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障害者の定着サポートのポイント

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さて最終回の5回目は、「障害者雇用の定着サポート」について解説します。

障害者の採用に限りませんが、人材は採用して終わりではありません。
採用後、会社の貴重な戦力として長く、安定して活躍頂くことが大切なのに異論はないと思います。

最近は障害者の定着サポートの存在が障害者の就労支援の中でもクローズアップされています。

今回は、障害者の定着サポートの具体的な取組や、管理体制、そして定着サポートの留意点について考えていきたいと思います。

「障害者雇用の進め方=①企画×②採用×③定着サポート

 

定着サポートの具体的な取組(例)

定着サポートの具体的な取組として、例えば以下のようなものがあります。

職場環境や指示・指導の方法など、障害者本人と周囲との関係性を調整

採用段階で、丁寧にマッチングを行ったとしても、実際に雇用した後は、職場環境に慣れるまで様々な課題が発生する可能性があります。

想定していた指示・指導方法で上手く伝わらないことがあったり、周囲とのコミュニケーションにより、障害者本人も周囲も疲れてしまったりといったようにです。

ですから、その際に上手く軌道修正することが大切になります。特に採用当初は、定期的に振り返りを行い、現状の業務内容や指示・指導方法で問題ないか、障害者本人と周囲の両方に確認をしながら進めると良いでしょう。

障害者の悩み相談

就職後の慣れない生活の中で、仕事面はもちろんのこと、生活面も含めて障害者本人の負担が大きくなることもあります。

採用当初は、業務の振り返りと共に、障害者本人の生活面も含めて悩みや課題の聞き取りを行い、必要に応じて課題解決を行うことが大切になります。

雇用管理体制を考える

定着サポートの具体的な取り組みは、職場の上長以外に、客観的な第三者に関わってもらうことも有効です。仕事への影響を懸念して上長には言いづらい事があるかもしれません。

その際に、管理部門のスタッフや、障害者本人の事を知っている外部の支援機関に関わってもらっておくことで、複数の視点から課題を解決しやすくなります。

また、直接的な指揮命令系統は雇用現場にありますが、雇用現場だけでは対応できないこともあります。

例えば、現場の受入前研修、産業医やカウンセラーとの調整、配慮に必要なスペースや備品の確保、職域開拓の方法についてのサポート、必要に応じた制度改定などです。

具体的な課題が発生した時に誰がどのように対応するのかを決めておくことで、障害者本人にとっても安心ですし、組織としてもリスク管理が行いやすくなります。

定着サポートの5つの留意点

①課題が発生しやすいタイミングを理解しておく

定着サポートを行う中で、課題が発生しやすいタイミングがあります。

1つ目は就職したての時です。障害者本人が職場に慣れ、周囲が障害者本人の事を理解するのに一定の時間がかかりますので、慣れるまでは継続的に関わることが有効です。

もう1つは、障害者本人の変化や周囲の変化が発生するタイミングです。例えば、

・仕事でいえば、業務内容が変わった、上司が変わった、職場が変わった
・生活でいえば、一人暮らしを始めた、結婚した(その結果、お金が必要になった)

といったことが挙げられます。

変化に影響を受けやすい障害者も多いので、変化があったタイミングでは、少しの間様子見をして頂いて、その環境に慣れていくかどうかを見極めて頂くことが大切になります。

②急ぎすぎない

企業からみれば採用後、すぐに即戦力として活躍を頂くことが理想かもしれません。

しかし、実際には時間をかけて業務を覚え、一度覚えたら安定して働くことが出来る障害者も多いです。そしてそのことも企業で働く人材としての大きな強みでもあると思います。

長期間かけて育てていくという視点を持つことで、長く戦力として活躍できる状態を目指してほしいと思います。

③自己評価と他者評価をすり合わせる

自己評価と他者評価のズレが大きいほど、うまく行かないことが増えます。この点で苦しむ障害者も多いです。

具体的に職場で現れる課題として、周囲の助言を受け入れられない、困っている状況に気づかない、現実的な選択ができないなどがあります。

障害者本人の自己理解を深めるためには、信頼関係を構築したうえで、具体的な経験と客観的なフィードバックを行いながら、自己評価と他者評価のずれをなくしていくことが、障害者本人にとっても、周囲にとっても大切になります。

④課題を階層化して考える

職場で発生した課題の原因として様々な視点が考えられます。

・障害者本人の意識やスキルから発生している課題
・周囲の社員とのコミュニケーション不足や理解不足から発生している課題
・組織全体としての配置や業務内容のミスマッチから発生する課題

などです。

下に行くほど、より組織として対応すべき課題になります。

もちろん障害者本人の努力によって解決すべき問題もあると思いますが、組織としての課題解決や周囲の社員との関係性を整理することにより解決する課題もあります。

複数の視点から考えることにより、取り得る選択肢が増えますので、視点を変えながら課題解決を図ることで、よりよい解決が実現できる可能性が高くなります。

⑤キャリアパスを考える

一般社員も障害者雇用で入社した社員も、はじめは与えられた業務を手順通り進め、上司の指示をきちんと守り、正確かつ効率的に仕事をすることが求められます。

障害者雇用においては、この職域がスタートであり、ゴールでもあることが多く、キャリアアップが見込めないこともあります。

その背景には、企業側もこれまでに障害者の雇用経験が少なく、社内制度が整っていないことや、採用時に障害者本人の強みや専門性、配慮事項等がはっきりと分からず、職域を用意できないこと、他の社員との比較の中でキャリアアップが出来ないといった事が考えられます。

会社の事情によってそれぞれですので、一概には言えませんが、障害者本人がやる気を持ち続けられるように、業務の幅を増やしていったり、業務時間を増やしたり、昇給したりといった取り組みを盛り込むことも一つのやり方かもしれません。

以上のように採用後も継続した取り組みを行うことにより、障害者が戦力として長く働き続けて頂けることを願っています。

著者:窪 貴志
2010年以降、中小企業から大手上場企業まで、企業への障害者雇用コンサルティングを行っている。特例子会社の立ち上げも含め、障害者の採用支援や職場環境構築に積極的に取り組む。 民間企業、地方公共団体等において、障害者雇用促進のための研修やセミナー実績多数。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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