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「メディア」の変化とその経営的意味

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「メディア」の変化の実態

メディアの定義

メディア (media)とは、媒体、媒質、伝達手段、中間などを指します。
ここで使うメディアとは情報伝達媒体を意味します。

「情報伝達媒体」としてのメディアは、株式会社電通が毎年発表している「日本の広告費」によれば、以下の3つに分類されます。

  • マスコミ四媒体(新聞、TV、雑誌、ラジオ)
  • プロモーション・メディア(屋外広告、交通広告、折込、DM(ダイレクト・メール)、フリーペーパー、POP、イベント・展示・映像ほか)
  • インターネット

メディアの変化の実態

マスコミ4媒体とプロモーション・メディアの広告費は社会状況に応じて増減する一方、インターネット広告費は社会状況に関係なく毎年増加、今後も増加し続けると予想されています。

つまり、リーマンショックや東日本大震災、消費増税による買い控え、コロナ過で、マスコミ4媒体とプロモーション・メディアの広告費が前年比マイナスになった年でも、インターネット広告費は伸び続けています。

逆にこれまでメディアの主役であったマスコミ四媒体の広告費は2015年にピークアウトしたものと予想され、2019年にはインターネット広告費がTVCMを上回りました。

①主要メディアの流れ

  • 新聞
    幕末から明治時代に広まり、高度経済成長期の1966年に3000万部台に乗り、その後は1990年代末の5000万部超まで拡大しピークアウトしています。
  • TV
    1953年2月日本初地上波テレビ放送が開始されました。
  • インターネット
    1995年頃から、インターネットが一般に普及し、インターネット広告費は1996年から一貫して成長しています。
  • SNS
    iPhoneが発売された2007年以降、急速に普及したスマートフォンは、無料電話機能付きのSNS「LINE」の登場と相まって、SNSでのコミュニケーションが常態化しています。

また、スマホの浸透とともにインターネット広告費はここ10年で3倍に増加しました。

以下の広告費の数値・傾向は株式会社電通が毎年2月に発表している「日本の広告費」を参考にしています。

②今日のメディア状況

  • 2020年の日本の総広告費61,594億円
    2020年3月コロナショックで前年比88.8%。これは東日本大震災(2011年)以来9年ぶりのマイナスです。また、リーマンショックの影響を受けた2009年に次ぐマイナス幅でもあります。
  • 総広告費におけるメディア3分類の割合
    ・マスコミ四媒体36.6%(地上波TV25%)
    ・プロモーション・メディア27.2%
    ・インターネット36.2%
  • 日本の総広告費の主な出来事

毎年、名目国内総生産(GDP)の1.1%以上~1.4%未満で総広告費は推移しています。

2009年(リーマンショックの翌年)インターネット広告費が新聞広告費(6,739億円)を上回りました。

2010年から2020年にかけて、スマホの普及とともにインターネット広告費は3倍に。2015年マスコミ四媒体の広告費がピークアウトしてきました。

2019年インターネット広告費がTVCM(19,123地上波TV17,848)を上回りました。

③インターネット広告費の傾向
2019年にインターネット広告費がTVCMを上回ったことで、メディアの主役がマスコミ4媒体からインターネットに移動。
その原因がスマートフォンであることはその普及とともに広告費が3倍に増えたことで明白です。

運用型広告が8割を超え、広告会社から個々の広告主に主導権が移動しています。

動画広告の伸びが大きく、この要因もスマートフォンです。

インターネット広告費は、1996年から一貫して成長傾向にあります。スマートフォンの浸透とともに2010年から2020年にかけて3倍に増加しました。

  • インターネット広告費は、1996年から一貫して成長傾向にあります。スマートフォンの浸透とともに2010年から2020年にかけて3倍に増加しました。
  • 運用型広告8割超え
    運用型広告とは、広告主が、配信コンテンツやターゲット、予算などをリアルタイムで変更し、広告効果を最大化できるWeb広告です。運用型広告はインターネット広告媒体費全体の8割超えの1兆4558億円になります。
  • ソーシャル広告3割超え
    5,687億円で、「SNS系」が2488億円で最大となり、「動画共有系」が前年度の1139億円から1585億円と大きく伸長しました。
  • ビデオ(動画)広告2割超え
    前年比121.3%の3,862億円と伸長しています。動画広告のデバイスは8割以上がスマートフォンです。

「メディア」の変化は経営的にどのような意味をもつのか?

