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DXの時代にSDGsが経営に問うもの

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こんにちは!栗原誠一郎です。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の時代?

今、デジタルトランスフォーメーション(DX)は経営者の合言葉になっていますが、このDXの意味を皆さんはどのように捉えているでしょうか?
「デジタルを利用した変革」程度の認識でいるとすれば、正直物足りません。

経済産業省が2018年12月にまとめた「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」では、更に具体的に、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

しかし、確かにこの定義は詳しくはなっていますが、結局、何をすれば良いのかが見えてきません。

結局、技術は手段でしかない

もともと「DX」の概念は、スウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したものでそれは「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」というものです。
この定義において技術的な説明は「ITの浸透」の部分でしかありません。

結局、大切なのは「人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」ことなのです。

技術の変革が進むと言われ、企業はその新しい技術を如何に修得するかということにとらわれ過ぎているように思います。

確かに、ある程度新しい技術の概要(いままでの技術でできなかったどんなことを可能にするのか?)は知る必要はあるでしょう。

しかし、もっと大切なものは「人々(=顧客や社会)のどんな問題を解決するか?」という方向性ではないでしょうか?
それが決まっていなければ、技術だけを修得しても何にもならないし、そもそもどのような技術を修得すれば良いかもわからないでしょう。

社会の価値観の流れを洞察する

「人々(=顧客や社会)のどんな問題を解決するか?」と考えた時、既にその答えを明確にもっているならそれでよいですが、実際は多くの企業で明確になっていないように思います。

どちらかと言えば、自社の既存の強み(技術・販売網など)を生かして何かできないか?という発想になります。

しかし、それではどうしても既存の概念(今までの経験の中で作り上げた常識)に囚われてしまい、新しい発想(イノベーション)は中々生まれません。

そもそも自社の既存の強み「だけ」で解決できることであれば、ある意味既にやっている訳です。
自社の強みだけでなく、他社の強みも合わせて取り組むからこそ、新しく、より大きな課題を解決できるのです。

あくまでも目的(人々のどんな問題を解決するか?)が先で、手段(自社のどういう強味を活かすか、どういう他社の強みを組み合わせれば良いのか?)は後なのです。
その際にヒントになるのは、技術の流れではなく、社会の価値観の流れでしょう。

その意味で、SDGs(エスディージーズ)は我々企業が取り組むべき課題を示唆してくれるでしょう。

昨年からDXと同じくらい経営のキーワードになってきている、このSDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の事で、2015年に国連サミットで採択された、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの15年間で達成を目指す国際目標で、全部で17の目標と169のターゲットによって構成されています。

SDGsは「建て前」か?

このSDGsが経営課題として認識される以前、2010年頃から同じく経営課題として注目されるようになった言葉にCSR(Corporate Social Responsibility)企業の社会的責任があります。

CSRは本来もっと広い概念のものでしたが、注目され始めた頃から企業不祥事が明るみにでることが多くなり、遵法精神など、「企業が最低限守るべきもの」というような受身的意味合い強くなってしまいました。

したがって、企業経営者の中には本業+αとしてこのCSRを捉えている場合が多いのではないでしょうか?

その点、このSDGsは本業そのものにおける行動を求めるものであり、更に、その取り組みの有無が機関投資家の投資判断基準に完全に組みこまれてきている点でも今までのCSRとは全く意味合いが異なるといって良いでしょう。

世の中には「本音」と「建て前」が存在しますが、お金は「本音」にしたがって動きます。

この1月世界最大の資産運用会社である米ブラック・ロック社が、投資する石炭関連会社について、2020年半ばまでに売り上げの25%以上を石炭から得ている会社への投資をやめるとついに表明しました。

この影響は相当大きなものになるでしょう。SDGsの流れが「建て前」ではないことがよりはっきりしてくることでしょう。

もちろん、これは上場企業だけの話には留まらず、上場企業と取引をする非上場企業もSDGsへの取り組みが求められてくることになります。ことが本業の話ですから、様子見していてはとても間に合わないでしょう。

しかし、上述したように、そもそもSDGsはやらされ意識でやるものではないし、やらされ意識でできるものでもないでしょう。
SDGsの各目標やターゲットの内容から、自社が本業として取り組むべき「大義」(=目的)を見出す。そのチャンスがそこにあるのです。

企業の「中」における変化

一方、社会の価値観の変化は、企業の「外」だけの話ではなく、企業の「中」にも影響を及ぼします。そしてその変化は当然若い社員から表面化します。

例えば、地元との繋がりや家族との繋がりを重視し、物質的欲望が乏しい(ように見える)。したがって、転勤を嫌がり、給料が多少減っても地域限定社員を選ぶ。そんな話が各企業で発生しています。

このような現象を今までの常識から判断して、ただ嘆いていても社会の価値観の流れ(夫婦共働き社員、一人っ子社員の増加といった社会構造変化も含む)は簡単には変わりません。
嘆くのではなく、そこにある「人々の抱える問題」(SDGs目標⑧:「働きがいも、経済成長も」)をどうすれば解決できるか考える必要があるです。(IT技術を使って内勤営業を高度化し、商物も分離する。居住地を変えなくても、様々な取引先を経験できる方法を考え試してみる等々)

また最近はDXの流れもあり、特定分野の技術をもった人材を新卒も含め高給で採用する企業もでてきています。こうした社員を採用する場合、「長期育成型の基幹社員」とは異なる雇用体系(ジョブ型雇用)が必要になるケースも出てきます。

昔と異なり企業の中における長期育成型基幹社員の比率は低下してきています。それ以外の社員が少なければあくまでも例外として扱えば良かったのですが、今後は例外とは言えない位に、社員の多様性が更に高まるでしょうし、多様性を高めていかなければ、企業全体として発展していくことは難しくなるでしょう。

働き方や処遇の仕方が異なる社員の力を統合して企業としての成果がでるようにするということは、上述した「働きがいも、経済成長も」というSDGsのゴールの追求に他ならないのです。

何を解決したいかを明確にして、試行錯誤を繰り返す

もちろん新規事業にしろ、社内のマネージメントにしろ、色々考えて実際に取り組み始めても簡単に上手くいくことはありません。だから、多くの企業は嘆くだけで実際には中々取り組まないことが多いのです。

しかし、そもそもちょっとやって上手くいくような事であれば、課題として存在するわけがありません。
何を解決したいのかを考えて、とにかくやると決めてスタートさせる。そこから先は試行錯誤の繰り返しでしかないのです。

先日の記事でも紹介しましたが、人間の脳は自分の命を守るために、新しい事を避けるようにプログラムが組み込まれています。

そして、人生経験を積むほどに、より保守的になり、新しい事に取り組まなくなります。新しい事にチャレンジできない大人のチンパンジーになるのではなく、進化した人間としての各企業、そして各企業人には是非、一歩踏み出して欲しいと思います。

さて皆さんは、DXやSDGsを、そして社会の価値観の流れをどのように捉えていますか?

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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