クラウドファンディングを利用して資金調達する中堅中小企業は少なくありません。
しかし必ずしも資金調達が成功するとは限らないのが、クラウドファンディングの難点です。
せっかくプロジェクトを立ち上げるなら、確実に目標達成したいのは当然のこと。
そこで今回は、クラウドファンディングで1,000万円以上の資金調達に成功した事例をいくつかご紹介します。
成功事例からクラウドファンディングで資金調達をするコツを学んでいきましょう。
これからクラウドファンディングのご利用を考えている経営者の方は特に、必見です。
日本で1,000万円以上の資金調達に成功した事例
それでは早速、日本を市場として1,000万円の資金調達に成功した中堅中小企業の事例を見ていきましょう。
台湾のベンチャー企業「NatureGift Technology Inc.」
まずは台湾のベンチャー企業「NatureGift Technology Inc.」のクラウドファンディング事例をご紹介します。
この企業は台湾では既に4,000万円以上資金調達を達成。
日本を市場としたクラウドファンディングでは、1,400万円以上の資金調達に成功しています。
プロジェクト内容
同プロジェクトは、「AIRCPHOLIC」というオリジナル商品の品質向上・研究・PRなどを目的としています。
「AIRCPHOLIC」とは、中に35度以上のお酒を入れることで気化したアルコールを楽しめるグッズです。
気化したお酒をストローで吸うことで、その風味や香りの変化を楽しむという代物。
日本では出回っていない、新感覚の商品です。
成功のポイント
このプロジェクトが成功したのには、以下のような理由が考えられます・
・多くの人が興味をそそられる内容
・丁寧な商品のPR
・高級感を打ち出し、支援額を高めに設定
まず大きな特徴となるのは、革新的な商品のインパクトです。
まだ日本では出回っていない商品ということもあり、見る人は興味を持ちます。
また、これにはプロジェクト内の説明文も大きく影響しています。
「AIRCPHOLIC」を使うとどのような体験ができるのか、説明文には丁寧に記載されているのです。
様々な語彙を使って表現される「AIRCPHOLIC」の魅力。
これにより、支援者の「使ってみたい」という気持ちを一層ふくらませます。
するとAIRCPHOLICを手に入れるために、多くの人が支援をしてくれるでしょう。
ちなみに、同プロジェクトの支援額は最低でも1万6,900円からとなっています。
一般的なクラウドファンディングのプロジェクトよりも高めの設定です。
これはAIRCPHOLICという商品に希少価値があることと、誰にも相場感がないために実現しています。
説明文でもAIRCPHOLICの高級感を存分にPRし、嗜好品としてのブランド価値を高めているのが特徴です。
1人当たりの支援額を大きく設定することで、多額の資金調達に成功しているといえます。
折りたたみ椅子「Sitpack」の「ディアブリッジ株式会社」
続いてはデンマークのデザイン会社から生まれた「ディアブリッジ株式会社」のプロジェクトについてです。
プロジェクト内容
同プロジェクトは、「Sitpack」という折りたたみ椅子のプロモーションや今後の開発費用などを調達するために設立されました。
「Sitpack」はなんとポケットにも入ってしまうほど小さく折りたためる、世界最小の椅子です。
いつでもどこでも持ち運ぶことができ、取り出して簡単に腰かけることができます。
5,000円以上の支援で「Sitpack」がもらえるというリターン設定です。
成功のポイント
このプロジェクトが成功したのには、以下のような理由が考えられます。
・商品のメリットを細かく説明
・次回作への期待感を持たせる
・500円から支援できる設定
実用性を求められがちな「椅子」というアイテムを、極限まで小さくした「Sitpack」。
当然、支援者は興味を持つ一方で、「本当に使い勝手がいいのか」という疑問を持つでしょう。
このプロジェクトではそんな不安を払拭するべく、商品のメリットや使い心地の良さを丁寧に説明しています。
そして「Sitpack」が高品質な商品であることを訴求しています。
また、「ポケットに入るくらい小さな椅子」というアイディアは非常に画期的です。
プロジェクト内では、「調達した資金を次回作に充てる」と表明しています。
これにより、「次はどんな面白いアイテムが出来るんだろう?」と支援者の期待を集めることにも成功しているのです。
次回、また次回と、長い目で自社のファンを増やしているのは、ディアブリッジ株式会社ならではのやり方といえるでしょう。
さらにこのプロジェクトでは、500円の支援ができる設定になっています。
500円のリターンは、「お礼と次回開発品のご案内」。
「Sitpack」はもらえないものの、ディアブリッジ株式会社の今後の動向を見守ることができる内容となっています。
