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カーボンニュートラルとは何か?その実現可能性と影響

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カーボンニュートラル(CN)とは

CNとは

(1)定義
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量と森林などによる温室効果ガスの吸収量を均衡させることいいます。

下記図のように+CO2(排出量)を減らして-CO2(吸収量)と均衡させることを世界全体で目指しているのです。

(2)CNとグレート・リセットの関係
2021年に開催される予定だった「ダボス会議(世界経済フォーラム)」のテーマが「グレート・リセット」でした。

グレート・リセットとは「より公平で、持続可能で、強靱な未来を作るため、経済社会の基盤をリセットする」というもので、その軸は短期的な収益を求める「株主資本主義」から長期志向でより良い環境・社会・ガバナンスを企業と政府の説明責任とする「ステークホルダー資本主義」への転換、つまりESG活動(*)です。そのESG活動の中心議題がCNという関係です。

(*)ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)

(3)CNとSDGSとの関係
国家主体のCN活動は、企業主体のCSR活動やESG活動、市民主体のエシカル活動(*)と同じように、インターネットの普及で情報の王様になった消費者の世界規模での社会問題の関心が要因となったものといえます。

もっとも、CNは、それぞれ別々の活動をしてきた国家・企業・市民を結びつけ、同じ方向に向かわせる共通課題を提供する役割を果たしています。

そのため、その解決が望まれる世界規模の市場「グリーン市場」を誕生させました。

(*)エシカルとは、倫理的な道徳上の意味で、社会貢献・環境保全として使われている

「グリーン市場」はグリーン成長戦略として経済産業省が14の重点分野を選定しています。

世界各国の取組み

下記表で見る通りCN関連の各施策の実施度合いで日米英が抜き出ています。

グリーン市場での主導権を握り世界経済での復権を狙っているとの指摘もあります(「グレート・リセットは実現するか?」キャノングローバル戦略研究所)。

日本の取組み

日本のCN施策は大きく3つに分かれています。
step1とstep2は上記表のSBTとRE100で、step3で使用エネルギーを電気に転換していこうとするものです。

電気は温効果ガスを排出しない再生可能エネルギーによる電力を利用できるので、低炭素化しやすいメリットがあるためです。

もっとも、step2・3ともコスト面に課題を抱え、再エネはさらに安定供給の課題もありその実現可能性を疑問視する見解も有力です。

CNの実現可能性

キャノングローバル戦略研究所「グレート・リセットは実現するか?」によれば、「この将来像の技術的・経済的・政治的実現可能性は極めて乏しい」とのことです。

実現可能性が乏しい将来像に合わせて事業計画を作ることは「企業として経営判断・投資判断を大きく歪め、利益を損ない、事業の存続すら危うくする」とも主張しています。

このレポートと国のCN施策を組合せると以下のようになります。

シナリオ1は、国のCN施策の財源が確保できるとともに展開した施策が成功すること想定しています。

欧米の目論み通り産業転換しグリーン市場が開花。市場におけるG7が復権するというものです。

シナリオ2は、展開した施策が裏目に出て、世界経済の主導権が大きく中国にシフトし、欧米の思惑と異なるグリーン市場ができるというものです。

シナリオ3は、世界的リセッションで国も企業も市民もCNどころでなくなり、グリーンバブルが崩壊するというものです。

仮に世界的リセッションに入ると、企業は戦略的視野というより事業存続のため、市民は生活防衛のため、エネルギー消費量削減活動は活発になるでしょう。

一方、設備投資を要する再生可能エネルギーの導入と電化は企業に負担を課すもので、予定通りの進展が難しくなります。

景気対策が優先される政府に、企業や市民の負担を軽減するCN施策を展開することは期待できません。

つまりリセッション入りすると、日本政府が想定している3stepのうち、step1の消費量削減は進展し、step2の低炭素化とstep3の電化は難しい状況になると予想されるのです。

この展開は次章で紹介する「CNのGDPへの影響」で三菱総合研究所が予想している消費量のみ削減した場合のシナリオに類似し、GDPはマイナス成長(年平均マイナス0.13%)となります。

これに世界的リセッションのマイナスも加わるのですから世界金融危機時の2009年に記録した実質GDPマイナス5.5%(通商白書2014)を超えることも予想されます。

