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SDGsと経済の関係性

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本来、このような取り組みは、大手企業が社会貢献として取り組むべき課題としてあげられる事が多い事案でしたが、なぜ中堅中小企業の領域にまで広がってきたのでしょうか?

SDGsは、既に世界経済にも大きな影響を及ぼし、今後の経済的な視点から見ても、必要不可欠な内容になっています。

今後、ますます日本国内でも「SDGs」の価値観や考え方は、BtoBやCtoCなどさまざまな事業モデルにも大きな影響を与え始めていきます。

そんな、今後の世界的トレンドになる「SDGs」を理解し、うまく取り入れる事ができれば、より良い世界の実現と、企業の成長に繋がるタイミングになると考えています。

第1回の内容で、SDGsの概要について触れました。

第2回の今回は、SDGsがどのように経済に影響するのか?なぜ経済にまで影響を及ぼす取り組みになったのか?SDGsと経済の関係性についてお伝えしていきたいと思います。

 

ESGを重要視する投資家と企業経営

SDGsの影響を強めるキッカケになった要因に「ESG」という考え方があげられます。

「ESG」すなわち、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字をとったもので、環境に拝領した社会、人権が守られた社会を作るためには、それを踏まえた企業統治が必要である事を表しています。

この事柄を踏まえて、SDGsが経済にまで、影響を及ぼす事になった経緯を時系列でみていきましょう。

1987年の国連で「持続可能な開発」という文言が定義される

SDGsの最初のスタートとなったのが、1987年の国連「環境と開発に関する世界委員会」で「持続可能な開発」という文言が定義された事がそれに当たります。

そこから、徐々に貧困や自然破壊など、世界の抱える問題に対する意識が少しずつ変化していき、社会も徐々に環境問題を意識するようになっていきました。

特に、日本国内のターニングポイントになったのが、CSR元年と呼ばれる2003年の出来事です。

CSR元年

CSRとは、「Corporate Social Responsibility (企業の社会的責任)」を表す言葉です。

その年、社会インフラの機能を備える大企業などから徐々にCSRが浸透していき、社会全体がCSRを意識始める事になるキッカケの年となりました。

それ以前の90年代から、CSRを企業が意識しなければいけない風潮は、国や国連が作ろうとしてきましたが、企業側の「なぜ、そこまで社会責任を負わなければいけないのか?」という風潮を拭う事ができていませんでした。

CSRを企業が推進させる流れに強まった要因に、IT産業の発展があります。

発展途上だったIT業界は、今後の発展のためにも、企業や消費者、従業員、地域社会などの情報を開示してもらう必要がありました。

その状況を作るためには、ステークホルダー(企業や消費者、従業員、地域社会など)に信頼してもらう必要があり、徐々にIT業界にも参入する大手企業同士が、CSRに対して同調して動き出す必要性が出てきました。

大企業がCSRを意識した事により、それを受け取る消費者全体にも、少しずつ環境問題や貧困などの問題意識が植えつけられ始めていきました。

それらの状況が重なり、CSR元年と呼ばれる年になったのです。

SDGsが掲げる「持続可能な社会」を達成させるためには、一人一人の意識や、国単位での活動では達成できない事は明確です。

企業にその意識を植え付けられた事は、かなり大きなターニングポイントでした。

ESG投資をPRIが世界的投資のガイドラインに反映させる

この項の冒頭で出てきたESGですが、2006年に世界の投資ガイドラインとなる力を保持する「PRI(国連責任投資原則)」発足しました。

PRIは投資の分野の中にまで、ESG課題を持ち込み、世界の投資機関はESG課題を意識せざるを得ない状況になりました。

PRI 原則
1.私たちは投資分析と意思決定のプロセスにESG課題を組み込みます。
2.私たちは経済的な所有者になり、所有方針と所有習慣ESG問題を組みいれます。
3.私たちは、投資対象企業に対してESG課題についての適切な開示を求めます。

私たちの年金140兆円を運用しているGRIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も、世界的投資機関の1つで、長期的にお金を増やす事を目的に運営しています。

ESG投資自体が、長期投資だったため、GRIFのような機関は必然的に採用せざる追えない状況でもありました。

また、その他の大きな事例として石炭採掘企業や電力会社などの、環境負担が大きい企業への投資が、大幅カットになり、温室効果ガスなど抑える製品を作る企業には、大幅な投資が行われました。

日本国内経営者にも行動を促した「伊藤レポート2.0」

その後、2013年の安倍政権の政策「日本再興戦略」の中で、ESGの中のG(ガバナンス)が重視される事になり、2015年に「SDGs」が採択。

2017年には、企業にESG対応を求める「伊藤レポート2.0」が公表され企業の競争戦略にも組み込まれる事になります。

この機運もあって、実際にバイオマスエネルギーのベンチャーなど、多くの企業に投資がなされた事例もあります。

今までの経緯を踏まえても、「SDGs」は単なる環境保全キャンペーンのトレンドではなく、長い時間をかけて経済に影響を及ぼすほどの力をもった国際基準になったということです。

世界規模で、既存のシステムにも大きな影響を与えてきたSDGsに、日本国内のメディアや企業も反応してきました。

着々と、中小企業にもその波は、押し寄せてきています。

まず、自分のいる企業の事を考える前に、日本が未だ改善余地があると指摘されている分野をみてきましょう。

 

日本が取り組むべきSDGs

2016年、世界各国のSDGsの進捗状況をド イツのベルテルスマン財団(民間でSDGsの達成状況の進捗をまとめる団体)と持続可能な開発方法 ネットワーク(SDSN)が共同で各国のSDGsの現状を発表しました。

日本は、SDG1(貧困)、SDG5 (ジェンダー)、SDG7(エネルギー)、SDG13(気候変動)、SDG14(海洋資源)、SDG15(陸上資源)、 SDG17(実施手段)の 7 つの分野で達成率が低いという評価でした。

7つの分野を見てみると、日本に住んでいる人々が意識していない問題点も数多くあります。特に、先進国に位置する日本がSDG1の貧困で、未達成というのは衝撃的な事実です。

2018年度版の日本の達成状況は、世界全体で15位という状況で、比較的改善が見られます。

2016年の発表で、最大の課題と指摘された分野の中で2016年と比べて改善されたのは、SDG1(貧困)、SDG7(エネルギー)、SDG14(海洋資源)、SDG15(陸上資源)、の4つでした。

しかし、SDG12(つくる責任つかう責任)が最大の課題の1つとして追加されています。

つまりは、企業が自社に取り入れるべきSDGsの課題は、ここを中心に検討する事で、より強く社会が反応してくれる可能性があるという事です。

 

まとめ

この項で、SDGsが採択されるまでの流れや、世界経済に影響を及ぼす事になったキッカケなどをお伝えした事で、よりSDGsが企業運営に大きく関わっていく可能性を感じる事ができたのではないでしょうか?

第3回のテーマは、「SDGsを取り入れる企業側のメリット」です。

具体的にSDGsを会社に採用して、事業がうまくいった事例をいくつかご紹介しながら、SDGsとの関わり方について、より深く考えられる機会になればと考えております。

 

著者:久貝 将太

フリーランスでライター業を営んでいます。主に、SDGsやサスティナブルを取り上げるメディア、キャッシュレス関係で記事執筆をしています。筆者自身、SDGsを取り入れたファッションサービスを展開するため、それにむけて準備中です。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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