このように常にファンの注目を惹きつけ続ける方法を使えば、今期に限らず今後のプロジェクトにも期待できるでしょう。
シャープ株式会社の社内ベンチャー「TEKION LAB(テキオンラボ)」
続いては誰もが知るシャープ株式会社の社内ベンチャーチーム「TEKION LAB(テキオンラボ)」のプロジェクトです。
電化製品などで有名なシャープですが、今回クラウドファンディングで打ち出したアイテムはなんと「お酒」。
酒造メーカーの「石井酒造」とのコラボ商品「冬単衣(ふゆひとえ)」の開発・販売資金を調達するためのプロジェクトを打ち出しました。
結果的に18,695,400円もの資金調達に成功し、プロジェクトは大成功。
数量限定3,000本の冬単衣は完売し、アルコール分野で日本のクラウドファンディング史上最高額ました。
プロジェクト内容
同プロジェクトは「冬単衣(ふゆひとえ)」というオリジナル日本酒の開発・販売資金調達を目的に設立されました。
冬単衣は石井酒造の確かな醸造技術と、シャープの蓄熱技術が融合した新感覚の日本酒です。
日本酒は通常、5度以上の温度帯で飲むのが一般的とされています。
しかし冬単衣はそんな常識を覆す、「夏に飲む、氷点下の日本酒」として注目を集めました。
シャープ独自の技術によって作られた保冷バッグに酒瓶を入れれば、なんと-2度の冷たい日本酒が楽しめるのです。
成功のポイント
このプロジェクトが成功したのには、以下のような理由が考えられます。
・他の商品との差別化に成功
・数量限定でプレミア感を訴求
・コラボ企画で多くの支援者へのリーチを実現
・意外性で支援者の興味を引く
お酒をリターンとして設定しているプロジェクトは他にも多数あります。
しかし冬単衣には、「夏に飲む、氷点下のお酒」という独自のキャッチコピーがあります。
これにより他商品との差別化を図り、支援者の興味を引くことに成功しているのです。
また、シャープがお酒を開発するという意外性も注目を浴びた理由の1つでしょう。
今回は石井酒造とコラボすることで、自社の専門分野以外の領域でクラウドファンディングに成功しています。
さらにコラボをすることでシャープだけでなく、石井酒造のファンにもプロジェクトをリーチさせているのが特徴です。
プロジェクトを知ってもらうという点では、他の企業とのコラボは非常に有効な手段です。
また、冬単衣は発売前にプロジェクトを開始していました。
そしてあらかじめ「数量限定」という言葉でプレミア感を訴求したのもポイントです。
希少価値があると分かれば、支援者は余計に欲しくなります。
結果的に3,000本の新商品を完売することに成功しました。
クラウドファンディングでの資金調達を成功させるコツ
3社のプロジェクト成功事例をご紹介しました。
それでは最後に、それぞれに共通する資金調達のコツをまとめていきましょう。
リターンをバリエーション豊かに設定する
成功事例に共通するのはやはりリターンです。
ギブアンドテイクという言葉がある通り、何の見返りもなしに出資してくれる支援者は少ないでしょう。
リターンをより魅力あるものにすることで、多くの人に「支援したい!」と思わせることができます。
魅力が伝わるプロジェクトを作る
プロジェクトのメリットや魅力を丁寧に説明することで、共感してくれる人が増えます。
また、支援することのメリットを伝えることも忘れてはいけません。
クラウドファンディングは支援者に「自分が支援することでプロジェクトが実現する」という実感を持ってもらうことが重要です。
本気が伝わる現実的なプロジェクトを作る
プロジェクトの目標額はもちろんのこと、目標達成後のプランもより具体的に計画しましょう。
企画する企業に将来性があればあるほど、支援者は多く集まります。
また、具体的なプロジェクトにすることでこちらの熱意ややる気も伝わるでしょう。
企画倒れにならないようなプロジェクトの設定をおすすめします。
多くの人にリーチする
クラウドファンディング成功の第一歩は、大勢の人にプロジェクトを知ってもらうことです。
そのためにはクラウドファンディングサイト上だけでなく、企業SNSやHPなどを用いてプロジェクトをどんどん発信しましょう。
自社だけではリーチ力に自信がないという場合は、他の企業とタイアップして支援者を増やすのもおすすめです。
成功例に学んで確実な資金調達を
クラウドファンディングの資金調達成功事例についてご紹介しました。
どこも独自性の高いPRで、他の案件との差別化を図っていることが分かります。
これにより多くの人の目を引き、支援を集めることに成功しています。
またリターン設定にもこだわることが重要です。
ぜひ今回ご紹介した事例を参考に、自社の資金調達を検討してみて下さい。
著者:金田こはる
現在、フリーランスライターとして活動中。これまでビジネスを中心とした記事を500本以上執筆した経験あり。自身の就業経験や転職経験を活かしながら、読者に寄り添うスタイルの記事を多数執筆。より多様な働き方や事業の在り方を広めるべく、積極的に情報発信を行っている。