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SDGsを取り入れる企業側のメリット

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第1回「SDGsの概要」、第2回「SDGsと経済の関係性」をお伝えしてきましたが、第3回目の今回は、SDGsを実際に取り入れた成功事例をご紹介していこうと考えています。

 

中小企業とSDGsの現状

これまでの内容で、SDGsがこれからの経済界にとっても、かなり重要な要素の1つになるということはお伝えしてきました。

実際のところ、日本国内の中小企業はどのような取り組みをしているのかを調べてみたところ、衝撃の事実が判明しました。

国内中小企業に、SDGsについてアンケート(関東経済産業局が2018年10月実施)を行なったところ、実践している企業どころか、認知していない人がほとんどで、全体の84.2%がSDGs自体を知らないという結果になりました。

この結果を、どのように捉えるかは人それぞれですが、ここまで世界経済を動かしたSDGsが、日本国内で無関係なわけがありません。

世界経済は、SDGsによって、既にシステムの転換期を迎えています。

正直言いますと、チャンスです。SDGsが日本社会で一般的になる前に、事業内容の中で意識する事で、会社にとっても大きなメリットを産んでくれる可能性を秘めています。

 

大手企業が取り組むSDGs

参考例としてNECが取り組むSDGsについてみてみると、NECだけの事業で、SDGsに貢献している事業は8つもあります。

そのどれもが、明確にSDGsの課題解決へのアプローチになっており、企業のシステム構造の基盤にSDGsが意識されています。

今まで、CSR(企業の社会的責任)は慈善活動として事業の本質としてではなく、事業のプラスαとして、行われてきました。

しかし、企業のイメージアップのための慈善活動は、もはや企業的にも非効率で、SDGsのゴールの達成に向けた成果としても、最善の方法とは言えませんでした。

SDGsの登場により、時代は「SDGsを本業の柱(事業の本質)にして、その事業を促進させる事で、売り上げとSDGsの課題解決をより高めよう」という風土になりつつあります。

NECの食品ロスを改善する「需給最適化のプラットフォーム」

ITを中心に製品やサービスを提供するNECの事例として、食品ロスを改善する「需要最適化のプラットフォーム」というものがあります。

具体的なサービスとしては、AIで需要予測を行うことで、できるだけ無駄のない配給を実現させ、食品ロスを減らしていくという取り組みです。

NECの「需給最適化プラットフォーム」自体が、SDGsの課題解決にもなり、SDGsを掲げる事で、積極的に国内メディアでも取り上げられ、サービスの普及は早まっていくことが期待されます。

このように、SDGsを企業が取り組むことで、国からの支援も受けやすくなり、ステークホルダーにも好印象を与え、メディアが積極的に取り上げてくれる事で、サービスの普及にも繋がる。

今までの、事業外でやってきた活動とは異なり、事業の本質にSDGsの問題意識を植え付けることで、NECからしても、取り組むだけのメリットが多いに見受けられます。

今回の事例のように、プラスに作用する事例ばかりではなく場合によっては、SDGsに取り組んでいない企業とは、取引を行わないという企業も出てきています。

今後、世の中にSDGsが浸透していくと同時に、そのような状況は加速していくことでしょう。

【NECの「需給最適化プラットフォーム」が取り組んだSDGs】

・SDGゴール7(エネルギーをみんなに)
・SDGゴール8(働きがいも経済成長も)
・SDGゴール9(住み続けられるまちづくりを)
・SDGゴール12(つくる責任、つかう責任)

 

中小企業が実践するSDGs

SDGsを事業にとりいれたことで成功した事例は、中小企業にあるのでしょうか?

SDGsを取り入れた中小企業の成功例、横浜にある印刷会社「大川印刷」。

大川印刷は、100年以上の歴史を誇る企業で、現在も印刷業を生業にしています。

出版業界の不況などもあり、軒並み売り上げが停滞している印刷業界。そんななか、大川印刷は、SDGsの課題解決を事業に盛り込む事で、停滞していた業績を改善させました。

大川印刷が取り組んだSDGs

キッカケとなったのは、大阪市の印刷会社に勤務していた社員が胆管ガンになり、その原因が印刷業務の中で使用する薬品ではないか?など多くの憶測が飛んだ事例です。

因果関係は判明されませんでしたが、同じ印刷会社の大川印刷にとっても、この事例は大きな問題で、従業員を守る必要のある会社は、この問題を機に、印刷業務に使う薬品や会社環境の見直しなどを行いました。

事業停滞と、社内環境の改善。この2つのテーマをSDGsの概念を踏まえて改善方法を模索していきました。

「カーボンオフセット」と「J-クレジット制度」

大川印刷が抱える問題を改善するポイントとなったのは、「カーボンオフセット」「J-クレジット制度」。

【カーボンオフセット】

CO2削減努力を行なった上で、削減できないCO2に関しては、排出量に応じた温室効果ガスの削減活動に投資をするという仕組み。

【J-クレジット制度】

カーボンオフセットを利用したい企業や団体が、温室効果ガスの削減活動に投資する際の、クレジットを国が決める制度。

その他に、J-クレジットが行なっている活動は、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーを事業に促進させる事で、ランニングコストの削減、または、売却を請け負う企業の環境保全活動のPRも行なってくれる。

ゼロカーボンプリントの仕組み

この2つの仕組みを利用し、大川印刷は「ゼロカーボンプリント」を導入しました。

ゼロカーボンプリントを利用しない印刷物の場合、1kgの印刷物を作るに1,62kgのCO2を排出してしまいますが、大川印刷の「ゼロカーボンプリント」は、そのCO2排出量を「0」にする事ができる技術なのです。

つまり、各地のCO2削減事業から、カーボンオフセットを行う代わりに、クレジットを調達し、事業者にゼロカーボンプリントで制作した印刷物を納品。

事業者自体も、大川印刷に印刷物制作を依頼する事で、CO2ゼロ表示の商品を消費者に提供できる。事業者も消費者も間接的にCO2削減に貢献できるという仕組みです。

【ゼロカーボンプリントの仕組み】

(参照:大川印刷

【大川印刷が取り組んだSDGs】

・SDGゴール7(エネルギーをみんなに)
・SDGゴール8(働きがいも経済成長も)
・SDGゴール12(つくる責任、つかう責任)
・SDGゴール15(陸の豊かさを守ろう)

 

中小企業だからこそ出来るSDGs

今回の項で、SDGsを取り入れた企業の実例を大企業と中小企業の2つ、ご紹介しました。

ポイントとしては、SDGsの活動を慈善活動として「事業外」で行うのではなく、「事業の基盤となる本質にSDGsを組み込む事」で、売り上げとSDGsの達成度も高まるという事です。

事業の基盤にSDGsを盛り込む事は、簡単な事ではありません。大手企業ならなおさら難しい事です。規模が大きすぎない中小企業だからこそ、効果的に取り入れることが可能になります。

次回の項では、中小企業とSDGsの関わり方について、さらに深く解説していきます。

 

著者:久貝 将太

フリーランスでライター業を営んでいます。主に、SDGsやサスティナブルを取り上げるメディア、キャッシュレス関係で記事執筆をしています。筆者自身、SDGsを取り入れたファッションサービスを展開するため、それにむけて準備中です。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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