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障害者雇用の取り組み方(第3回/全5回)

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第3回:身体障害者とは?

身体障害者とは

身体障害とは、身体機能の一部に不自由があり、日常生活に制約がある障害のことを指します。
身体障害者福祉法上では以下の5種類に分類されます。

【5つの身体障害の種類】

視覚障害者

視覚障害は見ること(目)の障害です。
視覚(視機能)が日常生活や就労などの場で不自由を強いられるほどに「弱い」、もしくは「全く無い」障害となります。

聴覚・平衡機能障害

聴覚障害は聞こえること(耳)の障害です。
平衡機能障害はめまいなど、ただ立っているときや静かに座っているときにも体が回っている、または動いているように感じる障害となります。

音声・言語・そしゃく機能障害

音声・言語障害は、しゃべること(話すこと)の障害です。
そしゃく機能障害は食物の摂取が困難なもの、あるいは誤嚥の危険が大きい障害となります。

肢体不自由

肢体不自由は四肢(上肢・下肢)、体幹(腹筋、背筋、胸筋、足の筋肉を含む胴体の部分)が病気や怪我で損なわれ、長期に日常生活動作に困難がともなう障害となります。

内臓機能などの疾患による内部障害

内臓機能などの疾患による内部障害は、「心臓」「腎臓」「呼吸器」「膀胱(ぼうこう)・直腸」「小腸」「肝臓」の機能障害とHIVによる「免疫機能障害」の7種類の障害から構成されています。

それぞれの障害の程度や日常生活にどれほど支障をきたすかにより、7つの障害程度等級(1~7級)に分けられています。
身体障害者手帳が交付されるのは、身体障害1~6級までですが、7級に該当する障害が2つ以上重複する場合は、6級の手帳が交付されます。

※ 別紙参照:身体障害者障害程度等級表

これら5種の障害の中で最も多いのは肢体不自由で、身体障害者手帳を交付されている人のうち、約半数を占めます。

肢体不自由の方で重度の方は主に車いす(または電動車いす)を利用しているケースが多くなります。
中度、軽度の方では杖などを利用して歩行することも可能です。

「内臓機能などの疾患による内部障害」の方々は、一般的に外見上からどのような障害かをすぐに理解することは難しい障害となります。

例えばですが、心臓にペースメーカーを入れている方、HIVによる免疫機能障害の方、腎臓障害で人工透析を必要とする方々などが代表的かもしれません。

 

身体障害者を雇用する場合の必要な配慮

視覚障害

視力が弱い、または視野が狭いなどの目の障害です。
必要な配慮としては「通路の確保」「拡大読書器などの機器用意」などが挙げられます。
視力が弱く、視野が狭いため、足元に障害物などがあると転倒などのリスクもあります。
そして、デスクワークなどの場合は、拡大読書器(助成金対象)などを利用することで事務業務なども可能となる方もいます。

注意点としましては障害が悪化していないかどうかを留意する必要があります。
視覚障害の方の場合、視力がさらに弱まったり、視野がさらに狭くなるなど、悪化することがありますので、場合によっては業務を変えて負担を軽減するなどの対策が生じる場合もあります。

聴覚・平衡機能障害、音声・言語・そしゃく機能障害

聴覚障害の方々は視覚を生かした業務が可能となります。
成功事例では大手コンサルティング業界などで資料作成を戦力として雇用している事例などがあります。
耳が全く聞こえず、話すことができない、ろうあ者は重度身体障害者(1級、2級)となりますが、十分戦力として活躍できている方々も少なくありません。

留意点としましては、コミュニケーションが手話または筆談、またはパソコンなどでの活字での意志疎通となることです。サポートする方々は常に筆記用具を持ち歩くか、または休憩スペースなどに筆記用具や小さなホワイトボードなどを常備するとコミュニケーションが楽になります。

ただ、聴覚障害者の方々は仲間意識が高く、同じ聴覚障害者とのコミュニティを強固に築き過ぎてしまう傾向があります。つまり多少排他的傾向が強いため、そうならないような環境を用意する必要があるかもしれません。

