企業において、業務効率や生産性を上げる方法は数多ありますが、結局のところ、必要となるのは企業に属する『人』の育成です。
どれだけ画期的な方法やシステムができたとしても、最終的にそれらを動かすのが人である以上、人材育成は何より重要な要素になるからです。
では、人材育成に効果的な研修方法とは、どのようなものが挙げられるのでしょうか?
昨今、注目を集めているのが『階層別研修』になります。階層別研修とは、文字通り社員の階層ごとに分けて研修を行うもの。
本記事では、階層別研修の概要からメリット・デメリット、階層別研修を効果的に行うポイントまで詳しくご紹介いたします。
階層別研修の概要と目的
まず、階層別研修を実施する側が、階層別研修とは何かをしっかり把握しておかなければなりません。階層別研修の概要・目的について見ていきましょう。
階層別研修の概要
階層別研修とは、先述したように『社員を階層ごとに分けて研修を行う』ことを指します。研修を行うといっても、社員の立ち位置によって必要となる研修内容は異なります。
極端な例としては、新入社員と管理職クラスの社員で同じ研修をした場合が挙げられるでしょう。
新入社員に合わせれば管理職クラスの社員にとって、研修内容はすでに知っていることばかりになります。一方、管理職クラスの社員に合わせた研修内容では、新入社員にとっては難しすぎるはずです。
このような、ミスマッチを起こさず、それぞれの階層で適切な研修を行えるのが階層別研修なのです。
階層別で研修を行う目的
では、実際に階層別研修を行う目的とは何になるのでしょうか?正しく研修を実施するためにも、階層別研修を行う目的について確認しておきましょう。
大別した場合、以下の2つが目的として挙げられます。
- 現業務に対するスキルの底上げ
- 自ら学ぶ姿勢を身に付けるため
階層別研修では、そのときに行っている業務内容を、より深く理解し業務に対するスキルを底上げすることが第一の目的となります。
特に新入社員・若手社員の場合、OJTや日々の実務から業務のやり方を学ぶだけでは、業務の進め方や考え方が偏りがちです。特定の1人だけから仕事を教わっていた場合、効率の悪いやり方をしていたとしても、気が付きにくくなる懸念があります。
結果的に、業務効率を上げられなかったり、業務のやりがいを見つけられなかったりします。このような事態を避け、業務に必要なスキルを新たに身に付ける方法として、階層別研修は非常に有用なのです。
また、階層別研修で学ぶスキルは一過性のものではありません。業務を行う上で必須のスキルや、別の業務を行う際に必要とされるスキルをも学ぶこともあります。これは、スキルを磨くと同時に、身に付けたスキルで自分に何ができるかを考えさせるためもの。
研修を通じて、自分に足りないものや学ぶべきスキルを自身で考える力を身に付けることこそ、第2の目的となります。
階層別で見る研修の特徴と目的
ここからは、階層の分類と特徴について見ていきましょう。階層ごとで必要となる研修内容にも触れていきます。
基礎知識・ビジネスマナーの教育「新入社員」
階層別研修における1つ目の分類は、入社したばかりの新入社員が挙げられます。新入社員の研修で必要とされるのは、主に以下の2点です。
- 学生から社会人への気持ちの切り替え
- 基本的なビジネスマナーの習得
一番に必要とされるのは、学生気分のままではいられないことを自身で理解することです。併せて身だしなみや挨拶、電話のとり方や名刺交換など、社会人として知っておくべき最低限のマナーを学ぶことになるでしょう。
責任感の底上げと業務の幅を広げる「若手社員」
階層別研修でいう若手社員とは、入社から数年たった新入社員ではないが、まだ若手の社員を含む階層です。若手社員に必要とされる基本的な研修内容は以下の通り。
- ビジネススキルの習得
- 指導・教育力の向上
若手社員になると、ビジネスマナーではなくビジネススキルの習得が基本となります。エクセルやパワーポイントなど、業務を行う上で必要とされるスキルの向上を目指すことになるでしょう。
また、若手であっても、後輩や部下ができることになるため、自身が教育係になったときのために指導力の基本を学ぶことも必要とされます。
チームをまとめるリーダーシップ「中堅社員」
主任、係長、課長など役職が付き始める中堅社員については、該当する社員が多い点が大きな特徴です。規模が大きな企業になれば、中堅社員とひとくくりにすることが難しいケースもあります。
ただ、基本となる研修内容はほぼ同じとなり、以下のような研修内容になる傾向が高くなっています。
- リーダーシップ研修
- マネジメント研修
中堅社員になると、チームリーダーなど社員をまとめる立場になるため、リーダーシップ研修は欠かせないといえるでしょう。また、適切な人員配置、部下のメンタルをケアするためにもマネジメント研修も必須といえます。
