ギフトエコノミーは新しい考え方ではない?
ギフトエコノミーという言葉を聞いたことがありますか?ギフトエコノミーを英語で直訳すると、「ギフト=贈り物」、「エコノミー=経済」で贈り物の経済といいます。
英語の言葉の通り、与え続け、送り続けるエコノミーのことです。
ギフトエコノミーと聞くと、新しい考え方のように感じるかもしれません。これは決して新しい考え方ではないのです。
ギフトエコノミーは見返りを求めない考え方
人は日常生活の中で行動を決定する時に無意識に損得を計算し、行動することがあります。
「この人に親切にしておけば、後でよくしてもらえる」「この人のことは少しくらい見下しても、損はしないから大丈夫」「この人は嫌と言わないから、面倒な仕事を押し付けちゃおう」などと思ってしまった経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
もちろん人間なので仕方がありませんが、ギフトエコノミーは、困っている人を見つけたら見返りを見ずに助けを差し伸べることことなのです。「見返りを求めずに親切にしましょう」考えで成り立っています。
古くからあったギフトエコノミーの考え方
ギフトエコノミーは決して新しい考え方ではありません。もともとあった考え方を、企業が取り入れただけだと言えるでしょう。
ギフトエコノミーはアメリカが発祥だと言われていますが、開拓時代アメリカに移ってきたばかりの人々は農業などをしながらアメリカを開拓していきました。
この時お互いに協力し合い、助け合ってきたことは周知の事実です。
このように昔から助け合いは、当たり前のように行われていました。
ギフトエコノミーの考え方は日本にもともとあった
アメリカだけでなく、日本でも誰か困っている人を見つけたら見返りを求めずに助けを差し伸べる、近所同士助け合うと言う考え方は実は古くから存在していました。
例えば、江戸時代の歴史からも昭和時代の近所付き合いの歴史からもギフトエコノミーの考え方が存在していたことはわかります。
本来日本社会はギフトエコノミーで成り立っていた
江戸時代には村同士での助け合いは当たり前でした。例えば子供は「村で育てるもの」と考えられ、自分の子供もよその子供も同じように叱ったり、助けたりしていたことは有名です。
日本昔話では「舌切りズズメ」「浦島太郎」といった話が古くから語られてきました。
おじいちゃんやおばあちゃんに話してもらいながら、「人(動物)に対して見返りを求めず良いことをしよう、そうしたら自分に帰ってくる」という教訓を学んでいたのです。
このように昔からギフトエコノミーの考え方は「日本昔話」として語り継がれていました。
ギフトエコノミーという言葉が存在していなかっただけで、見返りを求めずに誰かのために行う考え方は昔から存在していました。
日本で実践されていたギフトエコノミーの実例を解説
上記でギフトエコノミーの考え方は、日本でも古くから浸透してきたと紹介ましたが現在も浸透し続けています。現在社会で見られたギフトエコノミーの実例はこちらです。
- 東日本大震災の時に見られた助け合い
- コンサートを開いて現地の人を元気付けたアーティストもいる
- コロナの状況で見られたギフトエコノミーとは?
この項目では、上記の3つの点を具体的に解説します。
東日本大地震の時にみられた助け合い
東日本大震災の時に多くの人はギフトエコノミーの精神を発揮しました。
地震の影響で大きな被害を受けた地域にボランティアとして出向いて行った人もいます。
実際に出向いていけなかった人の中には、物やお金を寄付するなどして間接的に行動した人も大人数いるのです。
被災地では何が行われていたのでしょうか?仲間同士の助け合いです。被災地での避難生活の時に、被災した人たちはお互いに助け合って行動していました。
地震は突如として起こったことであり、とても悲惨なことでした。
その中にあって人々は、自分の利益を求めずにそれぞれが他の人のことを考えたり、自分にできることを行ったりすることでお互いにギフトエコノミーを自然に示しあっていたのです。
このことから、意識しているのかいないのかは別として現在の日本でも、ギフトエコノミー の精神を示す気持ちを持っていることがわかります。
コンサートを開いて現地の人を元気付けたアーティストも!
東日本大地震の時に芸能人や、音楽家の人たちの中にはコンサートを開くことによってギフトエコノミーを示しました。
「被災地のみんなに少しでも元気を届けたい」「コンサートの時間だけは悲しいことを忘れてもらいたい」などのポリシーを持って現地で無料のコンサートを開いた人もいます。
そのようなコンサートは実際に被災地の人の心に響き、勇気付けました。
実際に被災地に行けないアーティストの中には、収益をそのまま寄付に回すという形のコンサートを開いた人もいます。
実際に現地でコンサートを開けなくても、自分の見返りを期待せずに現地の人のことを考えて行った行動です。
このような行動もギフトエコノミー だと言えるでしょう。
コロナの状況でみられたギフトエコノミーとは?
最近ではコロナの状況で、ギフトエコノミーのエコノミーが見られました。2020年に突然世界中を襲ったコロナは世界中の人たちに深刻な影響を与え続けています。
コロナにかかって苦しんだ方やご家族がいるのもつらいことですし、緊急非常事態宣言の影響を間接的に受けている人もいます。
特に医療関係者は、限界を超えて治療にあたってくれています。医療関係者はインタビューの中で「終わりが見えないのでとにかくきつい」と語っており、大変な思いをして治療を続けてくれていることが伺えるでしょう。
このような状況の中で、医療関係者を少しでも助けようと立ち上がった飲食店のことがニュースで取り上げられていました。
飲食店のオーナーは「非常事態宣言でお店を開けられないので、せっかくだから美味しい料理を医療関係者に届けたい」と病院に仕出し弁当を届けていたのです。
見た目も栄養も考え抜かれたお弁当に、医療スタッフがとても喜んだのは言うまでもありません。
店の売り上げという利益を考えると赤字ですが「現場で頑張っている医療関係者を助けたい、力になりたい」という気持ちから出た行動だと言えるでしょう。まさにギフトエコノミーです。
ギフトエコノミーという名前が浸透していないだけ
上記で考えたことはごく一部であり、日本でも多くの人や企業見返りを期待せずに行動しています。
「昔の日本は良かった、みんなが助け合って生活をしていた」という言葉をよく聞きますが、上記で考えたように助け合いの気持ち、見返りを求めない気持ちは今の日本社会でも存在しているのです。
ギフトエコノミー という名前が浸透していないだけであって実は、ギフトエコノミーの考え方は昔も今ももともと人間の中に持っていることがわかります。
まとめ
「〇〇してやったんだから、〇〇してもらうのは当然でしょ」という考えで行動することが多い世の中にあってギフトエコノミーは、損得を計算せずに動く考え方です。
そしてこれは昔の日本人の考え方であり、子供たちに教えられてきたことです。
ギフトエコノミー と聞くと新しい考え方のように感じます。江戸時代の村制度、昭和時代の近所同士の付き合いから考えると、昔から持っている精神であることがわかるでしょう。
現在の災害時や緊急事態時に示される行動から考えても今も人の心に誰かを助けたいという無視の気持ちを持っていることを伺えます。
この考え方を企業方針の一部に取り入れたり、ちょっとした日常生活で積極的に示そうとするのがギフトエコノミーなのです。決して難しくはなく、シンプルな発想だと言えるでしょう。