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障害者雇用のススメ方

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今回、企業における障害者雇用の進め方についてシリーズで取り上げていきます。

第1回目は、「障害者雇用のススメ方」です。そもそもではあるのですが、企業はなぜ障害者雇用に取り組むのでしょうか?3つの視点から考えてみたいと思います。

企業が障害者雇用に取り組む3つの視点

「障害者雇用促進法」の存在

この法律の中で、企業に対して、「雇用義務制度」と「納付金制度」が規定されており、企業の障害者雇用に大きな影響を与えています。

「雇用義務制度」では、事業主の従業員規模に応じて、法定雇用率(障害者雇用率)を満たす障害者の人数を雇用することを義務付けています。

次に、「納付金制度」では、法定雇用率を満たしていない企業から納付金を徴収し、障害者を多く雇用している企業に対して調整金や助成金を支給します。

※法定雇用率:2018年4月現在、民間企業(従業員45.5人以上)の障害者雇用率は2.2%(今後、2021年4月までに2.3%まで引き上げられる計画)。

※企業の納付金:法定雇用率に満たない障害者の人数×50,000円/月

(労働者数が101人~200人以下の企業は1人当たり40,000円/月の納付金)。

人材の有効活用

2019年現在、有効求人倍率は高止まりしており、多くの企業で人材不足が続いています。

一方で、日本の人口は今後も減少すると予測されており、継続して人材確保が課題になると思われます。

解決策として、女性や高齢者、外国人など多様な人材の活用がテーマになっていますが、多様な人材の1カテゴリとして障害者も候補に挙がっています。

平成30年の障害者白書によると、障害者の人口は936万人(身体436万人、知的108万人、精神392万人)です。

働く世代(18~65歳)に絞っても、352万人(身体101万人、知的58万人、精神193万人 ※精神は25歳以上)となっています。

一方で、企業で働く障害者は約50万人と、まだ少数にとどまっており、今後、障害者の戦力化が期待されています。

CSRや顧客の視点

障害者雇用率が法定雇用率より著しく低い企業は行政から指導が入り、雇用率達成に向けた計画を立案することになります。

計画通りにいかない場合や指導に従わなかった場合には、社名が公表される可能性があります。

昨今の省庁の雇用率水増し問題にも代表されるように、雇用率を満たさないと、社会からみた場合マイナスイメージへつながっていきます。

また、2つ目で述べたように、障害者の人口は936万人であり、家族も含めるとその数倍になると思われますが、直接の顧客候補として、彼らへのイメージが回りまわって会社の業績にも大きな影響を与える可能性があります。

以上3つの視点から企業の障害者雇用について整理してみました。

昨今の社会情勢を踏まえると、義務としての障害者雇用から、人材の有効活用や自社の業績といった、自社の事業に直結した障害者雇用へと変化しつつあると言えます。

雇用事例から考える、障害者の戦力化

上記で述べたように、あるべき論としては企業が障害者雇用に取り組む理由はあるのですが、具体的に企業がどのような狙いを持って障害者雇用に取り組んでいくのか、事例を通して考えてみたいと思います。

事例1:業務の再構築

消耗品を取り扱う全国チェーン店Aでは、各店舗の店長が、朝から晩まで気が休まる暇もなく様々な業務に取り組んでいましたが、時間外労働も多く、店長に依存した店舗運営がなされていました。

この店長の業務のうち、パソコンを活用した入力業務を、パソコンが得意な障害者が担うことで、店長の負荷が軽減されるとともに、責任範囲と役割分担が明確になり、よりシステム化された店舗運営ができるようになりました。

事例2:人材採用・育成の在りかたの見直し

洋菓子店Bでは、人材育成に頭を悩ませていました。

製造現場や店舗は数人の正社員と多数のパート社員を中心に運営されていましたが、職人気質の職場で、「先輩の後ろ姿をみて覚える」という考え方の元、社員が育成されており、パート社員がなかなか育っていかない、という課題がありました。

また、そもそもパート社員も採用しにくく、このままでは必要な人材を確保し続けられるのか不安もあったようです。

この状況に対して、まず必要なスタッフの採用面で障害者雇用に目を付けました。

食材の仕込みや後片付けと言ったところでコツコツと取り組むのが得意な障害者を採用し、そして障害者スタッフへの育成を標準化しました。

そして、パート社員の育成にも活用できる仕組みとして社内に展開することで、パート社員育成の下地を作っていくことになりました。

以上の事例を通して分かることは、障害者雇用が、お題目ではなく、業務の再構築や人材の採用・育成といった会社としての重要課題と紐づく形で取り組まれていることです。

そうなると、会社としては本気で取り組むことになりますし、障害者を大事な戦力として考えていくことにつながります。

そして、それが、障害者にとってもモチベーションやスキル向上にもつながり、会社全体として正のサイクルが回りだします。

障害者雇用というと、障害者を中心に考えることが大切だと認識されやすいですし、それも大切な視点ではあります。

しかし、企業側の視点でみると、会社としての位置づけを明確にしないと、上手く機能しません。会社の経営課題と紐づく形で障害者を採用し、大事な戦力として育成していく事が大切ですし、この取り組みの延長として、全ての社員を戦力化する経営につながってくるのではないかと思います。

障害者雇用のススメ方

ここでは、具体的に障害者雇用の進め方について整理します。

障害者雇用をどのようなプロセスで進めていけば良いのか、といった相談をよく頂くのですが、ここでは障害者雇用の進め方を次の3つのステップに分けて考えてみます。

障害者雇用の進め方=①企画×②採用×③定着サポート

①企画:雇用の狙いの明確化、社内啓発、職域開拓、推進体制など

②採用:求人票作成、業務オペレーション、受入部署の理解・職場環境作り、採用方法など

③定着サポート:業務内容や職場環境の調整、定着面談、キャリアステップ

 

「①企画」というのは、障害者採用に至るまでの準備プロセスのことであり、ここがうまくいくと、後のステップがスムーズに進みます。

「②採用」は具体的な採用プロセスのことです。単に求人票作成や採用方法だけではなく、受入部署との調整もこのステップに含みます。

「③定着サポート」ですが、この部分は障害者雇用の分野で特に大切にされます。

障害者雇用に限りませんが、採用後に様々な問題が発生することもあり、その場合に誰がどんな対応をするのかを決めておくことが、企業と障害者が長く関係を続けていくには大切なことになります。

これらの取り組みを進めていくことで、障害者雇用がうまくいきやすくなります。次回以降、順を追って説明していきたいと思います。

 

著者:窪 貴志

2010年以降、中小企業から大手上場企業まで、企業への障害者雇用コンサルティングを行っている。特例子会社の立ち上げも含め、障害者の採用支援や職場環境構築に積極的に取り組む。 民間企業、地方公共団体等において、障害者雇用促進のための研修やセミナー実績多数。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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