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DXに取り組む中堅・中小企業の対応方向

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DXに対する企業の取り組みの実態

まず、DXに対する企業の考え方、取り組みの実態を見てみましょう。

DXの影響度

IPA情報処理推進機構が2019年に公開した、「デジタルトランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」によると、コンピュータを活用しているユーザー企業の認識の変化として、DXが「既に影響が出ている、あるいは 破壊的な影響をもたらす可能性がある」と答えた企業の比率は、2016年で24%、2017年に47.3%、2018には48.5%と、近年急増しています。

また、デジタル技術の普及による自社への影響について、約6割の企業が、「既存ビジネスの変革や新ビジネスの創出の必要性を非常に強く感じている」と回答しています。

DXの認知度、取り組み度合い

一方、DXという言葉の認知度としては、社内で使用しているという企業の比率が約3分の1に留まり、DXに取り組んでいる企業に対してその具体的な取り組み内容を質問した結果、最も多い取り組みは「業務の効率化による生産性の向上」78.3%であり、DXの本来の目的である「新規製品・サービスの創出」は47.8%と半数程度となっています。

さらに、IPA情報処理推進機構が2020年に発表した「DXの実現に向けた取り組み」によると、DXに対する取り組み度合いが、大企業も中堅企業も足踏み状態であると結論付けています。

つまり、企業にとってDXは未だ全体の認識は遅れており、その対応も本来の意味の「ビジネス革新」にまでは至っていないようです。しかし一方、認識のある企業には危機感が強まっており、取り組みに格差があることがうかがえます。

さらに、企業規模による格差は余りなく、そういった意味では、取り組み次第では中堅中小規模企業においては充分にチャンスがあると言えます。

【参考】IPA情報処理推進機構
デジタルトランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査https://www.ipa.go.jp/ikc/reports/20190412.html

【参考】経済産業省 デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドラインhttps://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf

【参考】IPA情報処理推進機構 DXの実現に向けた取り組みhttps://www.ipa.go.jp/files/000080851.pdf

【参考】株式会社富士キメラ総研2018 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望
https://www.fcr.co.jp/report/182q01.htm

DX対する中堅中小企業の対応方向

このように、近年特に注目を集めているDXですが、中堅中小企業としてはどういった取り組みが可能でしょうか?二つの方向で考えてみたいと思います。

DX技術を活用する方向

クラウド、IoT、ビックデータ、AR・VR、フィンテック、AIなど、DXを実行するための基礎技術は、進行しながらも、多くの分野で成果を出し始めています。その点、現在の業務を改革するためのツールとして利用することは、どんどん行うべきです。DXを基礎技術とする時代は、もうすぐそこまで来ています。

自らDX活用ビジネスモデルを生み出す方向

一方、自社でDX技術を活用したビジネスモデルを生み出すチャレンジもしていきたいものです。DXは、大企業や伝統的な産業の老舗企業であっても、あっという間にその産業構造まで変えようとしています。

DXによるビジネスモデルを生み出すための戦略方向

中堅中小企業にとって、現実的には先ずは既存のDX技術を活用し始めることが優先事項でしょう。しかし、同時に大切なことは、自らが生み出す活動も極めて重要です。では、自らが生み出すための方向性には、どんなものがあるのでしょうか?

自社開発

経営資源に限界のある中堅中小企業ですが、デジタル技術の世界では大規模な工場や設備は必要ありません。自社や自社の所属する業界で困っている「コト」をデジタル技術で解決できないか?ということから始めていきましょう。

模倣

既に浸透しつつあるDXモデルをまねるということも、有効な戦略のひとつです。現実にはウーバーにヒントを得て、自社でタクシーを呼び出すアプリを開発する事例も出始めています。既に成功事例を模倣することは、研究開発費を掛けずに成功の可能性を高められるため、経営資源に乏しい企業でもチャレンジしやすいものです。しかし、知的所有権に配慮しながら進める必要があります。

協業

自社で活用できる、あるいは逆に脅威になる技術を持つ企業と協力するという戦略もあります。そのためには、いち早くそういった企業を見つけ、早期にアプローチすることが求められます。そのためには、日頃からDX技術動向にアンテナを張っておく必要があります。その際、大企業にはない人的魅力を活用したアプローチが強みになるでしょう。

M&A

DX技術で新しいビジネスモデルを開発する企業は、スタートアップやベンチャー企業によく見られます。そういった企業は先進的技術を持つものの、多くの場合資金不足に陥っています。ある程度の体力のある中堅企業に限定されますが、スピーディーに有効な技術を取り込むためには、資本参加も良いでしょう。

まとめ

企業のDXに対する取り組みの現状、それを踏まえて中堅中小企業は、DXに対してどういった取り組みをしたら良いかをお話してきましたが、いかがだったでしょうか?DXは未だ認識は乏しく、大企業との格差は余り開いていないことから、中堅中小企業にとっても、チャンスがあるテーマであると言えます。

現実的には成果を出し始めているDXの活用から始めるべきですが、ぜひ自ら「コト」に着目したビジネスモデルそのもの立案も検討していきましょう。

DXは、デジタル技術を使い、ビジネスモデルの本質である困っている「コト」を抜本的に解決できることに、素晴らしさと恐ろしさを持っています。

本来、ビジネスとは、その中核のニーズに目を向けて生み出していくべきですが、私たちはつい従来のビジネス手法をベースに考えがちです。DXはその本来あるべき方向を、私達に教えてくれているのです。

著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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