部下に限らず人のやる気を高め、モチベーションを上げるには『褒める』ことが有用です。しかし、人の褒め方にはコツがあることをご存じでしょうか。
安易に『褒め』を多用すると、モチベーションを上げるどころか、部下の増長を招いてしまう恐れもあります。しかし、昨今のマネジメントでは、厳しく叱るより『褒めて伸ばす』方法が主流となっていることも事実です。
では実際のところ、どのように部下を褒め、やる気を高めていけばよいのでしょうか。本記事では、部下の上手な褒め方・モチベーションを上げるためのコツや注意点について解説いたします。
上司が知っておくべき『褒める』ことと『甘やかし』の違い
部下の上手な褒め方を確認する前に、まず前提となる『褒める』とは、どのようなことを指すのかを把握しておきましょう。
『褒め』と『甘やかし』の違いは、基本的に部下の成長を促すための言動であるかがポイントになります。具体的には『褒め』は部下の特性や仕事内容を把握した上で、部下本人を認め背中を押すための言葉です。
一方、『甘やかし』は、部下の成長を鑑みないお世辞や、上司が楽になるための言葉だといえます。
「部下に新しい仕事をやらせるより、自分でやった方が早い」
「優しい言葉をかけておけば機嫌よく仕事をするだろう」
上記のような気持ちから出る言葉が甘やかしです。
実際問題、若手の育成は時間も労力もかかる大変な仕事です。部下の実力を測りながら、堅実にできる仕事や実力より少し難易度の高い仕事を振るなど、日々の采配だけでも頭が痛いと感じる場面も多いでしょう。
だからといってただ甘やかすだけでは、部下に「このままでよい」と勘違いさせ増長を招く結果になります。『部下を褒める』とは、部下に阿ることではありません。マネジメントの一つであることを理解し、正しく褒める方法を知っておきましょう。
部下のやる気を高める上手な褒め方
部下を褒めるときに一番に意識すべき点は、何がよかったのかを具体的に示しながら褒めることです。以下、具体性がない褒め方と具体的な褒め方を比較してみましょう。
具体的ではない | 具体的である |
⚫︎よくできた資料だったよ。 ⚫︎今月も目標達成おめでとう。 | ⚫︎いつも○○さんが作ってくれる資料は、グラフやカラーリングの工夫があるから見やすくて助かっているよ。 ⚫︎今月の目標達成率は100%越えだったと聞いたよ。すごく頑張っているね。 |
上記の表でも分かるように、褒めている内容を具体的に示すことで、何に対して褒められているのかを把握しやすくなります。また、褒めるときに相手の名前を呼ぶことで、より『今自分は褒められている・認められているのだ』と強く実感することもできるでしょう。
具体的な数字を挟むことで、部下自身の成長を客観的に示すことにもつながります。
事実ベースであることが重要
部下を褒める際に必要となる最低限のラインが、事実ベースで褒めることです。無理に褒めようとしたり、嘘をついてまで褒めたりすることは逆効果といえるでしょう。
褒められた側も、無理に褒められてもお世辞を言われたようにしか感じられません。下手をすれば、自分は褒めるところがないと思い詰めてしまうことも考えられます。
基本的に褒め言葉は常に伝えるものではありません。実際に成果を上げた、助かると感じる事実があった、よい着眼点を持っていた場合などに褒め言葉を伝えましょう。
ただ、目に見える成果がない場合は褒めなくてよいというわけでもありません。もちろん先述したように、無理に褒めることはNGであるため、普段は『褒め』ではなく『感謝の気持ち』を伝える方法がおすすめです。
部下とのコミュニケーションの一環にもなるため、よいことをした際に気が付きやすくなります。
褒めるタイミングを見極める
成果を上げられた、または役立つ仕事ができたなど、部下のよいところを感じたときは、できるだけ早めに褒めることも大切だといえるでしょう。
タイミングがずれてしまうと、部下が何を褒められているのかピンとこないケースもあるからです。特に成果を上げたり目標を達成したりなど、客観的に分かりやすいケースでは、部下本人も成功できたことでやる気が上がっている状態です。
逸早く上司から褒め・認められることで、よりモチベーションを高めることができます。
褒め方は部下の特性に合わせる
人によって前に出ることが得意、目立つことが苦手などの特性があります。部下を褒める際には、この特性も意識すると、より上手に褒めることができるでしょう。
主な特性と褒め方は以下の通りです。
部下の特性 | おすすめの褒め方 |
大人しく目立つことが苦手 | 1対1の面談・メールなどで褒める |
目立つことが苦にならない | メンバーの前で褒める |
コミュニケーションが苦手 | 人伝てに褒める |
目立つことが苦手な部下は、大勢の前で褒められると委縮してしまう可能性があります。一方、目立つことが苦にならない性格であれば、人前で褒められることで承認欲求を満たし、よりやる気につながるケースもあるのです。
また、人伝てに褒め言葉を伝える方法は、心理学では『ウィンザー効果』と呼ばれ、直接伝えられるより信頼性が増す効果があるとされます。部下の特性をよく観察し、どのように褒められることが一番受け入れやすいのかも意識してみましょう。
【要注意】やってはいけないNGな褒め方
最後は、部下を褒めるときにやってはいけない褒め方について見ていきましょう。甘やかしになるケース、やってしまいがちなポイントについて解説します。
他者と比較する
人を褒めることに慣れていない場合にやりがちな間違いが、他者と比較して褒めようとする方法です。
「○○さんはだめだったけれど、△△君は上手」などといった言葉は、軽い気持ちで言っているケースも多いことが事実です。しかし、他者を貶めながらの褒め言葉は、本当の意味での褒め言葉とはいえません。
褒められた部下も、気持ちよく言葉を受け取ることができないでしょう。
また、いつも特定の人を比較に出している場合、メンバー内に比較されている部下を軽んじる空気ができてしまいます。具体的に褒めたくて比較対象が必要になる場合は、他者ではなく部下の過去と現在を比較しましょう。
誉め言葉だけを伝える
褒め言葉を伝えただけで終わらず、改善点の指摘やアドバイスを行うことも大切になります。ただ褒められ続けると、人は『褒められるという状況』に慣れてしまうからです。
褒められるだけの状況が続くと、モチベーションを上げようと褒めても、徐々に部下の心に響かなくなってくるのです。反対に、褒め言葉をかけないまま時間が空いた際には「いつも通り頑張っているのになぜ褒めてくれないのか」と不満を持つ可能性もあります。
もちろん些細な褒め言葉や、感謝の気持ちを伝えるだけであれば問題ありません。成果を上げた際、1on1での面談で褒める際には、客観的かつ具体的な数字を用い、褒め言葉と併せてフィードバックも伝えていきましょう。
まとめ
上手に部下を褒めるには、以下のポイントがあると解説しました。
- 具体的に褒める
- 事実ベースで褒める
- 褒めるタイミングを見極める
- 部下の特性に合わせた褒め方も大切
ただ褒めるといっても、さまざまなポイントがあると分かっていただけたのではないでしょうか。事実ベース・具体性を持った褒め言葉は、部下の仕事をしっかりとみているからこそできる褒め方です。
部下からすれば「自分のことを正しく見てくれている」「適正な評価をしてもらえる」と、上司への信頼を高めることにもつながるでしょう。
ただ、日々の業務をこなしながら、褒め言葉のバリエーションや褒め方の見極めをするのは難しいと感じることも多いのではないでしょうか。そのようなときには、一人で思い悩むより専門家の力を借りる方法がおすすめです。
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