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「メディア」の変化への対応事例

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全体売上の約9割を自社サイトと電話経由で受注する仕組みを作った企業

企業の紹介

企業名:株式会社ナカムラ
事業内容:菓子食品飲料の企画販売卸売り
資本金:1,000万円
HP:https://myame.jp/

事業の概要

同社が運営している「まいあめ工房」は100%手作りの飴をオリジナルデザインでオーダーできるキャンディー製作サイトです。

リアルな営業活動をせずに、主にWEBマーケティングだけで、売上の約9割を自社サイトと電話経由で受注しています。

企業からの注文がメインとなる、安定した収益モデルを構築しています。こうした事業構造を作れたのは、以下のようなメディア戦略によるものです。

  • 検索エンジン対策

自社コンテンツが検索上位に来るように、ヒットキーワードをオウンドメディアに盛り込むなど、SEO施策を徹底しました。

  • webニュースやSNSによる広報

干支飴や合格飴などの季節飴やトレンドに合わせたオリジナル飴を手作りし、WEBニュースやSNSで広報することで、自社サイトの知名度を向上させています。

  • オウンドメディア改善

自社サイトへのアクセスログを解析することでペルソナを特定。営業企画やCSR部門に所属する28歳から35歳にかけての女性が多いことが判明しました。

特定したペルソナが、販促・PRのための自社のデザイン飴を用いた企画を立てた際の後押しのため、プレゼンテーションで役立つオーダーメイド飴の事例や大手企業との取引実績を掲載することで、企業からの受注につなげています。

事例から学べる事

①「顧客をゲットする」戦略

  • ターゲットを絞り込む

マーケティングの権威フィリップ・コトラーは、有用なターゲットとして「若者」「女性」「ネティズン」を取り上げています。

このうち、「まいあめ工房」が絞り込んだのは「若者」かつ「女性」で有用な顧客像をターゲティングできています。

若者はトレンドに敏感なアーリーアダプター(初期採用者)のため、2001年のiPodや2010年のネットフリックスの初期広告のターゲットでした。

新製品や新開発製品の若者first戦略の成功率が高いことが証明されています。

女性は、機能的利点や感情的利点、価格等の総合的判断で買い物する「ホリスティックショッパー」として位置づけられ、男性よりロイヤリティ高く、所属コミュニティへ推奨するモチベーションが高いターゲットです。また、会話も多いので声を収集しやすい顧客とされています。

  • ターゲットの購買サイクルに応じた施策

・認知段階での施策
検索エンジン施策を講じ、オウンドメディアへの流入点を常に改善しています。webニュースやSNSで季節ごと、トレンドごとに新製品を広報し認知度を高めています。

・興味関心段階での施策
ペルソナを特定することでターゲットの欲求を喚起するコンテンツやメッセージや売り文句、画像などでプロモーションを実施しています。

・比較検討段階での施策
ペルソナが比較検討しやすいよう様々なオーダーメイド事例を自社サイトに掲載しています。

・購入段階での施策
取引実績を掲載し、信頼性を高め企業が発注する際の後押しをしています。

②「顧客をキープする」戦略

  • 顧客維持のための施策

季節やトレンドに合わせたデザイン飴を製作することで、製品を常にアップデートし顧客をキープする材料を提供しています。

③「顧客をグローする」戦略

  • 顧客による他の顧客の紹介

webニュースやSNSで広報することでシェアされやすい記事を作り、被リンク・サイテーションを獲得する施策を採っています。

中小企業白書2017年版事例2-3-3. 株式会社ナカムラhttps://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/h29/html/b2_3_3_1.html

顧客の声を徹底的に活かした読者共創型メディアに作り替えることで、4年で発行部数を2倍に

企業の紹介

企業名: 株式会社ハルメク
事業内容:出版ならびに通信販売業
資本金:1,000万円
HP:https://halmek.co.jp/corp

読者共創型メディアを始めた背景

1996年、シニア向け雑誌『いきいき』として創刊。2016年、『ハルメク』と名称を変更とともに、50歳以上の女性向け雑誌へポジショニングも変更しました。2017年、外部から新編集長招き入れています。