公的統計白書が捉えたメディアの変化の意味

①ユーザー個々人のコミュニケーションが容易かつ多様に
「インターネットと携帯電話の発展・普及が「個対個」のコミュニケーションを容易にするとともに、音声のみならず、文字や画像、動画といった多彩な手段による直感的なコミュニケーションを可能にした。」

出典:令和元年版「情報通信白書」総務省第1部2(3)「変化したメディア環境と社会への影響」

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd102300.html

②ソーシャルメディアの登場で売上拡大機会と収益性向上機会の到来

『ソーシャルメディアサービスによって得られる効果は、「営業力・販売力の強化」、「顧客満足度の向上・新規顧客・新市場開拓」、「売上の拡大」といった自社ホームページの活用により得られる効果と同様の効果を得ることができる。

さらに社内の情報活用の活発化やプロセス合理化、コスト削減といった効果もあり、収益力向上に寄与する可能性があることが分かる。』

出典:2016年中小企業白書第2部第2章第2節「自社ホームページ・ソーシャルメディアサービスによる効果」

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/h28/index.html

③デジタル・プラットフォーマーの台頭

「現在、インターネット上では、経済活動を含む様々な活動が行われているが、これらのネット上の広範な活動の基盤を提供する者として、デジタル・プラットフォーマーが、世界的に非常に大きな存在となっている。デジタル・プラットフォーマーは、スマートフォンなどのモバイル端末の普及と時期を同じくして急速に成長している」

出典:2019年中小企業白書コラム3-1-1「デジタル・プラットフォーマーの台頭」

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2019/2019/index.html

「メディア」の変化は経営的にどのような意味をもつか

メディア環境の変化は、スマートフォン普及による主体的参加的ユーザーの誕生と個人に紐づけられたデータをデジタル・プラットフォーマーが整理したことで加速しました。それは以下のような経営的意味をもたらしています。

  • ユーザー自身・広告主自身がメディアの発信者に(オウンドメディアとアーンドメディアの誕生)
    スマートフォンを通じたSNSの浸透により、企業とユーザー、ユーザー同士の双方向コミュニケーションが容易かつ常態化したため、メディアに能動的主体的に参加するユーザー・広告主が誕生しました。
  • 低コストで大企業と同じ又はそれ以上の効果のマーケティングが可能に
    SNSや動画共有サイトなど個性的なデジタルメディアの出現は、メディアごとの特徴に応じた異なるマーケティング施策を可能にし、様々な顧客体験を提供できるようなりました。

    このため、これまで以上に商品・サービスに関する理解を顧客に促すことが可能になり、それだけ売上機会が増えているといえます(クロスメディア戦略)。

    個人に紐づけられたデータがデジタル・プラットフォーマーにより整理され、低コストかつ大量に利用可能になったため、費用対効果のある施策が広告会社を介さず広告主自身で選択できるようになっています。

  • ユーザーの囲い込みや共創が容易に
    インターネットというチャネルを通じて、ユーザーとの信頼関係を醸成し、継続的な囲い込み(サブスクリプション、定期購読など)や、ユーザーと共創した新たなコンテンツ開発も可能になっています。
  • スマートフォンとどう向き合うかがこれからの企業の成長のカギといえます。

おわりに

2016年中小企業白書が言うように、『メディア』の変化は中堅中小企業にとって売上拡大の機会と収益性向上の機会の到来と捉えるべきです。

中堅中小企業でも大企業に負けないマーケティング施策(顧客のゲット)が可能になり、ユーザーとの新しい関係(顧客のキープ・グロー)も築けるようになっているからです。

第3回で取り上げている2つの事例はメディアの変化を捉え、成功を収めています。第1章の事例は顧客をゲットする施策を、第2章の事例は顧客をキープ・グローする施策を展開しているので続けて読んで頂ければ大変参考になります。

その具体的手法は第2回で理論的に整理しています。

著者:maru

2011年から中小企業診断士として経営コンサルタントをはじめる。
通常の企業経営コンサルから、無農薬農業経営、介護施設運営等の幅広い業種に関わり、
エンターテインメント施設の開業のための市場調査から、債務超過企業の事業デューデリジェンスまで、企業成長段階に応じたコンサルタントを行っています。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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