こんにちは!栗原誠一郎です。
大変、長らくお待たせいたしました。インドネシアに関する記事の最終回です。
大統領選スタート
インドネシアは2019年4月に大統領選挙が行われます。
その大統領選への立候補が8月10日に締め切られ、現大統領であるジョコ・ウィドド氏と前回2014年の大統領選挙でも争ったプラボウォ・スビヤント氏の二人が立候補しました。
選挙前は改革が停滞する?
前回記事でも書いた、インドネシアに駐在されている人達と話をしていると、「来年は大統領選のため今は新しい投資はしにくい」とのことでした。
実際、前回、大統領選のあった2014年、当時のユドヨノ政権は選挙対策として外資規制の強化を打ち出しました。
結果としては、任期満了で大統領を退任するユドヨノ氏が支援したスビヤント氏は選挙に負け、ウィドド氏が大統領になりました。
ウィドド氏はそれまでの政権とは異なり外資導入による経済開発を進めてきましたが、前回の大統領選で「インドネシアは外国に搾取されており、毎年1千兆ルピアが流出しており、これを自分が取り戻す」と言っていたスビヤント氏も得票率は47%あり(ウィドド氏が53%)、そのスビヤント氏と今回の大統領選挙も戦う訳ですから、外資参入の障壁となるような政策が打ち出されるのではと疑われもします。
そもそもウィドド氏が負ければ、外資に対する締め付けが厳しくなるのは確実です。
したがって、新規投資をためらうのも無理はありません。
華人に対する反感か、大国のプライドか
では、インドネシア国民は本当に外資導入による経済開発に反対しているのでしょうか?
外資導入というと、先進国からの投資というイメージを持つかもしれませんが、実際は近年中国からの投資が相当増えています。
インドネシアでは昔から華人(中国にルーツをもつインドネシア人)が経済上の力を握っていたため、華人に対する反感が強く、国内が混乱し暴動が起きると華人の虐殺事件などが起きています。
(現地駐在員曰く、だから華人のお金持ちは港の近くに居住して、直ぐに国外に脱出できるようにしているとのこと。)
中国からの投資が増えることは、中国との関係で強みを持つ華人の繁栄、貧富の差の拡大というイメージから外資導入に肯定的ではないという要素もあるでしょう。
また、そもそも外資による助けは要らないという考え方もあるようです。
インドネシアに駐在されている人達のインドネシア人に対する印象は、非常に穏やかだが、プライドは非常に高く、プライドを傷つけるような言動をすると根に持たれるとのこと。
そのプライドのベースは「大国意識」だとのこと。
確かに、人口は世界4位、購買力平価GDP(USドル)世界ランキングでは8位、国土も広く、石油や天然ガスといった資源や食糧もおおむね自国で調達できるわけですから、「大国意識」を持つのも無理はありません。
そして、なんといっても、総人口に占める生産年齢(15歳以上65歳未満)人口比率の上昇が続く、いわゆる人口ボーナス期がこれから約40年続き、ある意味、何もしなくても一定の経済成長が見込めるのです。
資本主義社会にどっぷり浸かっていると、もっと発展成長できるのに、何故、外資導入に否定的なんだろう、そんなことをしていたら他のアセアン諸国に負けるのになどと思いがちです、
しかし、インドネシアの人達からすれば、一定程度での長期的な成長が見通せるのに、なぜ無理をしなければならないのか?という感覚なのかもしれませんね。
「多様性の中の統一」の行方
3回にわたり、インドネシアについて考えてきましたが、2019年の大統領選は今後のインドネシアを考える意味でも重要な節目になると改めて思いました。
ウィドド氏の対抗馬であるスビヤント氏は、元軍人で、欧米的民主主義には否定的な考えをもっている人物です。
スビヤント氏が大統領になれば、外資規制が強化されるだけでなく、近年、アジア諸国で起きている独裁化が進む可能性もありますし、イスラム急進派との繋がりも強く、宗教的締め付けが強くなる可能性もあります。
誰が政権を担うにしろ、インドネシアの国是である「多様性の中の統一」という価値観が失われないことを祈るばかりです。
さて、インドネシアについては、今回の記事が最後です。
現在、次に視察する国を選定中ですので、またその国の記事を楽しみにして頂ければ幸いです。
前回までのインドネシアに関する記事はこちら
・「多様性の中の統一」
・「統制と自由」
・「統制と自由②」