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BCP(事業継続計画)策定上のポイント

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BCPとは何か、経営上や社会上どんな意義があるのかを前回の記事でご紹介してきましたが、今回は計画を策定する上での重要な点を確認していきます。

BCPを知ると、その必要性から、すぐにでも立案したくなるのは分かりますが、まずはじっくりその中身である策定上のポイントや構造を理解していきましょう。

BCP策定上の基本的な考え方

BCPを策定し、それを実効性の高いものにしていくためには、以下の2点が最も重要な要素になります。

経営トップと全従業員の参加意識

先ずは、経営トップ自らが災害時の事業継続に対して意識を持つことが重要です。

近年の日本を襲った想定外の自然災害は多くの企業を廃業に追い込んでいます。そのことをトップ自ら再認識すべきです。

さらには、従業員に対して一人一人の生活や将来に関わる重要課題であることを認識させることが必要です。企業が存続してこその従業員の生活です。

その考えを踏まえた上で、全員参加型の活動にしていく事が求められます。

取引先との連携

操業再開には、取引先との連携が欠かせません。原材料や商品の仕入先や、製品の販売先に対しては、BCPの企画段階から協力の要請が必要です。

そのためには、平常時からの協力姿勢や連絡網の整備等も重要です。災害時にスムーズな連携が出来ることで、連鎖倒産など、最悪な事態を防ぐことが出来ます。

経営戦略の視点

BCPは必要に迫られて立案するというケースが多いようですが、最短時間で操業を開始できることは取引先や社会に対して好影響をもたらします。

資金調達や人材募集の面でもプラスになります。戦略的な活用という考え方も必要です。

BCP作成の前にはBCM(事業継続マネジメント)

BCPを作成するには、BCM(Business Continuity Management)というプロセスを活用します。BCMとは、BCPを作成し、運用する中身のプロセスです。

BCMはマネジメントプロセスであるため、Plan(計画)→Do(実行)→Check(検証)→Action(改善)のプロセスを踏みます。

つまり、BCPとはBCMというマネジメントサイクルの一部分であり、成果物であると言えます。以下にそのステップを見ていきます。

BCMのステップ

BCPを策定し、運用していく段階は次のようになっています。

BCM基本方針の策定

災害に遭遇した際の事業の再開や継続について、基本方針を策定します。経営者が積極的に関与することが求められます。

ビジネスインパクトの分析

事業を継続していく上で、そもそもどんなリスクがあるかを分析します。

まずは、事業継続の障害になる災害を分析します。災害は自然災害以外に病害や人的災害もあります。

自社にとってどんな災害が発生しうるか?どの程度の被害が予測されるかを分析します。

自然災害の場合、都道府県がホームページなどで公開している防災マップなどをもとに、地震や河川の氾濫、津波などの予想を行います。

さらに、災害の程度を予測した上で、自社の災害復旧や操業再開にかかわる重要な業務は何かを特定します。ボトルネックと言われるものです。

また、その業務を再開させるための目標時間の設定や代替手段、資金も含めた経営資源、従業員や取引先との連絡手段等を検討します。

BCMの最も中核的なステップであり、BCPの内容を決めていく重要なステップでもあります。

BCP(事業継続計画)の策定

災害が発生してからの指揮命令系統の確定や、対策本部となる本社機能をどう確保・運用するのかなどの組織体制や、対外的な情報発信の方法、情報の共有化、必要な情報のバックアップ、ビジネスインパクト分析に基づいて決定された目標再開時間、再開業務内容を具体的にマニュアルとして策定します。

計画は全社的な計画と部署ごとの個別計画に分かれますが、相互に矛盾や重複が無いように策定します。

さらに、BCPがきちんと運用できるように資金を手当てしておき、予算化して実行可能な状態にしておくことも重要です。

そして、BCP活用時は電源等も喪失している可能性があります。必ずペーパーベースでの保管もしておきましょう。

実施・運用

BCPで決められた内容の実施に当たっては、まず、組織のメンバーに対して事前の周知徹底が重要です。

災害発生時には、従来の操業手順とはかなり違うものになります。末端の社員まで浸透させておく教育・訓練が必要です。

また、教育訓練時には、実行マニュアルやチェックリストの確認、災害時に活用できる融資制度や借入金・保険契約の締結の確認も必要です。

点検・見直し

企業を取り巻く環境は、常に変化しています。特に顧客や取引先の状況も日々変化しています。そのため、BCPは常に見直していく必要があります。

実際に運用した場合の問題点や、教育訓練やテストを通じて得られた修正や、目標復旧時間や中核事業、ボトルネックになる点、取引先の状況等に変更が無いかを確認して計画を修正し、より良いものにしていきます。

さらに、点検や見直しを通じて計画の修正では対応できない場合、基本方針の策定の見直しも図っていきます。

まとめ

今回は、BCP作成のための重要ポイントやBCPを作成するためのマネジメントサイクルであるBCMの構造を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?

BCPは計画を立てれば済むものではありません。まずはトップの意識と全従業員の参画意識、取引先との連携の上で初めてBCMのマネジメントサイクルを回すことが出来、BCPが実効性の高い計画となっていきます。

また、中核的な作業であるビジネスインパクトの分析では、改めて自社の置かれているリスクを見直す良い機会でもあります。じっくりと、検討して良い計画にしていきましょう。

さらに、BCPは一度作れば半永久時に使えるものでもありません。点検・見直しを常に行うことで災害対応力を高めながら、取引先や地域社会に対する信頼感を得ることもできます。そのことで、BCM・BCP自体がその企業の経営戦略の一環になっていくでしょう。

著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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