肢体不自由

肢体不自由の方は体を動かす業務には向かないのですが、パソコンなどの事務業務などに適しています。
優秀な方は一般の方と殆ど変らない業務能力もあり、コミュニケーションも問題ない方が多いです。

車いすの方を雇用する場合、バリアフリー設備、通勤手段や多目的トイレの用意、緊急時の対応などが必要となります。
腎臓機能障害の方などは定期的に人工透析が必要な方もいますので、就業時間帯や業務配分に留意する必要があります。

多くの場合、透析は週3回「月、水、金」または「火、木、土」のサイクルで透析施設にいく必要があり、対象曜日に早退などが必要となるケースがあります。また、震災などの災害時、会社近くの透析施設を確保しておくなどの対策が必要となります。

内臓機能などの疾患による内部障害

内臓機能などの疾患による内部障害の方は一般的にあまり配慮が要らないと言われています。
さらに身体重度障害者としてダブルカウント制度が適用されるケースが多いうえ、業務遂行能力も高い方が多く、採用市場ではニーズが高い障害となっています。前職などの経験を生かして管理者としてチームをマネジメントする方もいます。

注目されているのはHIVによる免疫機能障害です。
他の内部障害の方々と比べても比較的年齢も若い方も多く、能力も高い方が多いのが特徴です。
障害名を社内に公表すべきかどうかは判断が必要となりますが、本人と相談しながら最適な雇用方法を検討する必要はあります。

一点、免疫機能が低下している障害でもあり、ウィルス抵抗性が低いため、ちょっとした風邪ウィルスでも重症化しやすいことがあります。一緒に働く方々が風邪などのウィルスをうつさないよう、室内の全員にマスクやうがいを頻繁に促す必要性はあります。
(同じく心臓のペースメーカーを入れている方などは免疫機能をあえて低く調整していることもあり、同じくウィルス対策が必要となります)

 

身体障害者の採用と業務

身体障害者の採用

前述の通り、身体障害者は比較的ニーズの高い障害となります。
身体障害者の方々はニーズが高いので、特に若年層の方は殆ど応募がないと考えて差し支えないでしょう。
ハローワークなどで募集する場合は50代や60代の方々の応募が中心となるかと思います。

条件の合う人材が集まりづらい障害ですので、能力的に高い方を採用する場合、人材紹介などで採用することが多くあります。一般的なハローワークなどで応募してくる方の中に時折身体障害の方が応募してきますが、比較的聴覚障害の方が多い傾向があります。

しかしながら、身体障害者の中でもコミュニケーションが不足してしまいがちな聴覚障害の方は、他の身体障害と比べても比較的短期退職してしまう傾向がありますので、就業環境を整える必要があります。複数の聴覚障害者を雇用することで孤立感をなくすこともできますが、前述のごとく、聴覚障害者だけのコミュニティを作ってしまいがちな傾向もあるので留意は必要です。

また、昨今問題となるケースとしては、身体障害以外の障害を抱えている「重複障害」がある事例が増えています。
障害者手帳は身体障害であるものの、実際のところ、知的障害または精神障害を抱えている方もいらっしゃいます。
のちのちのトラブルを避けるためにも採用時に確認することをお勧めいたします。

身体障害者の業務

身体障害者は全般的に体を動かす業務は適していません。
比較的活躍できる業務としては、事務業務やデスクワークです。最近は障害者支援施設などでもパソコンの能力開発に注力しているので、一定以上の作業ができる方も増えております。

また、身体障害者は年齢層も高めでもありますので、前職などでマネジメント経験などのある方もいます。障害者チームなどのマネジメント能力を生かすという方向性も選択肢となります。読み書き計算、コミュニケーションも問題ない方が多いため、通勤方法や災害時対策などがクリアできる場合、積極採用が好ましいでしょう。

 

筆者:嵐 正樹
■プロフィール:
障害者雇用サポート支援として、身体・知的・精神障害者全ての雇用サポート実務を経験。
障害者雇用コンサルタントとして、東証一部上場企業を含めた10社以上の障害者雇用体制立ち上げを経験。
業務切り出しから採用、定着までの一貫した雇用サポートに強み。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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