なお、マネジメントについては、部下や業務に関わることだけではなく、自身が無理をしすぎないためのセルフマネジメントも重要になります。
経営側の視点を育む「幹部・上級管理職」
部長、幹部など、現場を指揮するというより、人材育成や企業の経営など、全体的なバランスを見る必要がある幹部・上級管理職にも定期的な研修は必要です。
大局を見る必要があるからこそ、以下のような研修が有用になるでしょう。
- 経営戦略
- リスクマネジメント
- 内部統制
幹部・上級管理職になると、業務の案件単位ではなく、企業自体の健全な経営に関するための知識が求められるため、より幅広い研修内容になります。
ここまで触れてきた研修内容は、あくまでも一例です。他にも様々な研修があるため、目的に沿って取捨選択をしていきましょう。
階層別で研修を行うメリット・デメリット
階層別研修を行う目的の一つは、それぞれの現業務におけるスキルや効率を最大限に引き上げることだと紹介しました。
では、実際に階層別研修を行うと、どのようなメリットが期待できるのでしょうか?知っておくべきデメリットと併せて解説していきます。
【メリット】ピンポイントの教育ができる
階層別研修を行うメリットとして挙げられるのは、主に以下の3点になります。
- 業務に必要なスキルを身に付けられる
- 教育コストを抑えられる
- 社員が自身の現況を把握できる
業務に必要なスキルを身に付けられる点は、階層別研修の目的と同じです。特筆すべきメリットとしては、階層ごとで研修を行えるため、一人一人に行う教育より教育コストを大幅に抑えられる点だといえるでしょう。
教育に必要なカリキュラムや、カリキュラムを組むための調査を必要最低限で済ませることが可能です。
また、階層別研修では、複数の社員が同じタイミングで同じ内容の研修を受けます。そのため、周りと比べた際に、自分がどれだけ業務のことを理解できているか、業務に関するスキルがどれだけ習得しているかを客観的に把握できるようになります。
結果的に自身に足りないスキルや、伸ばすべきスキル・才能を見つけることにもつながるでしょう。
【デメリット】受講者のニーズにそぐわない可能性
階層別研修のデメリットはメリットと鏡合わせのような面があります。同じタイミングで複数人の研修が叶えられる反面、人によっては、すでに身に付けているスキルを学ぶ場になることもあるのです。
例えば、新入~若手社員の階層別研修で、エクセルの関数を使いこなせる人が、一からエクセルの使い方を習ってもつまらないと感じるはずです。このように、研修内容が既知の知識しかなかった場合、研修の意味を実感できないことになります。
一方、人によっては研修内容のレベルが高いと感じることも考えられます。個々人に特化した研修ではないからこそ、レベル感が揃わないことがあるのです。
複数人が一度に研修を受ける以上、ある程度は避けられないデメリットといえるでしょう。
階層別研修を効果的に行うポイント
最後は、階層別研修を効果的に行うポイントを解説します。階層別研修に限らず、研修は受けて終わりではありません。しっかり身に付け、業務に反映できる研修になるよう意識しましょう。
研修前に必要なニーズを調査しておく
研修を実施する前に、階層ごとのニーズを調査しておくことが大切です。実際の業務で必要とされる知識やスキルは、業界だけではなく、その時々の時世によっても異なるためです。
また、事前にニーズを把握しておけば、階層に分けた後、ニーズごとに研修を受けるグループを分けることも可能になります。事前のひと手間を怠らないことで、先述した研修内容と社員のニーズが合わないという事態を避けられるでしょう。
アウトプットできるシーンを用意する
研修後に、習った知識やスキルをアウトプットできる場を積極的に設けることも重要なポイントです。
階層別研修に限らず、知識やスキルはインプットしただけでは、すぐに業務に反映できるとは限りません。そもそも、習った知識やスキルは、何度も繰り返し使ってこそ身に付くものです。
業務に反映できそうな知識やスキルは、研修後すぐに取り入れる。業務に取り入れにくい場合は、別途アウトプットの機会を設けることで、研修内容を自身の力に落とし込めるはずです。
まとめ
階層別研修とは、文字通り社員を『新入社員』『若手社員』『中堅社員』『上級管理職・幹部』の4つに分け、それぞれで研修を行う方法を指します。
自身が属する階層ごとで研修を受けられるため、必要とされる知識やスキルを効率よく学べる点が大きなメリットです。また、教育コストを大幅に抑えられるため、費用対効果も高いといえるでしょう。
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