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障害者雇用の取り組み方(第4回/全5回)

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第4回:知的障害者とは?

知的障害者とは

知的障害は一般的に読み書き計算など頭脳を使う知的行動に支障があることを指します。
具体的には児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医又は障害者職業センターによって知的障害があると判定された者です。

障害者手帳は都道府県知事が発行する「療育手帳」(東京では「愛の手帳」)が交付されます。判断基準は「知的機能(IQ)」の数値が主な指標ではありますが、同数値と合わせて日常生活能力、社会生活能力、社会的適応性などの能力を総合的に判断して診断されます。知的障害のレベルは、主に「軽度」「中度」「重度」「最重度」の四分類になります。

軽度知的障害:おおむねIQが50~70

軽度知的障害は、自分の身辺自立は多くの場合一人でできます。食事や衣服着脱、排せつなどの日常生活スキルには支障がありませんが、言語の発達が遅く、18歳以上でも小学生レベルの学力にとどまります。

軽度知的障害の特徴としては、

・服の着脱を含めた基本的な生活習慣が確立
・簡単な文章での意思表示ができる
・漢字の習得は困難
・集団参加や友達との交流はできる

などです。

中度知的障害:おおむねIQが35~50

中度知的障害は、自分の身の回りのことを一人で行うことは難しいので、衣食住には保護や介助が必要になる場合もあります。

中度知的障害の特徴としては、

・指示があれば衣服の着脱はできる
・入浴時、自分で身体を洗えるが、一部洗い残しがある
・お釣りの計算が難しい
・新しい場所での移動・交通機関の利用は難しい
・ひらがなでの読み書きはできる

などです。

重度知的障害:おおむねIQが20~35

重度知的障害は、言語・運動機能の発達が遅く、身の回りのことを一人で行うことは難しいので、衣食住には保護や介助が必要になる場合もあります。

重度知的障害の特徴としては、

・着替えなどの生活に手助けが必要
・簡単な挨拶や受け答えができる程度
・体の汚れを気にしない
・慣れた道でも一人での移動が難しい

などです。

最重度知的障害:IQが20以下

最重度知的障害は、言葉が発達することはなく、身の回りの処理は全くできず、親を区別して認識することが難しい場合もあります。

最重度知的障害のとしては、

・一人で衣服の着脱不可
・便意を伝えられない
・言葉を発しない
・生活全般に見守りや介助が必要

などです。

※別紙参照「知的障害者の障害の程度」

企業が知的障害者を雇用する場合、「重度」および「最重度」の知的障害者はダブルカウント制度が適用されます。つまり、1人で2人雇用したとみなされ、障害者法定雇用に算定できます。

 

知的障害者を雇用する場合の必要な配慮

知的障害者を雇用する場合、必要な配慮としては主に以下です。

【知的障害者を雇用する際の必要な配慮】

①業務習得、安定化までのサポート
②一緒に働く社員の理解
③親や特別支援学校との関係

業務習得、安定化までのサポート

知的障害者は基本的には読み書き計算ができないことが特徴です。
つまり、業務を覚えるためには一つ一つのプロセスを丁寧に教える必要があります。

軽度知的障害者の場合は比較的スムーズに習得が可能ですが、中度レベルになると何度も丁寧に教える必要が出てきます。

また、マニュアルなどの文字が読めないことが多く、作業のプロセスを色や絵などに分類しながら覚えやすく工夫する必要があります。

例えばですが、支援学校などでは散らかしたおもちゃは「動物の絵」ごとに(うさぎやくま、ライオンなど)箱が用意され、それぞれのおもちゃをそれぞれの「絵」の箱に入れて片付けするといった工夫がなされています。このように視覚に訴えながら、色や絵などを作業プロセスに組み込んで覚えてもらうなどの工夫も有効です。

一緒に働く社員の理解

知的障害者は周りの空気を読むことができません。
朝出社した際に、全ての社員に大きな声であいさつをして回るような方もいます。

このような行為に優しく対応してもらえるのか、厳しい態度を取るのかでは、知的障害者が長期就労の可否が左右されかねません。

もちろんミスもしますし、物忘れも多発しますので、一緒に働く社員の温かい理解が不可欠となります。

親や特別支援学校との関係

知的障害者は幼少の頃に障害が判明し、多くは特殊学級または特別支援学校に入ります。
幼少の頃から親や特別支援学校の手厚いサポートもあり、強いつながりの中で育ってきます。

多くの場合、住居の近くで、遠くの職場には勤めることはありませんので、地域コミュニティに根付いています。このような本人を取り巻く環境を理解した上で、周りの方々も含めて安心して頂くことが重要となります。

知的障害者の場合、比較的安定就労が可能ですので、決まった就業リズムをつかむことで安定就労に結び付きます。親や特別支援学校の先生方にも定期的なフィードバックなどがあれば、本人もやる気を出して就業することでしょう。

 

知的障害者の採用と業務例

知的障害者は一般的にハローワークなどの採用市場にはそれほど多くはおりません。
もともと知的障害は戦後すぐに対策が進められた障害でもあり、各地域での特別支援学校が確立され、サポート体制も固まっています。そのため、知的障害者を抱える特別支援学校は、各地域での就職先ルートが確立されているケースが多く、地元のスーパーや清掃会社、工場などに長年ネットワークを有しています。

しかしながら、軽度知的障害者の場合、一般の方と変わらず一般企業で従事している方も多く、その方が転職活動することもあり、採用市場で時折見受けられます。

その場合、コミュニケーションや経験、作業能力などを確認したうえであれば、問題なく安定雇用に結び付く場合が大半です。

知的障害者の場合は精神障害者と比べても安定就労が可能でもありますので、適する業務があれば、双方ともに良い雇用関係が続くと思います。

新卒の若い知的障害者を採用する場合、各地域の特別支援学校と関わりを持つと良いでしょう。多くの場合、在学中にトライアル業務を実施するなど、本人と各企業担当者、先生方とは卒業前までに関係性ができることも少なくありません。

大手企業などは在学中の早い段階で先生方、親御さんと関係性を構築する専門人員を配置しながら採用ネットワーク構築、安定採用に結び付けています。

知的障害者の業務例

一般的に重度知的障害が一般企業で就業することは難しいケースが多いですが、軽度知的障害者が就業することは、それほど難しいことではありません。

しかしながら、知的に障害があることから、読み書き計算などの事務業務は苦手としているケースが多くあります。

結果的に知的障害のある方の業務としましては、一般的には作業系と言われる、比較的体を使う仕事が多くを占めます。

以下、軽度知的障害者の仕事例です。

・工場の単純作業
・清掃業務
・飲食店の皿洗い、清掃作業
・スーパーや小売店のバックヤード業務
・クリーニング業の作業
・倉庫などでの梱包作業

など

また特に軽度知的障害の方が就業する場合、単純なパソコン業務などの事務職も最近有効な就職形態と言われています。他の方とのコミュニケーションが多くない業務で、一定の定型業務範囲であれば、多少習得時間はかかりますが、パソコン業務などでも、しっかりと戦力となるケースも増えています。

IT社会の昨今、どの企業でもパソコン業務が増えていますが、この分野でも軽度知的障害者の就業する幅が広がりつつあります。

 

筆者:嵐 正樹
■プロフィール:
障害者雇用サポート支援として、身体・知的・精神障害者全ての雇用サポート実務を経験。
障害者雇用コンサルタントとして、東証一部上場企業を含めた10社以上の障害者雇用体制立ち上げを経験。
業務切り出しから採用、定着までの一貫した雇用サポートに強み。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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