インサイドセールスを効果的に実行するための各種ツールについてご紹介していきます。
今回は、インサイドセールスの出発点となるMA(マーケティングオートメーション)というツールです。MAとは何か?その概要や求められる理由、導入のポイントなどについて見ていきます。
MA(マーケティングオートメーション)とは何か?
MAとは、一言でいうと、「見込み客を獲得する活動を自動化できるツール」ということが言えます。インサイドセールスの中では、出発点という位置づけです。
主にクラウド型のシステムを利用して、見込み客の獲得や、その活動状況を関係者で共有することが出来ます。
MAの概要
MAは主にマーケティング部門のスタッフが、以下の業務を行うために活用します。
見込み客(リード)の発見
MAでは、展示会や問い合わせ電話やメール、資料請求、セミナーの開催などを通じて、最初の顧客情報を収集します。
見込み客(リード)の育成
ファーストコンタクトがあった顧客に対して、対面での商談や購入決定に向けて、動機付けを図っていくステップです。
コンタクトの内容や顧客の反応、タイミングに応じて、セミナーの案内や資料の送付などを行い、顧客との関係性を高めていきます。
そして、充分に顧客の購買意欲が高まった時点で、フィールドセールス部隊に引き継ぎ、商談をクロージングしていきます。
マーケティング施策の効果測定
MAにはスコア機能が搭載されています。例えば、自社サイトを訪れれば+3点、資料請求すれば+5点、メールを開けば+2点など、マーケティング施策の効果をスコア化します。
そのことで、顧客別にどの程度の受注確率があるかを数値化することが出来ます。
今、MAが求められる理由
チャンスロスを削減
従来は、見込み客獲得から育成、商談、アフターフォローまでの営業行為を、一人の営業パーソンが行うことが多くありました。
しかし、営業活動のどこかのステップで長期化したり、トラブルが発生したりすると、その他の活動が出来なくなります。
特に、見込み客(リード)の獲得や育成が滞れば、常に新規開拓のハードな営業からトライしなくてはならなくなり、受注確率も低下していきます。
営業の属人化を防止
トップセールスパーソンは、会社にとって宝ですが、その人が退社すれば、一気に売上が低迷します。場合によっては見込み客そのものも他社に持っていかれることもあるでしょう。
売上を着実に向上させていくためには、セールスのノウハウは共有化されなくてはなりません。その入り口の部分を可能にしたのが、マーケティングオートメーションです。
MA導入のポイント
BtoBかBtoCか?
対象顧客の種類によっては、MAツールの特性が分かれます。
BtoB向けの場合、見込み客数も限定的なためデータ量は気にしなくても良いでしょう。
しかし、販売単価が比較的高額になり、商談失敗のダメージが大きいため、タイムリーで慎重なアプローチが出来、情報を常に関係者が共有できる仕組みが求められます。
反対にBtoCの場合、見込み客が膨大になるため、データサイズに余裕を持ったシステムが必要です。
さらに通販サイトや自社HP、店舗など、顧客との多くの接点が発生するのがBtoC向けの特徴です。その接点ごとに顧客データを収集できる仕組みが必要です。
既存システムとの連動性
既に稼働している顧客管理システムやWebサイトとの連動が必要です。
既存のシステムと顧客データの同期を図るために再入力などの多重業務は、極力排除したいものです。
特にBtoC向けのMAでは、閲覧履歴や購入履歴に応じてタイムリーにクーポンを発行したり、セールを行ったりする必要があるため、特にデータのタイムリーな更新は最重要です。
自社目標に合致しているかどうか
導入を検討しているMAが、自社の顧客像(ペルソナ)に合っているか、顧客の購買行動パターンに即しているかは、先ず検討する必要があります。
顧客の属性が違えばアプローチ方法も違うため、機能が活かせません。
MAの導入事例
株式会社パソナ「転職成功数が昨年対比170%に」
人材紹介サービスのパソナでは、売り手市場によって求職者の新規獲得が困難になる状況を打破するため、求職者へのリテンション強化を目的にMAツールを導入しました。
すぐには転職活動を行う予定のない求職者に対する長期のフォローをMAツールで自動化し、求職者の意識の変化に応じたアプローチを行いました。
その結果、登録から1ヵ月以上経過した求職者との面談設定率が、昨年対比150%を達成。面談から3ヵ月以上経過したケースの転職成功数は、昨年対比170%を実現しました。
株式会社ビープラウド「新規有料化会員120%を達成」
ITシステム開発事業、プログラミング教育事業を展開するビープラウドでは、プログラム言語のオンライン学習サービスの認知度アップを図るためにMAを導入しました。
専任の営業職がおらず、見込み顧客獲得の仕組み全くなかったため、コンサルタントの助言も受けながら、メールアドレス取得から優良顧客になるまでの顧客の状態変化をマップに作成し、それに基づき収益サイクルモデルを構築しました。
結果として、MAによって見込み顧客獲得と育成のマーケティング体制を構築し、新規有料化会員120%を達成しました。
【参考】MA(マーケティングオートメーション)とは?基礎知識や事例を紹介
まとめ
MAとは何か?その概要や求められる理由、導入のポイントなどについてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
MAはインサイドセールスの入り口として、いかに重要なものであるかをご理解いただけたと思います。
見込み客(リード)を漏らさず効果的に収集・育成するためのツールとして、MAは今後も多くの企業で導入が進むことでしょう。
著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。