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障害者雇用の取り組み方(第5回/全5回)

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第5回:精神障害者とは?

精神障害者とは?

精神障害は、脳および心の機能や器質の障害によって起きる精神疾患によって、日常生活に制約がある障害を指します。主に統合失調症や躁うつ病、うつ病などの気分障害、神経症、パニック障害、適応障害など、様々な疾患が該当します。

精神障害の主な種別

①うつ病(躁うつ病):気分・感情面での症状が周期的にあらわれる疾患
②統合失調症:思考や感情などの精神機能がうまく働かずに気持ちがまとまらなくなる疾患
③てんかん:意識消失、けいれん等の発作が反復して現れる脳の疾患
④広汎性発達障害:自閉の気があり、他者との関係が難しいことがあり、こだわりも強い障害。知的障害は伴わないが「空気が読めない」や「優先順位が付けづらい」ことが特徴として多い。

など、その他非常に細かく多くの種類があり、症状は一人一人異なるのが精神障害者の特徴の一つです。

また、精神障害の程度の判定は、1級~3級に分かれています。

障害等級判定の基本的な考え方は以下のとおりです。

【精神障害者の等級】
・1級:精神障害が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。日常生活で他人の援助が必須。
・2級:精神障害の状態が日常生活で著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。日常生活では必ずしも他人の助けを借りる必要はないが一人では困難が伴う。
・3級:精神障害の状態が日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活が制限を加えることを必要とする程度のもの。

※別紙参照「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準」

なお、精神障害者は「重度」という判定はなく、企業の障害者雇用のダブルカウント制度には反映されず、いずれの等級も1人は1人雇用となります。

精神障害者を雇用する場合の必要な配慮

精神障害者の症状は一人一人違うことが特徴の一つです。
それぞれどのような症状なのかを把握することが必要となります。

率直に本人に必要な配慮を聞くことで、ある程度理解することができますが、1級や2級の方は相応の背景があると思われます。

精神障害者の場合、同じ精神障害者保健福祉手帳をお持ちの中で、発達障害(自閉症スペクトラム)の方がおりますが、一般的な精神障害者とは配慮の方法が大きく異なることがあります。

以下、一般的な精神障害と発達障害(自閉症スペクトラム)を分けてご説明いたします。

一般的な精神障害の必要な配慮

一般の採用市場の中で多くいらっしゃるのは「気分障害(うつ病など)」「統合失調症」「不安障害(適応障害など)」の方々が見受けられます。

一般的な精神障害者の配慮方法例は以下の通りです。

【一般的な精神障害者の配慮例】
・業務コントロール(残業などの負担は避ける)
・対人関係の少ない環境(対人ストレスを最小限にする)
・臨機応変、様々な判断が少ない業務(イレギュラーの少ない、本人が安心できるような業務)
・相談できる人が近くにいる環境
・安定した就業体系(定期的な休息時間の確保、睡眠時間がしっかり確保できる帰宅時間など)
など

重要なポイントは「休憩時間の確保」と「睡眠時間の確保」です。

精神障害者は脳の障害でもあるため、脳疲労はできるだけ避けることがよいでしょう。
休憩時間は本人と話し合いながら、必要であれば、1時間に1回は必ず休憩を取るように「仕組み化」することも有効です。

そして睡眠時間ですが、精神障害者の方々にとって睡眠は非常に重要なものです。
医師から睡眠導入剤を処方されている方も少なくありません。
睡眠導入剤の量、そして服薬時間も含めて、安定就業の重要な指標にする方々も多くいらっしゃいます。

発達障害(自閉症スペクトラム)の必要な配慮

発達障害(自閉症スペクトラム)の方の特性として以下の3つがあります。

・「社会性と対人関係の障害」
・「コミュニケーション障害」
・「行動や興味の偏り、こだわりが多い」

一般的に発達障害(自閉症スペクトラム)の方は相手の気持ち(行間や雰囲気)を読み取ることができず、相手の言っている意味を理解することが苦手です。
また自分の意志を伝えることも苦手で、スムーズなコミュニケーションが形成しづらいことがあります。

