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統制と自由②:インドネシア

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こんにちは!栗原誠一郎です。

世界最大のムスリム国家

前回記事に引き続き、インドネシアについて見て聴いて学んできたことをお話しします。

インドネシアの人口の約9割はイスラム教徒です。

そして、1割弱がキリスト教徒、仏教徒その他は1%未満という状況です。

人口が2億6千万人もいますから、インドネシアは世界最大のイスラム教徒を擁する国家ということになります。

さて、イスラム教の教義ではお酒は飲んではいけないことになっています。

勿論、インドネシアには観光客も含め外国人も沢山いますから、レストランではお酒も提供しています。私も美味しいワインを堪能しました。(インドネシア料理とワインは意外?に合います)

しかし、街中ではお酒はなかなか手に入らず、あっても非常に高いとのことで、今回、日本からのお土産として日本酒をもっていったのですが、非常に喜ばれました。

実は、ジャカルタ滞在中、野良犬を一度も見ませんでした。

これはイスラム教において犬と豚は不浄の生き物とされ、触れることも禁じられているからです。

街の女性たちの多くは頭と体を覆う布(ヒジャブ)を着用していますし、ジャカルタには12万人を収容することができる世界最大級(世界で3番目に大きい)のモスク「イスティクラル」があり、このモスクからは、日に5回の礼拝の呼びかけ(アザーン)が大音量スピーカーで流れています。

こうした風景を見て、インドネシアはイスラム教徒の国なのだなと改めて実感しました。

インドネシアでイスラム教が普及した理由

現地に赴任している人達から話を聴いていると、昔に比べてイスラム教色が強くなっているのではとのことでした。

例えば、昔はイスラム教徒の女性もヒジャブを着用している人は少なかったそうですし、最近はアザーンの音がうるさいと苦情を言った仏教徒が逮捕されるという事件も起きたとのこと。

こういう話を聴くと、イスラム教が原理化していっているような印象を受けました。

その時、ある赴任者の方から、こんな疑問が投げかけられました。

「イスラム教は、そもそも砂漠の地で生まれたように、厳しい環境の土地で普及するものなのに、なぜ、食物豊富な土地であるインドネシアにおいてイスラム教が普及したのだろう」と。

そこで、イスラム教がインドネシアで普及してきた歴史を調べてみると、15世紀から16世紀にインドネシアにおけるイスラム教の普及に貢献した9聖人と呼ばれているイスラム教伝道者が存在したことが分かりました。

彼らの普及の方針は「思いやり寛容性」だったとのこと。

要は、普及しようとする現地の慣習を否定せず、最大公約数的な布教活動を行っていったのです。

その方針のお陰で、インドネシア各地でイスラム教が広がっていったとのことでした。

宗教国家における信仰の自由

そもそもインドネシアにおいては、憲法に基づき、宗教省によって公認されている6宗教(イスラム、プロテスタント、カトリック、仏教、ヒンズー教、儒教)のいずれかを選ばなければならなりません。

しかし、イスラム教を信じることを強制している訳ではありません。

これはインドネシアを訪問する前に書いた記事の中で話したように、インドネシアの国家的統一をもたらすために必要な5つの考え方の第一原則「唯一神への信仰」に基づいているのですが、この原則は「多様性の中の統一」を大前提としています。

実は、イスラム教勢力によるのイスラム教の国教化の動きは、日本敗戦後の憲法制定時など、過去にはあったようです。

その度に、「多様性の中の統一」という大原則に従うということで宗教的多元主義を最終的に受け入れてきました。

現在、インドネシア最大のイスラム教組織、ナフダトフルウラマー(NU)も先に述べた9聖人を起源としており、アラブ社会で起きている厳格化・純粋化には反対の立場をとり、「インドネシアのイスラム教」の独自性を昔から主張してきました。(インドネシアの近代におけるイスラム教の位置づけはこの資料が非常に分かりやすいです。)

強制ではない普及のあり方

先ほどご紹介した世界最大級のモスク「イスティクラル」を見学した際、建物の中のオープンスペースで、年齢も性別も様々な10人位の生徒らしき人々に対して、黒板を使って先生らしき人が何かを教えている、そういう集まりを幾つも見ました。

聞いてみるとアラブ語を教えているとのこと。イスラム教の経典であるコーランは、もちろんインドネシア語で書かれたものもありますが、原典?も読んでみたいという人が学んでいるとのことでした。

しかし、その風景は、皆必死に勉強しているという様子でもなく、非常に自由でゆったりとしたものに見えました。

考えてみれば、宗教というものは、どんな宗教でも最初は強制から出発はしていないはずです。

それが「権力」と絡み始めると、強制が始まる。

インドネシアのイスラム教が今後のどのような形で変化するのかは誰にも分からないことでしょうが、「インドネシアのイスラム教」の原点が「思いやりと寛容性」である以上、強制を伴わない形で発展していくのではないかと私は思います。

 

皆さんはどう思いますか?

さて、インドネシア紀行については、まだ続きます。続きは次回以降の記事でのお楽しみとさせて頂きます。

では、また。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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