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2025年変わる日本、2030年変わる世界とその経営的意味

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2025年変わる日本とその経営的意味

2025年変わる日本

(1)団塊の世代が後期高齢者に
5歳毎人口では団塊の世代を含む70歳~74歳代が現在960万人。この規模が25年に後期高齢者になりますが、75歳以上の世帯主家計消費は、70歳~74歳までより月3万円減少します。

(2)デジタル敗者の退場「2025年の崖」
令和3年情報通信白書による「デジタル敗者」とは、スマートフォン等の普及に伴う消費行動等の変化に対応できない企業、デジタル企業による攻撃に対応できない企業を示します。

2025年に、20年以上稼働し続けている老朽化・複雑化・ブラックボックス化したレガシーシステムが6割に達し、DXを本格的に推進する際の障壁となります。

これに対処すべきエンジニアの多くが2025年までに定年を迎え、現状のままでデジタル敗者になるのです。

(3)基礎的財政収支の黒字化?
26年度に黒字化するシナリオを内閣府が発表しました(22年1月「中長期の経済財政に関する試算」)。

しかし、三菱総合研究所は、「自然体での達成は困難」であるとし、30 年度にはGDP比230%~255%の赤字と現状より悪化すると予想しています(「内外経済の中長期展望 2018-2030年度」)。

(4)日銀の新しい金融政策
黒田日銀総裁の後任が生まれる23年4月以降、日銀の新しい姿勢も明らかになります。もっとも、物価上昇率が安定的に2%を超えるまで金融政策は正常化しません。

従ってこのまま円安が進んでも需要が喚起されなければ価格転嫁にも限界があり、正常化の機会はそれだけ遅くなるでしょう。

企業競争力が急落している日本

(1)世界競争力ランキングの推移

出典:「世界競争力ランキング」IMD
https://www.imd.org/centers/world-competitiveness-center/rankings/world-competitiveness/

*丸数字は順位
*米国の89年から92年、独の89年から91までの順位は不明

スイスのIMDが毎年発表している世界競争力ランキングの推移は上記図の通りです。

外需だけが儲かり内需が潤わなかった近時の2つの景気「いざなみ景気(02年~08年)」「アベノミクス景気(12年~18年)」を通じて06年の16位、09年の17位、14年の21位と徐々に上昇圧力が弱まり、アベノミクス景気終了の翌年(19年)に一つの下のグループへランクダウンしました。

97年に4位から17位に急落した原因は基礎的財政収支悪化による消費税導入など緊縮財政の始まりと一連の金融不安(日産生命や北海道拓殖銀行、山一証券の破綻)に起因するものと思われます。

(2)ランキング下落原因はビジネス効率性

ランキングを構成する大項目をみると、経済状況は64か国中12位に回復し、インフラも22位で比較的安定を保っているため、19年の下落原因は、ビジネス効率性の悪化です。
(政府効率性は97年から継続して低位)

(3) ビジネス効率性悪化の原因は企業競争力を示す3項目

・「生産性/効率性」2015年から悪化
・「経営プラクティス」2017年から悪化
・「取組/価値観」2019年から悪化

アベノミクス景気が1ドル125円をつけてピークアウトした15年から指標が悪化しています。
外需頼みの円安施策の終了で企業競争力の低下が表出したものと思われます。

劣位小項目を見るとデジタル化と環境変化への対応に問題があることがわかります。

2025年変わる日本とその経営的意味

(1)投資先としての魅力がさらに低下する日本
団塊世代の消費縮小及びデジタル敗者の市場退陣による雇用悪化と給与総額低下で、GDPの55%を占める個人消費は25年にむけて縮小していくでしょう。

金融政策と財政政策の方向性が不一致のままではGDPの15%を占める設備投資の伸びは期待できず、少子高齢化によるキャピタルフライトも避けられません。

(2)財政政策と金融政策の足並みは揃うか?
・金融政策は、95年以降実質ゼロ金利の景気刺激策
・財政政策は、97年以降消費税導入と公共投資4割削減の景気抑制策。

アベノミクス時に日銀がマイナス金利を導入し景気刺激策を強化した時でさえ、財政政策は公共投資4割減のまま、さらに14年19年と消費税増税で需要を減退させました。

日銀が市場にお金を供給しても国内には需要がなかったのです。

基礎的財政収支が黒字化すれば足並みが揃う可能性が有りますが、現状期待薄といわざるを得ません。

2030年変わる世界とその経営的意味

2030年変わる世界

(1)世界のGDP4割に迫るアジア
・中国との関係を強化するアジア

三菱総合研究所「内外経済の中長期展望 2018-2030年度」によれば、2030年世界GDPに占めるアジアの割合が4割に迫るとのこと。

これまで労働集約産業の中心だった中国に変わるアジア諸国の登場とともに、経済の発展で中間財を中国に輸出するASEANの増加で中国との関係は強化されます(通商白書2020)。

(2)GDP世界一になる中国
・米中二極ではなく多極化へ?

