前回の内容では、大手企業と中小企業の両方で、実際にSDGsを取り入れた事例をご紹介していきました。
具体的な事業例を見ながら、少しずつSDGsを取り組む企業の概要が見えてきたと思います。
そもそもSDGsの取り組みは、計画をたてて、実行するPDCAサイクル(取り組みの着手→具体的な検討と実地→取り組み状況と確認の実地→取り組みの見直し)を着実に実行し、社会に提示していく事で、結果的にメリットが得られるという仕組みです。
ビジネスで収益を上げるためのSDGsではなく、SDGsの活動が結果的に売り上げ増加につながっていく考え方です。
今回は、その取り組みを中小企業に特化して、SDGsと関わりを持つための具体的なアクションをご紹介していきたいと思います。
SDGs×ビジネスの基盤
具体的な最初のアクションに、会社の方針としてSDGsを掲げていく事を、会社全体で把握する必要があります。つまり、従業員一人一人に、SDGsの意識を根付かせる必要があるということです。
SDGsを事業の一部に盛り込み、成果を出している企業に共通して言える事は、上層部だけでSDGsを取り入れていないという事です。
会社に働く一人一人の行動に、SDGsの意識が紐づけられています。
会社全体で、方向性を決めたならしっかりと全員で取り組んでいく覚悟が必要です。
SDGsに取り組む前に、企業自体の現状把握
SDGsについての概要を把握した次のステップとして、企業が取り組まなければいけないことは、自分の企業の現状(ポテンシャル)と課題の把握です。
第3回「SDGsを取り入れる企業側のメリット」でも取り上げた「大川印刷」の事例と同じように、まずは企業が抱える課題と向き合う必要があります。
その課題を改善するために、既存の事業にテコ入れをする必要があるのか、課題解決のために新規事業としてアプローチする必要があるのか?自らの企業に問いただす必要があります。
SDGsを企業に取り入れる具体的なステップ
現状と課題の把握ができて、やっとSDGsに取り組むスタートラインに立てます。
これからご紹介する実践的なSDGsの取り組みは、「SDGsを企業報告に統合するための実践ガイド」(公益財団法人と、国連が共同開発したSDGs課題解決に必要な実践ガイド)」を参考に作成しています。
優先すべきSDGsのターゲット決定
ここからは、具体的にSDGsを取り入れる際のステップと、注意点をご紹介していきたいと思います。
まずは、「優先すべきSDGsのターゲットの決定」です。
SDGsのゴールとターゲットのレビュー
SDGsのターゲットとゴールをしっかりとレビューし、その二つが自社のビジネスにどのように関係するのかを考察します。
SDGsの課題解決の方法として、自社サービス、製品が機能するのか?その他、投資対象になるのかを検討する必要があります。
【検討する際のポイント】
1.自社の事業とのバリューチェーン(製品やサービスの提供の際に必要となる製造や管理、販売などの全過程)を意識。
2.自社が既にもっている技術と能力を新しく活用することで、今までは想定していなかったターゲットで貢献できるものを探す。
3.1on1ではなく、SDGsのターゲットと自社サービスとの相関性を考える。(複数のターゲットにリーチできる可能性を模索する)
この3つのポイントを念頭におきながら、明確にしていくことで、自社にとって有益なターゲットを特定でいる可能性が高まります。
また、バリューチェーンに対して過度な負担をかけないようにすることもかなり重要です。
理由としては、「持続可能」というテーマを掲げるうえで、ポイントになるのはバリューチェーンにどのように取り組みを継続させるかです。
SDGsゴール17にあるように、「パートナーシップで目標を達成しよう」は、SDGsを実行するうえでも大事なことです。
見えてきたSDGsのターゲットの優先順位をつける
ゴールとターゲットをレビューした後に、その優先順位をつける事は、SDGsの課題解決と、事業として取り組む利点がより具体的に見えるプロセスになっています。
【優先順位をつける際の大事なエントリーポイント】
1.人と環境に対して高い優先度のリスクがSDGsのターゲットとどのように関係しているかを明確にする。
2.自社サービス(製品、投資)を通じてSDGs課題に優先的にアプローチできるものを探す。
企業が抱える課題解決は、SDGsの課題として提示されているケースが多くあります。この観点からも、事前に自社事業の全体的な把握が必要事項になってくるのです。
2.の自社サービスでSDGsの課題解決を行うことは、率先して考えられがちですが、1.を踏まえたうえで、検討していきましょう。
優先度を把握する際にもう1つポイントになるのは、「深刻度」と「可能性」です。
「深刻度」とは、SDGsの課題の中で、対象課題に属する人や環境の深刻度の深さ(これからどんどんひどくなる課題)、広さ(その課題がどれくらい広がっていくのか)、改善の難しさ(企業の頑張りで改善できることなのか?)があります。
「可能性」とは、課題解決のアプローチにより改善したものの、継続的に課題が生まれる可能性を指します。
これらの2つの「深刻度」と「可能性」は、優先度が高い課題となっていきます。しかし、「可能性」が低くとも、「深刻度」が著しく高い場合は、率先してSDGs課題として優先させるべきです。
優先度が特定した後は、自社のバリューチェーンと再度、紐づけして考えてみましょう。
そうすれば、自社が最優先すべきSDGs課題が明確になってきているはずです。
SDGs関連で必要な報告内容を決定させる
ここからは、実際に取り組んでいく事を社会に提示し、SDGs認定などの申請が必要なものの準備をしましょう。
報告内容の決定は、専門家と実際のステークホルダーと協議して、調整していきましょう。
SDGsと中堅中小企業の具体的な関わり方「前編」を振り返って
この項でご紹介してきたように、SDGsを取り組むには、事業を多面的に捉えるうえで、さまざまなコストがかかります。
しかし、第3回にご紹介した「大川印刷」のように、現状打破を考える際に必要な1つの基準と、武器になり得ます。
漠然と現状打破を実行するよりも、より先進的な取り組みで、効果の期待できるものだからこそ、世の中の企業は、実際に導入を検討し、実装しています。
自社のこれからを考えるなら、是非SDGsを検討し、実装してみてはいかがでしょうか?
著者:久貝 将太
フリーランスでライター業を営んでいます。主に、SDGsやサスティナブルを取り上げるメディア、キャッシュレス関係で記事執筆をしています。筆者自身、SDGsを取り入れたファッションサービスを展開するため、それにむけて準備中です。