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改正育児・介護休業法が2022年4月より段階的に施行!企業が取り組むべきこととは?

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育児・介護休業法が改正され、令和4年4月1日より段階的に施行されていきます。今回の改正の目的の1つは男性の育児休業の取得促進です。

2022年10月1日には「産後パパ育休」が新設され、育児休業とは別に取得可能になります。

育児休業も産後パパ育休も分割して2回取得可能なので、改正前よりも柔軟に取得できるようになりました。

しかし、事業所が育児休業を取得しやすい環境に整備されていなければ、男性の育休取得率は伸びないでしょう。

そこで今回の改正では、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備が事業主に義務付けられます。

この記事では、育児・介護休業法の改正にともない、企業が取り組むべきことについて解説いたします。

男性の育休取得率

育児休業の取得率は男女別に毎年調査されています。男性の育休取得率はまだ低いものの、令和2年度は前年度に比べて大きく伸びました。

令和2年度の男性の育児取得率は大幅にアップ

令和2年度の男性の育児休業取得率は12.65%でした。平成8年に0.12%であった育休取得率は微増を続け、平成29年度は5.14%、平成30年度は6.16%、令和元年度は7.48%というようにここ数年は約1ポイントずつ増加。それが令和2年度は前年度より5.17ポイントも上昇しました。

育休取得率が80%台前半で安定している女性に比べるとまだまだ少ないといえますが、男性が育休を取得しやすい環境整備が進んでいることがうかがえます。

【参考】厚生労働省
令和2年度雇用均等基本調査

男性の育休取得期間は約3割が5日未満

男性の育休取得率は上がりつつありますが、取得期間については短期間の人が少なくありません。

令和2年度は、育休期間が5日未満の人の割合が28.33%でした。育休を取得した人でも約3割はわずかな日数しか取得できていません。

理想の育休取得期間は?

株式会社ナリス化粧品が全国の子供がいる25歳〜49歳の男性・25歳〜44歳の女性に「男性の育休取得に関する意識調査」をおこなっています。

その中で、理想の育休期間について、男性は1週間という回答が最も多く、全体の17.6%でした。続いて「15日から1ヶ月未満」が12.8%、「1ヶ月以上2ヶ月未満」が10.2%ということです。

一方、実際の取得期間で最も多いのは「2〜3日」なので、理想と現実に大きな隔たりがあります。

また、女性は配偶者の理想の育休期間について「15日から1ヶ月」がもっとも多く、15.3%でした。次いで「1ヶ月以上2ヶ月未満」が15.2%でほぼ同率です。

女性は配偶者に1ヶ月前後は育休をとってほしいと思っている人が多いということがわかります。

【参考】
ナリス化粧品「男性育休、取得期間が長いほど、満足度高い」

育児・介護休業法改正に伴い企業がおこなうべきこと

2022年4月1日から段階的に改正育児・介護休業法の施行がはじまっています。今回の改正は男女とも仕事と育児を両立できるよう男性の育児休業を促進することが目的の1つです。

事業主は男性が育児休業を取得しやすくなるように環境を整えていく必要があるため、今回の法改正で義務化されたこともあります。

育児・介護休業法改正にともない、企業はどのようなことをおこなうべきか解説いたします。

妊娠・出産の申出をした労働者に対し個別周知・意向確認

2022年4月1日から本人または配偶者の妊娠・出産の申出をした労働者に対し、事業主は育児休業と産後パパ育休について周知することが義務化されました。具体的な周知内容は以下の4つです。

  • 育児休業・産後パパ育休に関する制度
  • 育児休業・産後パパ育休の申出先
  • 育児休業給付に関すること
  • 労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

また、育休を取得するか本人の意向を確認することも義務化されています。

ただし、個別周知や意向確認は育休取得の申出を円滑にするものなので、取得を控えさせるような形でおこなわないようにしましょう。

たとえば取得した場合の不利益をほのめかしたり、これまでに前例がないことを強調したりするのは認められていません。

個別周知や意向確認は、面談(オンラインを含む)や書面交付でおこなえます。本人が希望した場合はFAXや電子メールでも問題ありません。

個別周知や意向確認の資料・記載例は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。

【参考】厚生労働省
参考様式(個別周知・意向確認書記載例、事例紹介、制度・方針周知 ポスター例)

