前回まで、POSシステムの基本的な機能や使い方、勤怠管理や受発注・在庫管理、オーダーリングシステムなどの応用的な使い方をご紹介しましたが、今回はいよいよ、実際に導入を決定する際に検討すべき項目を見ていきます。
対象分野の選定
先ず、自社の経営計画に沿って、導入が必要な業務分野を決めていきましょう。その際には、大まかに、次の手順で導入すべきです。
①先ずは自社の問題点や課題を洗いざらい出す。
POSシステムに関係なさそうというものも、全て出してみることがポイ ントです。意外にPOSシステムで解決できるものもあります。
②その中で重要度や緊急度が高い課題を選び出す。
重要度、緊急度を点数化し、比較するとスッキリするでしょう。
③選ばれた課題の中から、POSシステムやその応用システムで解決できるテーマを選ぶ。
この時点から、各メーカーやソフトウェア会社等に資料請求等を行います。
④必要な機能を列挙する。
⑤各メーカーから提案してもらう。
システムの選定にあたっては、関連する部署の代表も交えて検討しましょう。選定にあたっては、情報システム部門が窓口になることが多いと思われますが、技術的視点だけではなく、運用部門・利用部門の意見が重要です。
導入効果の判定方法
各メーカーから見積と提案書が提出されたら、金額面と性能面の両面から、POSシステムを評価していきましょう。
費用対効果
設備投資をするわけですから、効果を金額面からも把握すべきです。その際、単に費用の安い機種という考え方もありますが、掛けた費用に対して、どのくらいのメリットがあるかということを考えるべきです。
つまり、以下のような指標を計算し、比較してみると良いでしょう。
①費用対効果額 = コストダウンできる額 - 費用
②投資利益率(%) = 利益増加額(コストダウン額) ÷ 費用
③回収期間(年) = 総費用 ÷ 年間の利益増加額(コストダウン額)
性能面評価
金額が折り合っても、使い勝手が悪かったり、すぐ陳腐化したりするようでは、投資の意味がありません。性能面でも慎重に評価しましょう。
①運用性
POSシステムは、現場の生産性を上げるとともに、データ分析機能を活用し、戦略を立案することも出来る、多様な機能を持った機器ですが、あくまでも基本機能は会計機能です。
現場の従業員にとって、まず、基本機能が安定的に使いやすいことが前提条件です。色々な機能が搭載できるからと言って、POSターミナル自体に過剰に機能を集中させるのは、好ましくありません。
POSターミナル本体が故障した場合、本来最も重要な会計業務が出来なくなるだけでなく、他の業務も一気にストップしてしまうからです。
②保守性
さらに、POSシステムは会計業務中心として、営業中は故障が許されない機器です。
機械ものですから、故障を起こすこともありますが、その際もスピーディーに修理や代替機器の手配が出来るか?夜間・休日の保守体制があるかどうかなども、メーカーを選定する上で、非常に重要なポイントです。
③拡張性
使いやすさと、故障の少なさは最低条件ですが、次に重要なポイントというと、色々な業務が可能であることも重要です。
全てのオプションサービスを利用する必要はありませんが、自社にとって将来必要になるであろうと思われる機能を追加できるかどうかは、チェックしておきましょう。
④汎用性
POSシステムにおける汎用性とは、主にデータの入出力が可能かという点や、カードリーダーなどの端末機器が接続可能かという点です。
特にデータの出力はポイントになります。どんなに優れたPOSシステムでも、自社仕様で一から作らない限り、その企業のニーズに合わない点は出てきます。
しかし、得られたデータを汎用的なデータ形式(CSVやテキスト形式)で出力できれば、表計算ソフトなどで加工し、自社のニーズに合った分析が出来ます。
まれに、入出力は一切させないという機種もありますので。注意が必要です。
支払方法の検討
POSシステムは、一般的に高額な機器なため、現金で買い取りということはしない方が良いですが、現金以外にも色々と支払方法はあります。自社の状況に応じて検討しましょう。
リース
最も多い支払方法です。毎月定額で利用できるため、費用化しやすく、5年ごとに最新の機器を導入できるのも利点です。
初めて利用する際には、リース会社に対して過去三期分の決算書を提出して、審査を受ける必要があります。
比較的審査や決済が早く、導入をスムーズに行うことが出来ます。
月額
POSシステムには、月額レンタルの仕組みも普及しています。機器は購入せず利用料だけを払うタイプです。
しかし、多くの場合、店舗や商品情報のセットアップのために、数万円程度の初期費用がかかる場合があります。
レンタルの場合、保守費用を含んでいるのが通常ですが、含まれているかきちんと確認しておきましょう。
保守料が別途かかる場合、買い取りやリースよりも高額になるケースもあります。
補助金や低利融資の活用
POSシステムを導入するにあたって、国や都道府県の実施する補助金や低利融資を活用する方法もあります。
いずれも申請書類を提出し、審査を受けて実施されます。補助金の場合は一旦自社で支払いを行った後になります。
民間に比べて有利な条件で資金調達出来ますが、多くの申請書類を提出したり、決済に時間がかかったりするのが難点です。
まとめ
POSシステムは、流通・飲食・サービス業を中心として、売上分析や受発注・在庫管理・勤怠管理・オーダーエントリーシステムと、非常に多くの分野で活用できる仕組みですが、費用もそれなりに高額です。
ぜひ、慎重に費用対効果を考えながら、積極的に導入を図り、生産性の向上に活かしていきたいものです。
著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。