三菱総合研究所の同レポートによれば、2030年GDP世界一になる中国以外にもインド、ASEAN など、さまざまな国が世界 GDP に占めるシェアを高めることで、多極化するとのことです。

しかし、米ソ、米欧とは異なり世界のトップが入れ替わるのです。しかもEC市場で5割を超える中国シェアとこれから急成長するアフリカ等途上国への中国の影響力を考えると多極化とは異なる方向に進むのではないでしょうか。

(3)ベストセラー『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』が語る未来
・リアル・デジタルシームレスな体験空間にAIがコンテンツを自動提供
・アフリカ等発展途上国が驚異の経済成長

シリアルアントレプレナー(連続起業家)2人が語った、投資家たちが注目する未来の情報をまとめた話題の本。

生活のあらゆる場面で実装されるIOTが集めたデータからAIが感情を読みとり最適なコンテンツを自動作成、オンオフ境が無くなった体験空間に提供されるようになります。

太陽光発電によりインフラが整備されるアフリカの貧困層が中流化し、驚異の経済成長を遂げます。

世界一の経済大国になる中国が目指す姿

(1)「質の高い発展」
・労働集約的産業から資本集約的産業への構造転換で先進国との競争激化
・特許申請件数はすでに世界一

新しい五か年計画(2021~2025年)は「産業体系の発展の加速」を新たに章立てし、「デジタル経済」を主要数値目標に入れるなど、資本集約的産業構造への転換と、更なる国際化、デジタル経済への拡大を主軸した「質の高い発展」に舵を切りました。

(2)EC市場を独占する中国

現時点で5割を超える中国シェアがさらに伸び、日米欧のシェアは低下していきます。
中国はアフリカやアジアなど新興・途上国のデータを抑え、これから生まれる巨大な中流階級市場を獲得する流れが既にできています。

2030年変わる世界とその経営的意味

(1)変わる貿易構造
・中国・ASEAN5の中間財輸出で先進国と直接競争へ
・途上国は先進国と同等の商品・サービスをより低価格で提供へ

あらゆる産業のあらゆるレイヤーでレッドオーシャン化が進み、既存のビジネスモデルのままでは大変厳しい状況になることが明白です(「デジタルで支える暮らしと経済」令和3年情報通信白書)

(2)多重化する世界経済
・サイバー空間がリアル以上に効率的な取引空間に
・リアルとサイバー空間、異なるアバターの経済が回りだす

IoTの本格的な実装化で、リアルサイバーの融合が加速。サイバー空間内で完結するビジネスが増えることで、単なる情報交換コミュニティではなく、経済活動が営まれる一つの社会へと変貌します(「内外経済の中長期展望 2018-2030年度」三菱総合研究所2018.7.9)。

こうした変貌を『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』では「多重世界モデル」と称し、それぞれ異なるアバター主体の経済が回りだすとしています。

おわりに

2025年に向けて国内市場の縮小は避けがたく、その縮小を緩和・是正する政府の政策も期待しがたいと言えます。

一方国外市場は、2030年に向けて途上国から生まれる巨大な中流階級市場に世界中どこからでもアクセスできる取引環境が整えられつつあります。

さらに既存市場に取り込まれている国々の市民でさえ、異なるアバターで新しい経済活動を始めるでしょう。

しかし外需は、チャンスが広がるとともに、中国、ASEANの中間財への進出と新興・途上国の世界貿易への影響拡大により、あらゆる産業のあらゆるレイヤーで、レッドオーシャン化が進みます。しかもEC市場での中国有利は動かしがたいでしょう。

日本企業のビジネスモデルの欠点がデジタル化と環境変化への対応の遅れにあることが表出し、このままでは内需も外需も大変厳しいものになるでしょう。

第2回記事ではこの大きな変化に中堅中小企業がどのように対応していけばよいか紹介していますので読んで頂ければ幸いです。

著者:maru

2011年から中小企業診断士として経営コンサルタントをはじめる。
通常の企業経営コンサルから、無農薬農業経営、介護施設運営等の幅広い業種に関わり、
エンターテインメント施設の開業のための市場調査から、債務超過企業の事業デューデリジェンスまで、企業成長段階に応じたコンサルタントを行っています。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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