、雇用条件の提示や障害者本人の意思確認などを行います。その結果が、お互いの意思がマッチすれば採用に至ります。

※採用の際、障害者トライアル雇用助成金など、活用できるハローワークの制度が数多くあります。ハローワークの制度を活用する場合、企業として満たすべき要件や、指定された手続きに則って進める必要がありますので、選考プロセスの案が出来た段階で、ハローワークに相談にいく方が良いでしょう。

(参考)トライアル雇用助成金:トライアル雇用とは、求職者を短期間の試用期間を設けて雇用し、企業側と求職者側が相互に適性を判断した後、両者が合意すれば本採用が決まる制度です。

障害者の面接のポイント

選考プロセスの中で、要所で、面接を行うこともあるでしょう。ここでは面接のポイントについて説明します。

面接前の準備(面接日の調整を行う段階から検討しておくべき事)

<準備(例)>

・視覚障害
-試験場所まで公共交通機関を利用する場合は、経路やバリアフリーの状況を確認
-読み取りに時間を要するので試験時間を一般の社員より長く設定

・聴覚障害者
-面接では口話、手話、筆談のどの方法で面接するかあらかじめ確認
-説明が聞き取りやすい場所に席を設けたり、説明事項を板書

・肢体不自由者
-試験場所まで公共交通機関を利用する場合は、経路やバリアフリーの状況を確認
-駐車スペースの確保や試験場所のバリアフリーの状況を確認

・知的障害者
-必要に応じて、保護者、支援機関等の担当者、学校の担任教諭などの同席を依頼
(障害者本人との短い面接だけでは職務遂行能力、就職に対する態度や考え、人柄などが把握しにくい面もあるため)

・精神障害者
-障害者本人への面接に加えて支援機関等の担当者に同席を依頼し、訓練の取り組み状況や病状などを把握
-緊張しやすいので緊張を解きほぐすような雰囲気を作る

面接の際の留意点(適切な採用、雇用管理を行うために)

面接を開始する際は、以下のようなことをお伝えすると良いでしょう。

1.障がい状況などを確認する理由を伝える
→配属先や担当業務を決めるため、働きやすいよう職場環境を整えるため、職場でのサポート体制を整えるため、など。

2.言いたくないことは言わなくても構わないことを伝え、障害者本人の了解を取る。

3.確認すべき視点。

職務遂行や職場生活において「できること」「制限があること」「サポートが必要なこと」の視点で確認していきましょう。確認すべき点は障害の種別によっても異なりますが、

-職務遂行力(業務スキルの習得状況、強みや得意なこと、コミュニケーション方法)

-障害関係(内容、治療の必要性や内容、通院・服薬の状況、必要な支援内容)、

-職場生活(通勤の方法(自家用車・自転車・公共交通機関の利用)や経路・時間)

などについて聞いておくとよいでしょう。

障害者の職場実習の進め方

職場実習では、面談などで聞いた職務遂行力や障害関係について、実際に職場で業務に取り組む中で、企業、障害者共に理解を深めていきます。

面接で聞いた内容と実際にできることが違うこともありますので、個別に検証項目を持ちながら確認していくと良いでしょう。

確認項目として、以下のようなものが挙げられます。

・強みや得意なことに対して業務内容がマッチしているか?

・作業速度や時間、正確性、コミュニケーションは会社の要求基準をクリアできそうか?

・適切な業務指示が可能か?

・障害特性上、難しい事や苦手なことに対して、適切な配慮や環境調整ができるか?

・職場環境(気温、音、匂い、人の密集度合いなど)が問題ないか?

などを確認していきましょう。

配慮の視点

障害者への配慮や環境調整の視点として、主な視点を整理しておきます。

具体的には障害の種別や個人ごとによっても異なりますが、必要な視点を知っておくことで、現場で配慮や環境調整が出来るようになります。

障害特性や配慮の視点などを、社内受入研修を通して周囲にも伝えておくとよいのではないかと思われます。

配慮・環境調整の視点 具体例
①ハード面の配慮 バリアフリー 等
②就業時間、休憩時間などの配慮 時短勤務、休憩時間の取り方 等
③コミュニケーションの工夫 筆談/メール、声の掛け方、定期的な面談 等
④業務の工夫 業務範囲の限定、業務の仕組み化等
⑤指示・指導の工夫 指示の方法、納期設定  等

 

これらの配慮・工夫の視点は、具体的な内容は違えど、新入社員や育児・介護中の社員、外国人の社員などとも共通するところもあります。

障害者だけの配慮・工夫としてとらえるのではなく、全ての社員が働きやすい職場環境を作るような意識で取り組んで頂くとより職場に馴染んでいくのではないかと思います。

著者:窪 貴志
2010年以降、中小企業から大手上場企業まで、企業への障害者雇用コンサルティングを行っている。特例子会社の立ち上げも含め、障害者の採用支援や職場環境構築に積極的に取り組む。 民間企業、地方公共団体等において、障害者雇用促進のための研修やセミナー実績多数。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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