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製品・市場別の経営戦略の考え方

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経営戦略を立案していく手順の中で、戦略ドメイン(企業の生存領域)を決定した後、具体的な経営戦略を決めていく手順に移ります。

現代では多くの学者やコンサルタントが様々な戦略理論を示していますが、今回は、自社の持つ「製品(商品)」と「市場(顧客)」の2軸にポイントを絞った、最も分かりやすく、よく使われる戦略手法をご紹介します。

 

アンゾフの成長ベクトル

アンゾフの成長ベクトルとは、アメリカの経営学者であるイゴール・アンゾフが提唱した、企業の成長戦略の方向性を示したモデルです。

アンゾフの成長ベクトルでは、「製品と市場」の組み合わせで成長戦略を考えます。さらにその組み合わせを「現在と新規」という時間軸の変化を使って考察するため、現在の戦略から未来戦略まで広くシミュレーションすることも出来ます。

経営戦略を考える場合、製品と市場というシンプルな2軸の関係で考える事は非常に理解しやすく、かつ重要な方法です。

まず、自社の製品(商品)があり、その製品を買ってくれる市場(顧客)を考慮することは、経営の原点であり、最大の課題でもあるからです。

今回は、アンゾフの唱える「成長ベクトル」といわれる戦略モデルを通して、企業の成長戦略を概観してみたいと思います。

市場浸透戦略

現在の市場(顧客)に対して、現在持っている製品(商品)分野で戦っていく戦略です。

今の商売のスタイルそのままで戦うわけですから、より顧客に接近し、市場を深く掘っていく戦略とも言えます。具体的には広告宣伝や顧客へのアプローチを中心として、より売上・利益を上げていこうとするものです。

熾烈なシェア争いを行うため、価格競争など、企業同士の消耗戦になる恐れがあります。

製品(商品)開発戦略

現在の市場 (顧客)に対して、新たな製品を開発して提供することにより、既存客に対して新たな需要を開拓しようとするものです。

メーカーの場合、「製品開発」になりますが、小売業や卸売業などの場合は基本的には製品を自ら製造することはありませんから、新たな商品の仕入や、プライベートブランドの導入などの「商品開発」となります。

プライベートブランドとは、小売業や卸売業など、メーカー以外の企業が自社企画の製品を開発することを言います。

大手小売チェーンなどが新たな製品を企画し、メーカーに対して製造委託し、全量を買い取るスタイルが多いようです。

この手法は、消費者の低価格志向を背景に、多くの小売チェーンで普及しています。

製品(商品)開発戦略では、メーカーの場合、技術力が求められたり、小売業の場合は一定量仕入れる購買力が求められたりします。

市場開拓戦略

現在の製品(商品)で、新たな市場(顧客)を開拓していく戦略です。具体的には、新店の出店や海外進出、通信販売や宅配など、これまでには獲得できなかった新たな顧客を獲得しようとするものです。

未開拓の市場を獲得できると、一気に業績が向上しますが、真似もされやすく、国内の小売市場など、オーバーストア(店舗が過剰)状態が続いており、困難なケースも多くあります。

多角化戦略

新たな製品(商品)で新たな市場(顧客)を開拓する戦略です。異業種に参入する戦略も含まれます。

新しい分野にチャレンジするため、大きなリスクを伴いますが、業界自体が成熟していたり、価格競争に巻き込まれていたりする場合など、新たな成長を求める場合に有効な戦略でもあります。

 

成長戦略の優先順位

アンゾフの成長ベクトルには大きく4つの成長戦略が示されていますが、自社としては、どの戦略を採用していったら良いでしょうか?

色々な考え方がありますが、極力リスクを回避し、着実に成長を図ろうとする場合は、まず、「市場浸透戦略」によって今の経営資源や顧客タイプの中で、もっとできることは無いのか?を検討することが重要です。

次に考えられるのが「製品開発戦略」と「市場開拓戦略」ですが、どちらが優先されるということはありません。

その企業の技術力や顧客との関係性を考慮して決定していくべきですが、一般的に売れる可能性を持っている製品があれば、売る相手を求めていく市場開拓戦略が妥当であると言えますし、技術力が高く信頼性がある場合は、新製品を出すことによって一定の売上増が見込めます。

最後に選択すべきは「多角化戦略」です。従来の製品や顧客でビジネスが困難な場合に選択されますが、逆に思い切って現状を打破したい場合や、業界が大きく再編される場合には大胆に採用される戦略でもあります。

 

近年注目が高まる多角化戦略の具体策

多角化に関しては、さらに細かく分類できます。まず、メーカーが卸や小売分野に参入したり、小売が製造を行うようになったりすることを「垂直的多角化」といいます。

また、取扱製品やサービスを従来分野以上に思い切って広げることを「水平的多角化」と言います。家電小売業が近年、家電製品小売だけでなく、太陽光発電や住宅リフォーム事業に参入しているケースを多く見かけますが、これは典型的な水平的多角化と言えるでしょう。

さらに、全くの異業種に一から参入する「コングロマリット的多角化」といわれる多角化戦略もあります。この場合、合併や買収などにより、事業を獲得する手法が多く使われます。

 

まとめ

経営戦略の最もベーシックでしかも理解がしやすい手法として、アンゾフの成長ベクトルをご紹介しましたが、いかがだったでしょうか?

製品(商品)と市場(顧客)というのは、経営の原点です。その組み合わせに、現在・新規(未来)の時間軸を加えたこの戦略モデルは、中小企業から大企業まで多くの企業に当てはまるシンプルかつ使える手法でもあります。

経営会議や営業会議の場などで活用し、常に自社の将来戦略について検討していく事が望ましいでしょう。

また、近年、企業を巡る経営環境は特に激変しています。老舗企業が後発ベンチャー企業に凌駕されることも当たり前のような時代になっています。

従来のように独力でコツコツと製品開発や市場開拓を行うことは、困難になっています。

そのため、高い成長を目指して、経営資源があるうちに、新たな分野へダイナミックに参入する多角化戦略も、事業継承という意味からも大いに検討すべき選択肢と言えます。

 

著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。

 

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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