日本でも徐々に注目されつつあるギフトエコノミー
自分の利益を考えて動く「ギブ&テイク」の考え方の資本主義とは打って変わり、見返りを求めずに利益を考えない「ギブ&ギブ」の考え方であるギフトエコノミーが注目されています。
「ギブ&テイク」の考え方では、「自分にプラスにならなければ動かない」「利益を最優先に求めるなど」自己中心的な考え方になりがちです。
見返りを求めずに動くことにより、相手のことを考える利他的な行動をとります。
利益にならないので自分にとって不利のように感じますが、孤独を感じなくていい、他の人に良い影響を与える、満足感を得られることがメリットです。
幸せな気持ちになるので結局は自分にとってプラスになるといえるでしょう。
ギフトエコノミーの考え方を経済に取り入れ始めたのはアメリカです。その後徐々に広がってきており日本でも少しずつ実践するところが増えてきています。
アメリカのカルマキッチンが日本へも…
ギフトエコノミーの先駆けになったのはアメリカのカルマキッチンです。カルマと聞くと宗教と関係がありそうですが、カルマキッチン自体は宗教とは関係ありません。
カルマキッチンはメニュー表に料金が載せられていないタイプのレストランで、日本でも話題となっています。
「メニュー表にお金がないってどういうこと?」「まさか0円でご飯が食べられるってこと?」と思っておられるのではないでしょうか?
そのまさかなんです!カルマキッチンのスタイルでオープンしているレストランは食事代が0円で食事ができます。
カルマキッチンのシステムとは?
カルマキッチンの食事代が無料なのは、先に来た人が食事代を払っていったからです。要するに誰かの寄付によって食事が成り立つシステムなんです。
カルマキッチンで先に来た誰かによって支払われた寄付によって食事を美味しく食べることができたので、望むのであれば次の人のために食事代を払えます。
これは「望むなら」というシステムであり、払わなければいけないと決められていません。いくら払うのかも自分の気持ちです。
自発的に賄われた寄付によって賄われるレストランだと言えるでしょう。
カルマキッチンの経営が成り立つ理由とは?
「自発的な寄付で本当に経営が成り立つの?」と驚かれるのではないでしょうか?
しかしカルマキッチンで食事を楽しんだ人のほとんどが、次の人のために代金を払うという結果になっているのです。
自分の食事は誰かからのプレゼントがあったので食べることができました。誰かからプレゼントされるととても嬉しいので、他の人にも嬉しさを分け合いたいと思います。
そのため今度は自分が次のテーブルの人にプレゼントをしたい感じ行動に移すのです。このように利他的な考え方のサイクルが循環することでカルマキッチンの経営は成り立ちます。
カルマキッチンの成果とは?
例えばこのような場面を想像してみてください。あなたはあるレストランでパートナーと食事をしています。ずっと食べたかった季節のコース料理を堪能しデザートまで楽しみました。
食事を終えカードで料金を支払うためにウエイターを呼ぶと、ウエイターはこう告げます「こちらのテーブルは前に食事をされたお客様がすでに料金を支払っております。そのお客様は、”次にこのテーブルを使う人のために贈り物をしたい”と言葉を残して代金を置いて行かれました」そう言われたあなたはどんな気分になるでしょうか?
名前も知らず、顔も知らない人が自分のために「美味しい食事の時間を楽しんでもらいたい」といわゆる贈り物を残していったのです。
美味しかった料理、楽しかった時間がさらに、感謝の時間に変わるのではないでしょうか?
カルマキッチンではこの気持ちのサイクルが起こり、次に食事をする人のために代金を支払っているのです。
カルマキッチンで食事をすることにより、知らない人から親切を受け、自分も誰かのために親切を返すというサイクルが生まれるのでお腹も心も満足できます。
日本でもカルマキッチンの考えを取り入れたレストランがある!
アメリカから広がってきたカルマキッチンの考え方ですが、最近は日本でも見かけるようになってきました。例えば「beeftro by la coccinelle (ビフトロ バイ ラ コクシネル)」では「カルマキッチン」を実践しています。
食事代と一緒に次の人に宛てたメッセージを添える人もいるなど、お金だけでなく気持ちを届けた人もいました。
その結果、多くの人が「とても嬉しい」「幸せだ」と感じることができたといういい成果が出ました。
日本では「カルマキッチン」としてオープンしているレストランというより「今日はカルマキッチンを開催します」として取り入れていることが多いようです。
ボーナスの送り合いを行っているハーチ株式会社の試みと成果とは?
日本の「ハーチ株式会社」はギフトエコノミーについて別の試みが行われています。ボーナスを互いに送り合うという試みです。
この項目ではハーチ株式会社の試みについて紹介します。
ボーナスの送り合いってどういう意味?
もともとハーチ株式会社では、その月の成績がよかった従業員にボーナスを送るMVP制度を取り入れられていました。
MVP制度だと、「1人しか報酬を得らない」「他の従業員も頑張ったのに…」などの問題点があります。そこに目をつけたのがボーナスの送り合いです。
MVP制度を取りやめ、そのお金を「誰かに送るためのボーナス金」として支給されるようになったのです。
従業員がそれぞれ支給金を「感謝したい人」に向けて送らなければなりません。誰に送るのか、複数に送るのか1人に送るのかは自由です。
ボーナスを送る時にそれと同時に「感謝の言葉」を添えることも義務付けられています。
ボーナスの送り合いで見られる効果とは?
ボーナスの送り合いは会社にとって良い成果となっています。例えば、今まで同じ人に集中していたボーナスがみんなに拡散され、みんながギフトをもらえるという結果になりました。
またギフトを送る際に感謝の気持ちが添えられるので、「こんなふうに思ってもらっていたなんて嬉しい」と受ける側も嬉しくなり「いつも面と向かって言えないことも感謝できる」と与える側も嬉しくなるのです。
このようにお互いにギフトを送り合うことで、会社の雰囲気が良くなるという良い結果が生まれています。
ハーチ株式会社の試みから見るギフトエコノミーとは?
ハーチ株式会社の試みから分かるように、経営の一部にギフトエコノミーを織り交ぜることにより会社の雰囲気がよくなる、従業員のモチベーションが上がるなどの効果があります。
資本主義の経済の中で全てをギフトエコノミーとして経営するのは現実的に難しいことは否めません。
ギフトエコノミーを上手に工夫し少しだけ取り入れることで、効果を感じている会社があることが伺えるでしょう。
まとめ
ギフトエコノミーは海外に比べると、日本ではまだまだ認知度が低いですが少しずつ認知されつつあり実際に実践しているところも存在します。
新しい考え方なので自分の工夫次第でいろいろなところに、ギフトエコノミーの考え方を取り込むことができるでしょう。そういった意味でも、発展の余地がある興味深い経済だといえます。