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中堅中小企業の社会変化対応事例

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巨大プラットフォーム(PF)を利用している事例

顧客接点を持つ現地PFをチャネルとして利用して成功

①企業の紹介
・企業名:株式会社丸越
・事業内容:FA機器総合商社(機械・工具・省力化機器・電気制御機器・機械加工部品)
・資本金:3,000万円
・従業員数:22名

②現地PFをチャネルとして利用し始めた背景
きっかけは、英語、スペイン語、イタリア語でも閲覧可能なホームページを作成したことです。海外の取引先の数はホームページを開設する前に比べ、10倍程度に大きく増えました。

③現地PFをチャネルとして利用している概要
当初自前で販売拠点を構えていたが、駐在人材確保の困難や見込み通り販売先を拡大できなかったため一度撤退。現在では、信頼できる海外現地バイヤーと提携することで順調に販売拡大中です。

参照記事:2014年版中小企業白書事例3-4-1

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H26/h26/index.html

④事例から学べる事
自前ではなく現地PFを利用することでグローバル化に成功しました。

現地PFを利用した経験を生かして、新たなビジネス「丸越で輸出しませんか?」を展開し、範囲の経済を実現しコスト優位確立しています。

PFが必要とするコンテンツを提供して成功

①企業の紹介
・企業名:株式会社Mujin
・事業内容:知能ロボットコントローラの開発・販売、知能ロボットソリューションの提供
・資本金:1億円
・従業員数:150人

②PFが必要とするコンテンツを提供し始めた背景
クライアントのニチレイロジグループは、国内シェア第1位、世界シェア第6位の食品物流ネットワーク企業です。新商品やデザイン変更が高頻度の食品・飲料の荷下ろしの確実な実行に課題がありました。

③PFが必要とするコンテンツ提供の概要
新商品やデザイン変更が生じても、事前のケース情報登録を必要としないマスターレスで、混載状態のパレットからの荷下ろしできる運用を実現しました。

④事例から学べる事
クライアントの課題に寄り添う現場の声を吸い上げることの重要性を感じさせます。充分効率化された巨大PFのリアルな課題・ボトルネックの解決コンテンツが自社のQualityを向上させました。

自社開発アプリ(暗黙知の形式知化)をPFで展開して成功

①企業の紹介
・企業名:株式会社三松
・事業内容:金属加工をベースに各種機械装置の組立(アッセンブリ)する「小ロット製造代行サービス会社」
・資本金:8,500万円
・従業員数:156名

②自社開発アプリをPFで展開し始めた背景
懇意のCADメーカーより、FA機器メーカーと共同で新しいシミュレーション装置の開発委託を受けたことにあります。

③自社開発アプリをPFでの展開の概要
培ってきた機械設計と電気制御設計の技術をベースに、当社独自の交換ソフトを介した仮想空間上で、実機さながらの動作(実機と同期された動作)で再現する生産設備・装置の3Dシミュレーターを開発しました。

④事例から学べる事
新製品開発というミッションを明確にすることで社員間の会話が活性化され、暗黙知の形式化、形式知の暗黙知化、暗黙知の共有を実現することに成功しています。

巨大プラットフォーマー(PF)が苦手な領域で独自のビジネスモデルを構築している事例

弱者(ランチェスター)戦略で巨大PFとの競争を回避

①企業の紹介
・企業名:株式会社ヤマグチ(でんかのヤマグチ)
・事業内容:・家庭用電化製品、健康食品、住宅設備機器の販売、設計、施工
・資本金:1,000万円
・従業員数:37名、パート・アルバイト8名、TOTAL45名

②弱者(ランチェスター)戦略に取り組み始めた背景
主な商圏に1996年頃から家電量販店の出店が続き、家電量販店6店舗と競合するエリアとなりました。

③弱者(ランチェスター)戦略の概要
商圏を町田市、旧相模原市に絞り込み(地域戦略)、さらに顧客を5年以内に販売実績のある人だけに絞り込み、値切り交渉する顧客を顧客台帳から外しました、(顧客戦略)

生活の手伝い等、商品販売にとどまらないきめ細やかなサービスを提供し、商品の定額販売で粗利益率35%以上を実現(商品戦略)。

従業員の営業活動の状況は日次で管理(日次決算)し、翌日には利益把握可能にしました(営業戦略)。

また、日次決算は社内で共有し、月間成績が良い従業員を表彰するなど、従業員のモチベーション向上にも活用しています(営業戦略)。

参照記事:2020年版中小企業白書事例2-2-9

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/chusho/b2_2_1.html

④事例から学べる事
商圏と自社の規模を生かした地域と顧客の絞り込み、家電量販店と差別化されたone2oneサービスと高収益ビジネスモデルを緻密に組合せしました。

 マーケティング・コミュニケーション・ミックス(MCM)で巨大PFとの競争を回避

①企業の紹介
・企業名:有限会社渡辺酒造店
・事業内容:清酒製造・販売
・資本金:3,000万円
・売上:12億円
・従業員数:54名

②MCMに取り組み始めた背景
酒の量販店台頭で、2000年代初頭以降は、酒販店への販売から消費者との直接取引重視で成功しました。しかし、若い世代の日本酒離れなど国内日本酒市場の頭打ちで、2018年に再び成長が鈍化しました。