株式会社ハルメクのビジネスモデル概要

  • 月刊誌「ハルメク」

書店には並ばず、自宅配送の定期購読のみという販売スタイルをとっています。販売部数は女性誌第1位、全雑誌中第2位となっています(2020年下半期、一般社団法人ABC協会調べ)。コロナ禍において過去最高の部数増となっています。

https://magazine.halmek.co.jp/

  • 「ハルメクWEB」

web版はトレンドや情勢記事、アナログ雑誌「ハルメク」は長いスパンの記事や一覧性の記事ですみ分けることで、異なる読者層の取り込みに成功しています。web版の中心読者層は50代、アナログ雑誌は60代になります。

https://halmek.co.jp/?_ga=2.226447384.361605973.1641521158-872262824.1641521153

  • 通販サイト

プライベートブランドが約7割を占め、アパレルや日用品を中心とする通信サイトです。

通販事業の売上が事業全体の売上高の7~8割を占めることで、雑誌の広告主の顔色をうかがう必要のない収益構造を確立し、読者の声だけに忠実な雑誌づくり・事業モデルづくりが可能になっています。

https://ec.halmek.co.jp/shop/default.aspx

事例から学べる事

①「顧客をゲットする」戦略

  • ターゲットを絞り込む

効率的なターゲット絞込みのためのフレームワーク「6R」を満たしています。

子育てが終わりかつまだ健康な年齢で、コミュニティを形成しやすいシニア女性は、高い消費支出と波及効果が期待できるターゲットです。

毎月2000枚届く読者ハガキと約3000人の会員モニターを有しており、測定可能な顧客反応を十分収集できる環境が出来上がっています。

また、SNSコミュニティを形成しやすいユーザーの取り込みに成功しています。

スマホ保有率9割越えているユーザーを抱えていることが同社内シンクタンクで明らかになっているので、顧客の購買意思決定上重要なSNSコミュニティを取り込めていると予想されます。

  • ターゲットの購買サイクルに応じて施策を展開する

・認知段階での施策
新聞や雑誌のインタビューに応じることで認知を高めるとともにアナログメディアの信用性を獲得しています。

・興味関心段階での施策
同社内シンクタンク「生きかた上手研究所」の既存ユーザーの満足度調査を行い、誌面を改善。一般女性の意識調査も行い次の特集記事の参考にしています。

・比較検討段階での施策
周辺事業を充実させることで、読者の悩みの解決策をいろいろな角度で提供し、競合との違いや根拠ある優位性、差別化のポイントを顕在化させています。

・購入段階での施策
シニア女性がデジタルへ移行する際に生じる悩みを解消するマニュアルを作成し、買いにくさを解消しています。

②「顧客をキープする」戦略

  • 顧客との対話

毎月届く2000枚の読者ハガキと約3000人の会員モニター、リアルツアーやイベントでのマンツーマンの交流を図っています。顧客の9割が所持しているスマートフォンがコミュニケーションを後押ししています。

  • 顧客維持

「必ず前より良くなっていく」をコンセプトに、顧客の声を参考に雑誌の誌面や事業モデルを改善していることが顧客維持につながっています。

③「顧客をグローする」戦略

  • 既存顧客からの新たな売上

雑誌で紹介したアイテムやイベントなどに合わせた周辺事業の充実、顧客の声を反映したコンテンツ開発で新たな売上を実現しています。

  • 顧客による他の顧客の紹介

リアルイベントでの人と人とのコミュニケーションや、自分の声が誌面やコンテンツに反映されることで月刊誌「ハルメク」や株式会社ハルメクに愛着がわき、所属コミュニティの推奨の輪が広がっていることがコロナ禍で過去最高の部数増につながっていると思われます。

参考記事:WEBメディア「エディマグ」2021年5月31日https://edimart.jp/edimag/ichiran/p2577/

おわりに

今回取り上げた事例のいずれも、まず、ターゲットを充分に絞り込んで、競争優位に立てるポジショニングが出来たことが成功に寄与しています。

そしていずれも、メディアの特性をよく理解し、マーケティング施策を行っています。

最初の事例ではオウンドメディアへの道筋とサイトを具体的なペルソナをもとに改善することで効率よく顧客をゲットしています。

次の事例ではアナログメディアのユーザーをデジタルメディアとの境をスムーズに回遊させることで顧客をキープ・グローさせています。

第1回で取り上げたメディアの変化の実態もこの事例も、スマートフォンというデバイスの存在が大きく、スマートフォンとどう向き合うかがこれからの企業の成長のカギを握っているといえるでしょう。

著者:maru

2011年から中小企業診断士として経営コンサルタントをはじめる。
通常の企業経営コンサルから、無農薬農業経営、介護施設運営等の幅広い業種に関わり、
エンターテインメント施設の開業のための市場調査から、債務超過企業の事業デューデリジェンスまで、企業成長段階に応じたコンサルタントを行っています。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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