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トルコショック

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こんにちは!栗原誠一郎です。

トルコリラ暴落

トルコ共和国の通貨トルコリラは、2018年8月10日の外国為替市場で一時、1ドル=6.8リラ台まで下落し、1日だけで20%近く値下がりしました。

その後13日には更に値を下げ、一時7.2リラ台まで下落、現在は少し持ち直している状況ですが、経済ニュースはトルコ通貨危機が世界経済に伝染することを危惧する記事だらけです。

通貨危機の歴史

しかし、ある特定の国の通貨危機がなぜ世界経済に伝染するのでしょうか?
そもそも通貨危機はなぜ発生するのでしょうか?

経済の歴史を遡ってみると、以下のような流れになっていることがわかります。

1960年代から70年代の南米の通貨危機

当時、南米のチリやペルーは固定為替相場制を採用していました。しかし、政府が財政赤字補填のために、通貨当局に紙幣を発行させつづけたことにより、貨幣の価値が実質的に低下し、遂には外貨が枯渇して相場を支え切れなくなり、一気に通貨が下落しました。

ポンド危機

1992年に発生したポンド危機がこの世代にあたります。

これはユーロの導入に備え、1973年に欧州委員会がヨーロッパにおける為替相場の変動を抑制し、通貨の安定性を確保することを目的として導入した制度(欧州為替相場メカニズム、通称ERM)を原因とするものです。

1990年10月に東西ドイツが統一されて以来、旧西ドイツ政府による旧東ドイツへの投資が増加し、欧州の金利は高目に推移し、結果として欧州通貨は買われました。

一方、英国はというと、景気は低迷し失業率も10%近くにまでなっていましたが、ERMによって欧州通貨と連動したポンドは高くなり続け、貨幣価値の実態との乖離が大きくなりました。

そこへヘッジファンドにポンド売りを仕掛けられ、ポンドを支えきれなくなった英国は、欧州為替相場メカニズムから離脱せざるえなくなりました。

アジア通貨危機

ポンド危機の5年後、1997年にタイを中心に発生したアジア通貨危機です。

当時アジアのほとんどの国家は、米ドルと自国通貨の為替レートを固定する「ドルペッグ制」を採用していました。

また、アジア諸国は輸出主導により経済成長していましたが、外資建ての借入により投資財を購入し、製品を製造して輸出するというパターンでしたから、対外債務残高は増加する一方でした。

もちろん経済規模自体もそれと同じペースで拡大すれば問題ありませんが、当時、中国が開放政策により外資を引き寄せはじめており、徐々に経済成長が緩やかになります。

一方、当時のアメリカのクリントン政権は「強いドル政策」を推進し、ドルが高めに推移するようになります。

ドルと連動するアジア通貨も上昇し、輸出の伸びに更にブレーキがかかることになりました。

ですので、益々、アジアから資金が引き上げられ強いドルに向かうようになり、ドルとの連動を維持することが困難になる訳です。

そのような中、ポンド危機同様ヘッジファンドに自国通貨を売り浴びさせられたタイがついに変動相場制に移行し、一気にバーツ安になったのです。

こうして歴史を振り返ってみると、通貨危機というものは、固定相場制を採用する国において、経済状況によって自国通貨の実質的価値が下落する中で、表面上の価格とのギャップが大きくなることで発生してきたことが分かります。

では、今回のトルコの場合はどうでしょうか?

トルコは変動相場制です。固定相場制の国のように価格維持のために無理をする必要はない訳です。

したがって、今までのトルコリラの価格も過大評価されていたということは考えられません。

過去の通貨危機のように、急速に下がり続けるということも考えにくいのです。

通貨危機が一番問題なのは、一気に通貨の価値が下がり続けることです。

そうなると経済が混乱し手が付けにくくなりますが、徐々に、であれば、日本と同様に、自国通貨安は輸出の促進につながり、デメリットばかりではないのです。

為替危機が金融危機に発展するか?

一方、経済ニュースをみると、欧州の銀行がトルコに債権をもっており、金融危機(欧州銀行の経営悪化)につながる可能性も言及しています。

しかし、世界決済銀行のデータで実態を見てみると、確かにトルコに債権を持っている銀行は欧州銀行が多い(スペイン$809億やフランス$351億など)ですが、それら欧州銀行全体の債権に占めるトルコ債権の割合はたかが知れています(スペインでも全体債権$1兆7,872億の4.5%)

したがって、今回のことで金融危機に広がるとも思えません。

アメリカとの関係悪化も騒がれていますが、2016年のトルコの輸出先の順位は、
1位ドイツ($16.2億)、2位イギリス ($15.2億)、3位イタリア ($8.26億)、4位米国 ($7.69億)、輸入元の順位は1位中国 ($25億)、2位ドイツ($22.4億)、3位ロシア($10.4億)、4位イタリア ($10.3億) 、5位米国($10.3億)で、そもそもトルコはアメリカよりも欧州との関係の強く、輸出入ともに影響は限定的です。

ロシア・中国との関係も含め、世界政治的にはトルコの動向は注目すべきだとは思いますが、世界経済に与える影響は限定的であると私は思います。

さて、では皆さんはトルコショックの行方をどう読みますか?

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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