また、優先順位付けが苦手であったり、複数の指示系統で混乱してしまう、同時に二つのことができない、自分の解釈で仕事をすすめてしまうなどの傾向があります。

こういった特性を理解した上で、発達障害(自閉症スペクトラム)の配慮方法例は以下の通りです。

【発達障害(自閉症スペクトラム)の配慮例】
・コミュニケーションが多く発生しない環境や業務
・業務順序や業務プロセスを明確にする
・曖昧な指示は避ける(明確な内容で伝える)
・複数人からの指示は避ける
・臨機応変、様々な判断が少ない業務(イレギュラーの少ない業務)
・相談できる人が近くにいる環境
など

精神障害者の採用と業務例

精神障害者の採用

うつ病患者は国内100万人以上、潜在的メンタル不調者は500~600万人にのぼると云われています。このような背景から採用市場では精神障害者の方々の数が増え続けています。

企業の障害者法定雇用率も上昇し続けている背景の中、ニーズの高い身体障害者や知的障害者を優先的に雇用する企業が多いことから採用市場では精神障害者の増加が目立っている結果となっています。

一般的な精神障害者(うつや統合失調症など)も増加していますが、発達障害者(自閉症スペクトラム)も増加傾向にあります。
つまり、精神障害者はハローワークなどに登録数は多く、採用自体は難しいことではありません。

しかしながら、精神障害者は就業が不安定なことが課題でもあり、採用のポイントとしては「安定就業できるかどうか」という視点が必要です。
症状の波が大きいため、面接日の症状が非常に良い方もいますし、一概には採用の判断が難しいのも事実です。

 

【精神障害者の採用のポイント】
・面接は複数回行う
・障害状況、障害特性など自分から丁寧に話してくれる方が望ましい
・よく知るために家族・支援者の同席も検討する(支援機関があると比較的安心できる)
など

【面接時の確認ポイント】
・障害状況・健康状態の確認(症状、治療・服薬通院の必要性等)
・日常生活リズムの確認(睡眠リズム等)
・通勤能力、基礎体力の確認(公共交通機関の単独利用等)
・対人態度の確認(助言の受け入れ、質問、感謝等)
・業務能力の確認 ※別途簡易テスト実施等
など

精神障害者の業務

精神障害者の業務に関しましては、非常に幅広く対応が可能です。
身体的にも問題がない方も多く、作業系の業務もできますし、知的能力も問題ないことから、パソコンなどの事務業務もできます。

個人のお持ちの過去の経歴、経験を生かすことで、大半は業務能力を発揮することができます。
ただし、「てんかん」の方の場合、急に発作が出る場合があるので、運転業務や危険な場所での作業は避けたほうが良いでしょう。

精神障害者の中にはエンジニアやデザイナー、クリエイターなど専門知識を持っている方もいますので、戦力としての雇用が可能となります。
つまり、精神障害者の場合、業務内容や業務能力というよりも、環境サポートをどのようにするのか、という視点が最大のポイントとなります。

前項目の「必要な配慮」をしっかりと確保することで安定就業しやすくなります。
相談しやすい環境、ストレスの少ない環境、休憩の取りやすい環境などを構築することが有効です。

なお、一般的には遅刻や欠勤が発生しやすい障害となります。
遅刻や欠勤する場合の対応方法(誰にどのように連絡するのか:例メール連絡など)を事前にしっかりと決めておくことが良いでしょう。

 

筆者:嵐 正樹
■プロフィール:
障害者雇用サポート支援として、身体・知的・精神障害者全ての雇用サポート実務を経験。
障害者雇用コンサルタントとして、東証一部上場企業を含めた10社以上の障害者雇用体制立ち上げを経験。
業務切り出しから採用、定着までの一貫した雇用サポートに強み。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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