③MCMの概要
「紙媒体に頼っていては更なる飛躍はない」と営業とマーケティングをデジタル化し、SNSマーケティングを最優先の経営課題にしました。

インフルエンサーを使った「アンバサダー作戦」として、自社FacebookやTwitterの投稿頻度向上と内容充実しました。

また、酒造作業のライブ配信や、豪州・米国・香港などをビデオ会議アプリでつないだオンライン酒蔵見学・試飲会を開催。BtoBの新規顧客開拓を目指し、オンライン展示会を月2回開催しました。

「今後はアプリなどを使ったマーケティングの自動化によって、営業社員1人当たり商談件数の倍増、受注率10%アップを目指したい。」と渡辺社長は語っています。

参照記事:2021年版中小企業白書事例2-2-1

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/chusho/b2_2_2.html

④事例から学べる事
最初からSNSマーケティングの施策に注力するなど、優れた状況分析能力が必要とされ、特定の趣味嗜好のコミュニティが形成しやすい自社製品の特徴を活かしたプロモーションを展開しています。

セグメンテッド・プラットフォームで巨大PFとの競争を回避

①企業の紹介
・企業名:株式会社アイスタイル
・事業内容: 美容系総合ポータルサイト@cosme(アットコスメ)の企画・運営、関連広告サービスの提供、メディア・ストア・ECを三位一体で運営。
・資本金:47億5600万円
・売上:309億5,000万円
・従業員数:1,009名

②セグメンテッド・PFに取り組み始めた背景
1999年に巨大PFでは満たされないコスメという分野のニーズウォンツの充足を目指して、口コミサイト「アットコスメ」立ち上げました。

③セグメンテッド・PFの概要
コスメというセグメントで横展開・深堀しました。2007年にリアル店舗「アットコスメ ストア」をスタートし、オンラインとオフラインをシームレスでつなぎ、ブランドとユーザーをつなぎ、データと広告をつないでいます。

「アットコスメ」の利用者数は月間1,300万人、国内の20~30代の女性の約半数が利用しているといわれるほどのコミュニティに成長しています。

ECの取り扱いブランドは約1,900。口コミデータは1,500万件以上、商品データは32万件以上にのぼります。

リアル店舗では比較購買体験や、QRコードを通じた商品情報や使用方法動画をリアルタイム送信しています。

ですので、閲覧や購買履歴を活用し、アプリを通じたプッシュ型通知やDMなどの販促・購買支援する、企業向けのデータ活用サービスを月額50万円の定額制で開始しました。

④事例から学べる事
巨大PFでは満たされないニーズウォンツを、リアルとデジタルのシームレスで充足させるビジネスモデル構築し、自社PFで収集したデータで、第2の収益の柱を構築しています。

まとめ

第3部では、6つの事例を紹介しました。

第一章巨大プラットフォーム(PF)を利用している事例より、第二章巨大プラットフォーマー(PF)が苦手な領域で独自のビジネスモデルを構築している事例の方が、内容が濃いものになっています。

これは、第二章の事例が経営者の戦略的思考をもって、経営の仕組みそのものを変革する事例だからです。

これに対して第一章は現場の声の吸い上げなど受動的側面が多く、経営の仕組みそのものはそのままで、新製品開発やガバレッジを拡大していく事例になっています。

しかし、益々成長していくPFに対して中堅中小企業が生き残っていくために、第一章事例のようにPFを利用することは、取組み易く、多くの企業が採用できる手法です。

従って、現場の声を吸い上げ、すぐに対応できる仕組みを作っておくことは、全ての中堅中小企業に望まれるでしょう。

一方、経営者に優れた経営戦略能力が要求されます。第二章の事例の模倣は、中堅中小企業によっては無理を伴うものかもしれません。

事例を読んで、「うちも同じような状況だ」と思った経営者で、経営の仕組みそのものをどう変革していくか不安に思った方は、第2部「中堅中小企業の社会変化対応マニュアル」第二章で、事例4.5.6の理論的側面を紹介していますので、参考にして頂ければ幸いです。

著者:maru

2011年から中小企業診断士として経営コンサルタントをはじめる。
通常の企業経営コンサルから、無農薬農業経営、介護施設運営等の幅広い業種に関わり、
エンターテインメント施設の開業のための市場調査から、債務超過企業の事業デューデリジェンスまで、企業成長段階に応じたコンサルタントを行っています。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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