販促ツール内製化とは、主に販売促進や集客を目的としたチラシやPOPなどをパソコンで編集し社内でプリントアウトして制作する方法を言います。
WordなどDTP(画面上で編集デザインを行う)ソフトが普及し、安価なプリンターも登場したことから専門店のみならず企業の販促部や営業部で採用が拡大してきました。
これまでのように印刷会社に発注する方法に比べ、時間や経費の削減につながります。
しかし、単純に「経費削減効果」だけがメリットなのでしょうか。あまり知られていない内製化のメリット、弱点にもなり得るデメリット、さらに効果を高める運用モデルを考えます。
販促ツール内製化とは(印刷手段の選択肢の拡大)
マスメディアのしくみを活用する折込みチラシなど大量部数の印刷物には不向きですが、1つの種類のチラシ印刷枚数が500枚程度までであれば自社プリンター印刷でも対応が可能です。
最近は、安価なネット印刷サービスが拡大し、OfficeデータをPDF保存して入稿すればオフセット印刷やオンデマンド印刷による高い品質の印刷物も簡単に手にすることができるようになりました。
オフセット印刷とは(Wikipedia参照)
実際に印刷イメージが作られている版と紙が直接触れないのが特徴。版に付けられたインキを、一度ゴムブランケットなどの中間転写体に転写(offset)した後、紙などの被印刷体に印刷するため、オフセット印刷と呼ばれる。(Wikipedia参照)
オンデマンド印刷とは
「要求があり次第(オンデマンド)」に迅速に印刷する方法。注文印刷のこと。版の製作が不要なデジタル印刷機が登場し現実のものとなった。(Wikipedia参照)
一方、安価なプリンターはインクやトナーの交換の費用や手間の問題も考える必要があります。
消耗品購入経費とともに人件費も考慮に入れると、ネット印刷を利用した方が経費を抑えられるケースも考えられます。
自社印刷にこだわらず、しっかりとしたコスト管理や品質管理を考えて選択することも重要なことです。
紙媒体とWebサイトの内製化に関わる3つの問題点
販促ツール内製化は、印刷物による紙媒体による情報発信と、WebサイトやSNSを利用したネットによる情報発信を組み合わせることが基本です。
こうしたパーソナルメディアは、テレビCMや折込みチラシなど外部の力を借りるマスメディアによる情報発信とは異なる点を認識しておく必要があります。デザイン技法、Web知識、そして客観性の問題です。
販促企画とともにキャッチコピーやイラストの挿入など販売成果を上げるためのコンテンツの作成とデザインは欠かせません。
また、Webサイトの編集にはHTMLやCSSや検索対応の基本知識とともに、バナー画像のデザインスキルが必要です。
デザインテンプレートやWebサービスを利用すればある程度は解消できます。
しかし、一連の情報編集と発信作業をすべて組織内で担うと、第三者の関わりがなくなるため客観性の担保はしっかりと頭に置く必要があります。
このように、内製化によるDTPデザインを含む情報編集には、情報編集力とデザインスキルWeb関連の知識、さらに情報を客観的に評価できるスキルを持つ人材を育てる社員教育が不可欠です。
コスト削減以上の効果とは
販促ツール内製化のメリットは一般的に言われる「印刷経費削減」とともに、「時間・納期の短縮」と、情報編集を常に行うことによる「情報編集力の向上」を挙げる必要があります。
印刷経費だけ見れば、ネット印刷とともに、定額プリンターサービスの登場で、品質や納期、コストなど複数の要素を考慮して選択できます。
そこで、「時間と営業費の短縮」と「人材の情報編集力」にも注目します。
結論から言えば、販促ツール内製化の目的は「売上貢献」にあります。
迅速な対応と売上につながる企画力にも関連する情報編集力を高める効果まで含めて考えることによって、売上を生み出す原動力につながります。
- 印刷経費削減(ネット印刷や定額サービス)
- 時間と営業費用の短縮(営業の効率化)
- 情報編集力の向上(企画力などの向上)
情報を論理的・客観的に見えながらDTPデザインやライティングを行うことで、創造力も膨らみ、企画力やプレゼンテーション力の向上にもつながります。その基本が論理的思考力です。
情報を論理的に整理してチラシやWebデザインに反映させる情報編集力が育まれます。
組織内外の情報全般を総括・評価する人材育成とともに運営体制が整えば、企画創造型の活力ある組織に成長させることができます。
客観性の担保と時間ロス
印刷物やWebサイトを自社で制作する場合と外注する場合の違いを確認します。
「DTPデザイン」「納品物の作成」を自社で行えば、外注費用は削減できます。
広告代理店などに依頼すれば、「企画」から「制作」「広告宣伝」まで一括して任せることもできます。
長年の実績がある外注先に任せれば成果が出る可能性も高くなります。
アウトソーシングのメリットは「客観性の担保」にあることを認識しておきましょう。
仮に、「販促企画」「デザイン・納品物の制作」「メディアへのニュースリリース」を自社で行う場合、どうしても発信者側の主観が反映されやすくなります。
商品をPRしたい、売りたい、といった思いが強いため、商品やサービスを客観的に評価することができず、せっかくいい商品やサービスだったとしても、ターゲットとなるお客様に良さが伝わらない恐れが出てきます。
印刷会社の担当営業マンに「意向」を伝え、第三者である編集者やデザイナーが情報編集を行うことで、客観的視点が小さな表現に影響を与えていました。
その作業を自社で行うと、実際に情報を編集する担当者個人の思い込みや上司の意見に左右される可能性が出てきます。
組織内にデザイン技法を学んだ人材がいなければ、「この色は」「この大きさは」と感覚だけで意見を言うようになり、編集・DTPデザイン担当者は何をどうすればよいのかわからなくなります。
情報やデザイン表現は非常に曖昧な概念です。
「この文字が小さい」「この色合いは好きではない」といった、情報を受け取る側の直感的印象とは違う評価で、正しい判断が歪められる可能性も否定できません。
好みや感性に基づく曖昧な概念が入り込むため、方向性を見失い時間を大きくロスすることも出てきます。
まとめ・・・運用責任者(リーダー)の役割と育成
販促ツール内製化のメリットである、
・印刷経費削減
・時間・納期の短縮
・情報編集力の向上
から販促効果につなげるためには、曖昧な概念を整理するためのロジックが必要です。
感性に頼らず、一般の営業職や企画職で販促ツールの作成に取り組む場合は「論理的に情報を考える」ことがポイント。
また、「情報編集力」を体系的に理解し、常に客観的視点を意識して情報編集の流れを管理する役割を持つ人材の育成が必要です。
販促ツール内製化は単に個々のスキルに依存してチラシやWebサイトをデザインし発信するだけでなく、情報を論理的に理解して編集する「情報編集力」について共有する必要があります。
著者:小林マサヤ
専門はWord・PowerPoint DTPとWebコンテンツ情報の編集。マスメディア広告の「消費喚起」に対し、「自己投資意欲」から「自己決定」へ誘導するコンテンツ&コミュニティマーケティングを提唱。企画力につながるビジネスマンの情報編集力、組織運営力を含むビジネス編集力の強化を提唱している。