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経営戦略の中核「戦略ドメイン」のしくみ

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企業戦略の中で、最も重要な作業は、企業の生存領域を決める「戦略ドメイン」を決定することです。

戦略ドメインとはどの領域(土俵)でビジネスを行うかということですが、経営環境が目まぐるしく変化する昨今、どの土俵で勝負するかは、常に考え直していかないといけない必須のテーマであると言えます。

 

戦略ドメインとは

戦略ドメインとは、企業がどんな分野や場所で生きていくかということです。言わば企業の「居場所」や「進路」と言えます。

実はこの戦略ドメイン、昔はそれほど常に考えるものではありませんでした。

なぜなら、経済が右肩上がりに拡大していた時代は、消費者ニーズも均一で、新たな生存領域を考える事より、より多く売ることやコストを落とすことが経営の主な目的だったからです。

では、戦略ドメインはどのように構築していったら良いのでしょうか?

戦略ドメインは、一般的に次の三要素から構成されていると言われています。

誰に(ターゲット顧客の設定)

自社の顧客は一体どのような客層なのかを改めて考えて行きます。売る相手が見えなければ、ビジネスになりません。

従来、顧客層は年齢や性別などの要素でくくられていましたが、消費者のニーズは多様化しています。同じ年齢でも好みは様々です。

最近のランドセルの色を見ると明らかです。昔は赤と黒が定番だったのに、今はクレパスのようにカラフルで多様です。いかに消費者ニーズが多様化したかが分かります。

何を(商品・サービス)

何を売っていくかということですが、物理的な「モノ」というより、顧客が求めている「コト」に注目すべき時代になっています。

経営戦略やマーケティングの世界でよく例え話で出てくるのが「ドリル」の話です。顧客が欲しいものはドリルという道具そのものではなくて、顧客にとって最適な「穴が欲しい」ということです。

しかし、ドリルの機能や性能ばかりを追い求めている企業は他の代替製品や手段が生まれたとき、市場から退場することになります。

どのように(提供方法)

商品やサービスに対して、どんな方法で顧客を満足させるかということです。

例えば、小売業で言うと、現在多くの店舗で採用されている「セルフサービス方式」や、敢えて昔の親密さを大切にした「対面販売方式」、あるいは「ネット通販」、高齢者向け・子育て世代向け等の「宅配サービス」や「訪問販売」、インターネットなどの「通信販売」など、様々な提供方法が存在します。

顧客のニーズやライフスタイルに合わせて、提供方法も変えていかなくてはいけません。

 

戦略ドメインの捉え方で戦略が変わる

戦略ドメインは、その捉え方次第で、ビジネスの幅を大きく左右します。
例えば、「鉄道業」を例に取ると、以下のような展開が考えられます。

戦略ドメインを狭く捉える戦略

鉄道業の戦略ドメインを狭くとらえると、いわゆる「輸送業」であり、いかにスピーディーで快適に顧客を移動させるかが主眼になります。

ライバルは他の交通機関であり、具体的にはライバル鉄道会社やバス会社、航空会社やフェリー会社です。

競争のテーマとしては輸送の質であり、いかに早く運ぶか、いかに大量に運ぶか、いかに快適に運ぶか、いかに低コストで運ぶかが重要になってきます。

つまり、戦略ドメインを狭く考えるということは、本業に特化するということであると言えます。

本業のニーズがある限り、企業経営は可能ですが、高品質を求められるあまり、従業員の労働環境に無理が生じたり、品質を偽装したりするというケースも出てきます。

飲食業界で深夜に一人で店舗運営させるワンオペや、食品の産地偽装などが頻発したことがありましたが、典型的な事例と言えます。

また、馬車が鉄道に取って代わるなど、ひとたび大きな技術革新が起こると、一気に産業そのものが無くなってしまう危険性さえあります。

戦略ドメインを広く取る戦略

鉄道業を広くとらえると、ビジネスチャンスが広がります。

鉄道はお客様を運びますが、お客様は運ばれた後、様々な目的地に向かいます。
その目的は、娯楽・買い物・観光など様々です。そのように考えると、鉄道を利用した先にもニーズがあると考えると、戦略ドメインが広がります。

つまり、鉄道業だけではなく、アミューズメント産業であると考えると、「遊園地」や「野球場」などのビジネスが考えられますし、買い物客とらえると「デパート」や「スーパー」の経営も考えられます。観光客ととらえると、ホテルやレンタカーのビジネスも考えられます。

戦略ドメインを広げると、ビジネスチャンスも広がります。
新たな収益源を得て、経営が安定しやすくなります。

 

戦略ドメインを変化させていく必要性と要因

戦略ドメインを変えず、従来通りのドメインで上手く行ければ、それに越したことはありません。
しかし、現実の世の中は、それを許してはくれません。

例えばトヨタ自動車は、世界有数の自動車製造業ですが、電気自動車や自動運転の分野でGoogleなど、自動車とは縁もゆかりもないIT企業にその立場を脅かされそうになっています。

もはや、自動車という産業自体が「モノ」から、快適に移動するという「コト」へ、劇的にドメインを変化させられようとしているのです。

戦略ドメインを変化させる要因は、主に外的要因です。

法律の規制の強化や緩和、政治の動向、自然災害や気候変動、競争企業の動向、それらに伴う消費者ニーズの多様化などです。それらの要素は、企業側からはほぼ変えられません。

要因の変化に迅速に対応することが求められます。

 

まとめ

経営戦略の中核である「戦略ドメイン」の意義について説明してきましたが、いかがだったでしょうか?

従来通りのビジネスの考え方で、変わらない事も良いことではありますが、殆どの企業においては、変わらざるを得ない状況が迫っています。

日本の企業には、「良いものを造ればお客さんは買ってくれる」という考え方が根強く残っています。

それはそれで間違いではないのですが、私たち企業人は、良い製品の質が変化していることに気づかなければなりません。

つまり、企業とは「環境適応業」であることをまず自覚する必要があるということです。

著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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