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経営戦略のスタート「環境分析」の方法

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自社の経営戦略を立案する場合には、経営者の想いはもちろん大切ですが、まず、会社を取り巻く環境を冷静に観察することが重要です。

今回は、その観察の仕方、観察した後の経営戦略へのつなぎ方を、オーソドックスな方法と、最近注目されている方法の2つを見ていきたいと思います。

環境分析の意義

位置が分からなければ方向は見出せない

自社の置かれている状況、つまり、現在の位置が分からなければ、将来の成長戦略は描けません。それはちょうど、海図が無くて航海に出るようなものです。

現在の企業の立ち位置を把握し、その上で目標を設定することで、初めて戦略が立案できます。そういった意味で、環境分析は経営戦略の出発点とも言えます。

俯瞰(ふかん)することの重要性

環境分析は、広い範囲を分析することが重要です。

一見、自社に関係ないと思われる分野に新たなチャンスが見つかったり、強みが活かせたりする分野が発見される場合が多いものです。

鳥が空高く飛んで広い範囲を見渡すような見方が重要です。

激変する環境

現在の企業を取り巻く環境は、凄まじいスピードで変化しています。

例えば、音楽を楽しむ媒体の変化を例えにすると、レコード→カセットテープ→CD→MD→MP3→楽曲ダウンロードと、目まぐるしく変化して来ました。外部環境の変化に気づかず、特定の経営戦略に拘っていると、あっという間に市場を失います。

また、これまでとは想像も出来ない相手がライバルとして出現する時代です。

例えば、レストランのライバルは、昔は同業である他社のレストランや定食屋や居酒屋やパブだったかもしれませんが、現代では弁当店やコンビニ、スーパーの惣菜部までもライバルになっています。

消費者の胃袋を巡って、昔は考えもしなかった業種がライバルになっているわけです。

環境分析の種類

企業を取り巻く環境を分析する手法は色々なものがあります。基本的には環境を分析する切り口の違いがあるだけと思ってもらって結構です。

SWOT分析

最もポピュラーな分析手法です。企業取り巻く環境を、企業内部の「強み」「弱み」、企業外部の「機会」「脅威」に分けて分析します。

PEST(ペスト)分析

企業の外部環境のうち、企業ではコントロールできない要素のことを「マクロ環境」と呼びます。

企業活動はこのマクロ環境の動きに強く影響を受ける事から、マクロ環境の代表格である「Politics(政治)」、「Economy(経済)」、「Society(社会・ライフスタイル)」、「Technology(技術)」という4つの面から環境を分析しようとするものです。

ファイブフォース分析

企業を取り巻く環境を、「競争環境」と捉えて、競争を勝ち抜くための戦略を立案するための分析を行うものです。

「顧客の交渉力」「サプライヤー(仕入業者)の交渉力」「新規参入者」「代替品」「業界内のライバル企業」などの5つの視点から分析します。

3C分析

3C分析とは、外部環境の市場と競合の分析から、成功のカギになる要因を見つけ出し、自社の戦略に活かすことを目的とした分析手法です。

切り口は「市場(customer)」「競合(competitor)」「自社(company)」で、3つの切り口の頭文字を取って3C分析と言います。

SWOT分析とは

環境分析の代表格であるSWOT分析の手法を詳しく紹介しましょう。

SWOT分析では、企業の内外の環境を以下のような項目に分類します。

分類作業は経営幹部や経営企画部など、経営戦略を立案する部署の社員が、ブレーンストーミングのような自由なグループワークを通して行っていくと良いでしょう。

【内部環境】
・ヒト(人材力)
・モノ(商品やサービスの力、設備力など)
・カネ(資金力)
・その他の能力(研究開発力、技術力、マーケティング能力等)

【外部環境】
・法律、政治、経済(規制の緩和・強化、政治の動向、為替や関税の動向など)
・競合企業(ライバルの規模・地域、製品構成、品質、価格、強み・弱みなど)
・顧客(客層、購入製品、単価、頻度、自社製品に対する忠誠度など)

そして、次に内部環境を「強み」と「弱み」に分類します。さらに、外部環境を「機会」「脅威」に分類します。

この時、「強みとも取れるし、弱みともいえる」など、分類に疑問が生じることもあります。これは、改めて環境分析を行っていることのメリットでもあります。その際は、強みにも弱みにも入れておきましょう。

環境分析の目的は企業の方向性を決めていくことです。

分析そのものが目的ではなく、あくまで手段です。正確さを期すことは大切ですが、数値に表せないことも多くあります。

SWOT分析の戦略活用

SWOT分析の良さは、分析結果を得て、戦略方向を決めるためのヒントまでがセットされているところです。

一通りの分類が終わったら、以下の優先順位で今後の企業戦略を考えていくと良いと言われています。

・第一法則・・・・自社内の「強み」を外部の「機会」に活かす。
・第二法則・・・・自社内の「弱み」を補完して、外部の「機会」に活かす。
・第三法則・・・・自社内の「強み」を活かして、外部の「脅威」に対抗する。
・第四法則・・・・撤退戦略。

日本の企業の多くは中小企業です。中小企業は一般的に強みを活かし、脅威には立ち向かわないのが定石です。

そのため、強みも活かせず機会も見つからない場合には、撤退戦略を選ぶことも必要です。

逃げることは、企業にとって負けではありません。次の機会に対して内部経営資源を高めていく重要な期間であるとも言えます。

まとめ

環境分析の意義や種類、代表的な手法であるSWOT分析を見てきましたが、いかがだったでしょうか?

企業を取り巻く環境の変化は、近年凄まじくスピードアップしています。今現在うまくいっているビジネスも、あっという間にライバルに市場を奪われたり、ビジネスそのものの形が変化して陳腐化したりすることも多い時代です。

特にマクロ環境は、自社でコントロールことが出来ないため、一刻も早く情報を入手し、対応することが不可欠です。

そのため、環境分析は常に実施する必要があります。また、環境分析を通じて自社の良さや弱みを改めて確認する良い機会でもあると言えます。

著者:hanbaishi
中小企業診断士。専門は経営・マーケティング・起業家指導・IT化支援。・TBC受験研究会にて診断士講座講師、福岡県産業・科学技術振興財団ベンチャースクール講師を経て、現在、専門学校で販売士検定・起業論・就職指導を行う。著作「中小企業のためのASPサービス導入に関する調査・研究(中小企業診断協会)」「繁盛店への道(財団法人福岡県企業振興公社刊)」等。趣味は黒鯛の落とし込み釣り、魚料理。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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