個別周知や意向確認が漏れないようにするには、担当部署や担当者を明確に決めておく必要があります。

また、社員が上司に申し出た際、担当部署に確実に共有されるよう管理職には周知を徹底しておくことが大切です。

従業員本人の妊娠や出産は把握しやすいものですが、配偶者の妊娠・出産は直前まで把握できないこともありますので、できるだけ早く把握できるような仕組みを整えておくことを検討しましょう。

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備

2022年4月1日より、従業員が育児休業やパパ育児休業の申出をしやすいように、事業主は次の4つの方法の中からどれか1つ(できれば複数が望ましい)実施するようになっています。

  • 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
  • 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口・相談対応者の設置)
  • 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
  • 自社の労働者への育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

研修を実施する場合、できれば全労働者を対象とするのが望ましいとされています。少なくとも管理職は必ず研修を受けておきましょう。

相談窓口を設ける場合は、形式的ではなく従業員が利用しやすい体制を整備し、周知してください。

自社の育休取得事例の提供をおこなう場合は、性別や職種、雇用形態が偏らないようさまざまな事例を収集し、掲載した書類の配布、イントラネットへの掲載などをおこないましょう。

女性の事例や正社員の事例ばかり掲載すると男性や有期雇用労働者の育休取得率を上げることにつながりませんので、育休の申し出を控えることにつながらないよう配慮が必要です。

育休制度と育休取得促進に関する事業主の方針の周知をおこなう場合は、記載したポスターなどを事業所内に掲示したり、イントラネットへ掲載したりしてください。

2022年10月1日からは、「産後パパ育休」の創設や、育児休業制度の変更が施行されます。

「産後パパ育休」は、育休とは別に子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得できます。また、育休制度はこれまで1回しか取得できませんでしたが、2022年10月1日からは2回まで分割して取得できるようになります。

産後パパ育休も2回に分割して取得できるため、男性は最大で4回に分割して取得可能です。

分割して取得できることで、夫婦が交代で育休を取得しやすくなります。まとまった休みがとりにくい人も、取得しやすくなるでしょう。

しかし、今回の改正内容を全従業員に周知していなければ周りからの理解を得にくく、希望通りの形で育休を取得しにくいかもしれません。

誰もが育休を取得しやすくなるように、事業主は環境整備する必要があります。

就業規則の変更

2022年4月1日に「有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和」が施行されました。改正前は有期雇用労働者の育休取得要件として、次の2つがありました。

①引き続き雇用された期間が1年以上
②1歳6ヶ月までの間に契約が満了することが明らかでない

改正後は①の要件が撤廃されて②のみになり、無期雇用労働者と同様の取り扱いになりました。改正に合わせて就業規則を変更し、従業員への周知が必要です。

従業員が10名以上の事業所は労働基準監督署への届出も必要です。10名未満の会社は就業規則を作成していないかもしれませんが、従業員が安心して働けるように作成しておいた方がよいでしょう。

ハラスメントを防止する措置を講じる

育児休業を申し出たことや取得したことを理由に事業主が解雇・退職の強要など不利益な取り扱いをおこなうことは禁止されています。

また、今回の改正で創設された産後パパ育休の申し出や取得、産後パパ育休期間中の就業を申し出・同意しなかったことなどを理由に不利益な取り扱いをおこなうことも禁止です。

事業主には、上司や同僚からのハラスメントを防止する措置を講じることが義務付けられています。

まとめ

今回の法改正は産後パパ育休が新設されたことや、分割して取得できるようになったことで、男性は最大4回まで分割して取得できるようになりました。

育休をまとめて長期間取得しにくい人にとっては、利用しやすくなったでしょう。

ただし、社内で育児休業への理解が浸透していなければ、ハラスメントが起こる危険性があります。

ハラスメントの心配なく育休を取得できるようになれば、男性も女性も仕事と育児を両立しやすくなります。

従業員の愛社精神も高まり、離職率低下につながるでしょう。

誰もが活躍できる社会をつくるためにも育児休業を取得しやすい環境を整備しましょう。

著者:早瀬 加奈子

会社員時代は、楽器小売業の会社で10年以上経理に携わっていました。
現在は専業のWEBライターとして活動しています。
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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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