CNの影響

GDPへの影響

三菱総合研究所「2020年カーボンニュートラルの社会・経済への影響」によれば、想定されるシナリオは4つ、それぞれの実質GDP成長率の予想は以下の通りです。

シナリオ1は現状延長。グリーン市場が開花せず、少子高齢化で国内市場が縮小均衡に向いGDPはプラス0.01%となります。

シナリオ2は意識変革に成功し、省エネ・省資源・脱消費で需要が縮小。マイナス成長時代に突入するシナリオです。

シナリオ3は消費量削減に失敗するものの技術革新に成功し、再生可能エネルギーの導入が進み設備投資が増えるので、GDPはプラス0.1%となります。

もっとも、大和総研『「脱炭素社会」実現の経済的意義と課題』によれば、2030年以降、グリーン投資の限界費用増加で企業の投資が鈍化する恐れがあると述べています。

つまり、企業は費用対効果の高い投資から始めるので、2030年頃からは費用対効果の悪い投資だけが残り、限界費用が増加すると予想しているのです。

シナリオ4は政府の施策がすべて成功した場合を想定。シナリオ2・3が両立した結果、GDPはプラス0.06となります。

いずれにしてもCNのGDPへの影響は現状延長した場合のプラスマイナス0.15%程度に収まり、思っていたほどの影響はありません。むしろ産業構造への影響の方が重要といえます。

産業構造への影響

(1)再生可能エネルギーの導入進展で交易条件改善へ
交易条件とは貿易での稼ぎ易さを示す指標ですが、日本の交易条件は主に原油価格高騰を理由に、1986年第3四半期以降悪化し続けており、東日本大震災以降の原発停止でその悪化に拍車をかけているのが現状です。

こうした状況の中、再生可能エネルギーの導入が進めば、エネルギー自給率が向上し交易条件が改善されることが予想されます。

(2)電力関連産業が増大する一方、旧来の自動車関連産業は縮小
三菱総合研究所「2020年カーボンニュートラルの社会・経済への影響」によれば、拡大するのは「電力関連、電気機械、はん用機械」産業、縮小するのは「鉄鋼、自動車部品・製造、石油・石炭製品」産業です。

自動車産業はEV化で電気機械産業に移行する部品・製造部門が多くあります。

そのため、自動車産業の受注が半分占める工作機械メーカーもそのままシフトすることが予想されます。

従って、生産業の主力である自動車・電気・機械間のスムーズな産業転換と労働者の移転が、日本経済の将来を左右といってよいかもしれません。

この点、欧州と日本のグリーン成長戦略を比較した大和総研の:「『脱炭素社会』実現の経済的意義と課題に」には、産業転換と労働者の移転の施策で日本政府は欧州に後れを取っているとの指摘があります。

おわりに

カーボンニュートラルは企業のCSR活動や市民のエシカル活動からの自然な流れといえます。もっとも、率先して脱炭素活動しているのは日米英です。

しかし、米と欧州はリセッション入りが濃厚です。しかも世界金融危機以上の景気後退が予想されています。

とすれば長期的な電化への移行のための設備投資は難しくなるでしょう。

もっとも、大きな環境変化があるときにはイノベーションが生まれるので、再生可能エネルギーが予想以上に進展するかもしれません。

事業継続のため消費エネルギー削減活動も活発化するかもしれません。

意図したものとは違う形で各種CN施策が進行するにしろ、脱炭素経営は企業に多くのプラス面をもたらすことを第2回記事では取り上げます。

著者:maru
2011年から中小企業診断士として経営コンサルタントをはじめる。
通常の企業経営コンサルから、無農薬農業経営、介護施設運営等の幅広い業種に関わり、
エンターテインメント施設の開業のための市場調査から、債務超過企業の事業デューデリジェンスまで、企業成長段階に応じたコンサルタントを行っています。

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記事監修者

栗原 誠一郎
大阪大学基礎工学部化学工学科卒業。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(旧三和総合研究所)に入社。
経営コンサルタントの中核メンバーとして、人事関連分野を中心に活動。

2016年2月、20年来の業務提携関係にあった株式会社日本経営開発研究所にシニアコンサルタントとして入社。
2017年4月、株式会社日本経営開発研究所の代表取締役所長に就任。

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