いつもと違う部下の様子が、メンタルの不調が原因だったという例はよくあることです。忙しく日々を過ごしている現代では、メンタルの不調は誰もが一度は抱える体調不良の一つといえるでしょう。
肉体的な体調不良と同じく、メンタルの不調もパフォーマンスの低下、離職の可能性を高めるので適切な対処が必要です。
しかし、専門家でもない上司にとって、部下のメンタル不調のサインを一から把握することは難しいのではないでしょうか。
そこで本記事では、部下のメンタル不調時に見られるサイン、上司ができる対処法などについてご紹介いたします。いち早く部下のメンタル不調を見抜き、対処を行うための参考にしてください。
部下のメンタル不調で見られるサイン
まず知っておくべきポイントは、メンタル不調を起こしている部下に見られるサインです。部下が無意識のうちに発しているサインを受け取るために、どのような行動・変化が見られるのかを確認していきましょう。
いつもより単純なミスが見られる
今までは見られなかった、単純ミスの回数が増えている場合はメンタル不調を起こしている可能性が高まります。
メンタル不調の原因に気を取られる、しっかり睡眠をとれないなどの原因から集中力の低下が考えられるのです。
単純ミスによる業務時間の増加、または仕事量を変えていないのに残業が増えた場合なども意識して見守る必要があります。
欠勤や遅刻・早退の回数が増える
不真面目な印象は受けないのに、以前より欠勤や遅刻・早退の回数が増えた場合も注意が必要です。
気力がわかないケースや、メンタルの不調が体調に表れ「夜眠れないことで遅刻する」「原因不明の体調不良で早退が増える」などのケースが考えられます。
特に遅刻や欠勤に対して、自分を責めている様子が見られる場合は要注意です。自分を責めることで、よりメンタルの不調を招き、負のスパイラルにはまってしまう可能性が高まります。
見かけの変化
メンタルの不調が長期化すると、見かけにも変化が出てきます。以下、いつもの部下と比べて変わったところがないか確認してください。
- スーツ・シャツにシワがあるなど、身だしなみに無頓着
- 寝癖が付いたまま、化粧をしなくなったなど清潔感の低下
- ごく短期間での体重の大幅な増減
気力がわかないことから身だしなみに無頓着になったり、自身の見かけに注意を払わなくなったりする傾向があります。
またごく短期間での体重の増減は、ストレスなどによる拒食・過食の可能性が考えられるでしょう。
サインとしてわかりやすい分、不調が深刻化しているともいえるので、早急な対処が必要です。
メンタル不調が見られる場合の対処法とNG例
無意識の場合もありますが、サインを出せる部下は助けを求めています。ここでは実際にメンタル不調のサインに気が付けた場合、どのような対処が必要になってくるのかを解説いたします。
「対処法」まずは部下の話を聞く
まずは部下がメンタルの不調を招いた原因を知る必要があります。
したがって1on1の面談の機会を設けましょう。問題やストレスの原因を話し、1人で抱え込まなくてよくなるだけでもストレス緩和に有効です。
話を聞き、部下の希望を交えたうえで、できる対処法を模索していきましょう。
対処法の例は職場における仕事・人間関係の調整、休職の是非、専門医への受診が必要なのかなどが挙げられます。
また基本的に周囲に話せない、相談しにくいからこそメンタルの不調を招いていると考えられます。
面談を設ける段階から、できるだけ周囲に知られないよう行動することも重要だといえるでしょう。
NGな対処例
部下の話を聞かないまま、憶測で上司が動くことはおすすめできません。
人間関係に困っているのだろう、業務量が多すぎるのだろうと勝手に対策を行ってしまっては、かえって部下を戸惑わせることになりかねません。
また話し合いの席を設けた場合は、安易な励ましやその場しのぎの言葉をかけないよう注意しましょう。
部下はぎりぎりまで頑張っているのに何ともならないからこそ、メンタルの不調を訴えているのです。
この上、簡単に「がんばれ」「なんとなるよ」と言われてしまえば、今後は悩みを上司に話しても意味がないと考えてしまう恐れがあります。
実際に悩みを抱えている側と、悩みを聞く側の温度差に乖離があると、悩みを抱えている側の孤立感を強めてしまいます。
よく使われる言葉だからこそ、安易に発してしまわないよう注意が必要です。
部下のメンタル不調を早期に発見するために必要なこと
部下のメンタルに限らず、不調を軽く抑えるには早期の発見が重要です。部下のメンタル不調を早期に発見するために必要なこと、できることについて解説いたします。
日頃から部下との信頼関係を築いておく
メンタル不調の早期発見に重要なことは、部下と上司の間で信頼関係が築かれているかといった点です。部下と上司の間で信頼関係が構築できていたら、コミュニケーションの頻度も高くなります。
ごく軽い不調の段階で、冗談交じりに「辛いことがあった」「今しんどい」と現況を報告してくれる期待も持てるでしょう。
すぐさま対処が必要でなかったとしても、部下の状況を把握できます。
またメンタル不調のサインに気が付きやすくなったり、面談時に相談しやすくなったりする可能性も高まります。
業務を円滑に進めるだけではなく、問題がある場面でこそ、信頼関係の有無は大きく関係してくるのです。
定期的なパルスサーベイの活用
業務内容や人間関係など、部下の状況を定期的なパルスサーベイなどで把握しておく方法もおすすめです。
パルスサーベイとは会社への期待度や満足度、心身の健康状態を簡潔に調査する方法の一つを指します。
簡単な調査内容を、繰り返し従業員に答えてもらうことで、現在状況を把握しやすくなる点がメリットです。
前回のサーベイ内容と比較することで、部下自身が不調を見せないようにしている場合でも、メンタルヘルスの変化を察しやすくなるでしょう。
メンタルヘルスに関する知識を身に付ける
上司自身がメンタルヘルスに関する知識を高めることも重要です。部下のメンタル不調のサインに気が付きやすくなるだけではなく、対処法についても詳しくなれるでしょう。
NGな対処例にも詳しくなるので、不用意に部下を傷つけるリスクも低減できます。
現代社会において、メンタルヘルスへの理解を持つことは急務と考えられています。旧態依然の、気合が足りない・根性で何とかなるという考え方は通用しません。
またメンタルヘルスの正しい理解は、不調時以外にも転用が可能です。部下との信頼関係を築くためにも有益な気付きを与えてくれるでしょう。声のかけ方や、部下が話しかけやすい雰囲気の作り方なども学べます。
なお上司だけではなく、部下も含めて研修やセミナーを受けることもおすすめです。
企業内の階層ごとによる研修やセミナー、検定なども広く取り扱われているので、メンタル不調を招かないための予防にも期待できます。
まとめ
部下のメンタル不調のサインに気が付き、適切な対処を行うには上司と部下の間に信頼関係が築かれていることが重要です。
正しく信頼関係が構築できていれば、些細な変化にも気が付きやすくなり、部下も上司への相談を選択肢に上げられるでしょう。
しかし信頼関係は一朝一夕に築けるものではありません。
部下のメンタル不調のサインに気が付くためにも、日頃から部下とのコミュニケーションを大切にしていきましょう。他愛もない雑談から、1on1の面談、研修やセミナーなど取れる手段は豊富にあります。
大切に育ててきた部下がメンタルの不調で退職してしまった…!このような事態を招かないためにも、日頃から意識することが重要です。